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【著作権】生成AIと報道機関の争いが拡大。読売に続き、日経・朝日も提訴。大手新聞社そろい踏みの意味

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▼AI VS 報道機関。なぜ紛争が続出するのか?


本日、令和7年8月26日の各紙報道によると、日本経済新聞社と朝日新聞社 が、米国の生成AI検索サービス企業 Perplexity(パープレキシティ)社 に対し、同社のAIサービスによる新聞記事の著作権侵害が発生しているとして、東京地裁に提訴しました。



同社に対しては8月7日、読売新聞の各社が、すでに同種の裁判を東京地裁に提訴しています。読売新聞による提訴は、8月12日付の本欄でお伝えした通りです。




いずれの訴訟でも、新聞社側は、記事の無断利用、robots.txtを無視したクロール、ゼロクリックサーチによる広告収入減少等を訴えています。今回新たに日経、朝日両者が提訴したことで、大手3社がそろってPerplexityを訴える事態へと発展しました。


訴状を読んでいるわけではないので、あくまで、報道からの情報によるものですが、読売新聞の提訴では、主に「著作権法上の複製権・公衆送信権の侵害」が前面に出されました。これに対し、日経・朝日が今回提示した論点はより幅広く、次のような点が注目されます。


・不正競争防止法違反(信用毀損)

Perplexityは新聞社名を表示しながら誤情報(ハルシネーション)を回答に含めて提供しており、これは新聞社の信用を毀損する行為にあたると主張。

「虚偽の事実を多数表示した」として、単なる著作権侵害を超えて「営業上の信用を害する行為」と位置づけています。


・利用規約違反

日経・朝日ともに、自社の有料会員向け記事や配信先限定記事が無断で利用されたと指摘。

記事データは「AI学習等には利用できない」と定めているにもかかわらず取得されており、契約違反の色彩が濃い。


・民主主義への脅威としての「ただ乗り」

記者が現場で取材し、多大なコストを投じて生み出した記事に「ただ乗り」することは、報道機関の経営基盤を破壊し、ひいては「民主主義の基盤を揺るがす」と強調。


おそらく訴状を見れば、読売も上記3論点について触れているとは思いますが、今朝の各紙報道では、上記の点について報じられており、政治的・社会的意味合いを明確に打ち出しています。


▼「ゼロクリックサーチ」の深刻な影響

Perplexityのサービスは、従来のGoogle検索のようにリンク一覧を返すのではなく、記事を要約し文章として回答するのが特徴です。この「回答エンジン」型サービスは便利ですが、報道機関にとっては致命的な構造的問題を孕んでいます。


・利用者が元記事サイトを訪問しない → 広告収入が減少

・記事の一次情報源が確認されない → 誤情報が拡散しても検証が難しい


各社はこうした点を問題視し、「ゼロクリックサーチは営業上の利益を侵害する不法行為」だとしましています。これは単なる「記事転載」の問題ではなく、インターネット検索のあり方そのものが問われているという構図です。


また生成AI特有の課題として、事実に基づかない回答、いわゆる「ハルシネーション」があります。日経新聞の記事を参照元として表示しながら、実在する人物の年齢を誤って示す、といった事例が確認されているとのことです。


これは単なる間違いにとどまらず、記事の正確性に依拠している利用者に被害が生じる行為であると同時に、新聞社のブランド・信頼性を傷つける行為でもあるといえます。著作権侵害という枠を超え、「不正競争防止法の信用毀損」や「名誉毀損」にも波及しかねない問題であり、AI事業者の社会的責任が強く問われています。


▼海外での動きとの比較

生成AIと報道コンテンツの関係をめぐる訴訟や警告は、日本に限らず欧米でも次々に起きています。


・2024年10月、米ウォール・ストリート・ジャーナルの発行元ダウ・ジョーンズがPerplexityを提訴

・英BBCや米ニューヨーク・タイムズも警告文を送り、記事の無断利用の停止や使用料の支払いを要求

・作家やイラストレーター団体によるAI企業への集団訴訟も米国で複数進行中。


つまり「著作物の無断利用」をめぐる対立は世界的な現象です。しかし、その中でも Perplexityに対して特に訴訟が集中している ことには以下の理由が考えられます。


・「回答エンジン」というビジネスモデル

……Googleなど従来の検索エンジンは、検索結果としてリンクを提示し、ユーザーが元サイトにアクセスする導線を残してきました。これに対し、Perplexityは「回答エンジン」を掲げ、ニュース記事を要約して直接回答を生成します。そのため利用者は元記事サイトにアクセスせずに満足してしまい、広告収益に依存する報道機関の収入源を直撃するという問題が発生しています。この「ゼロクリックサーチ」構造が報道機関の敵意を強める最大の要因です。


・ robots.txtなどの技術的制御を無視

……多くの報道サイトはAIや検索エンジンに対し「クロール禁止」の意思を示す技術的設定(robots.txt)を導入しています。しかしPerplexityはこれを無視して記事を取得している疑いがあり、「意思表示を踏みにじった」と見なされています。


・ハルシネーション+引用元表示の組み合わせ

ChatGPTなどの大規模言語モデルも誤情報を出すことはありますが、Perplexityの特徴は「出典を明記する」点です。つまり「○○新聞の記事によると」と表示しつつ誤った内容を提示するため、利用者は「新聞社が誤報した」と誤解するおそれがあり、結果として新聞社の信用が毀損される可能性があります。この「誤情報+出典表示」の組み合わせは、他のAI事業者にはあまり見られない危険性です。



OpenAI(ChatGPT)やAnthropic(Claude)の場合は、回答に出典を必ず表示するわけではなく、「生成テキスト」と「記事引用」が峻別されやすいようになっています。そのため、誤情報が出ても「新聞社が誤った」という誤解は比較的少なく、またChatGPTには「ChatGPT の回答は必ずしも正しいとは限りません。重要な情報は確認するようにしてください。」との記載もあります。こうした他社との違いが、Perplexityに訴訟が集中している要因と考えられます。




読売に続き、日経と朝日も裁判を提訴したことで、日本の大手新聞社はそろってPerplexityを訴える姿勢を示しました。これは単なる「企業と企業の争い」ではなく、報道の信頼と民主主義の基盤を守るための戦いと、新聞社は位置づけています。


AIは私たちの生活を便利にする一方で、従来の制度やビジネスモデルに揺さぶりをかけています。今回の一連の訴訟は、日本における 「AIと著作権」の新しいルールづくりの出発点 となるでしょうか。


今後の裁判の行方に引き続き注目していきたいと思います。



※本記載は投稿日現在の法律・情報に基づいた記載となっております。また記載には誤り等がないよう細心の注意を払っておりますが、誤植、不正確な内容等により閲覧者等がトラブル、損失、損害を受けた場合でも、執筆者並びに当事務所は一切責任を負いません。


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