令和7年7月1日 火曜日~最高裁が「生活保護費引き下げは違法」と判断――生存権と制度運用の現在地、そして行政書士の責任
- 那住行政書士事務所
- 7月1日
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おはようございます!
今日から令和7年も下半期に突入です。時間があっちこっちで溶けまくって、なんかみるみるうちに時が過ぎていっている気がします。いろいろなお仕事を一つ一つ丁寧にこなしていかなくてはな、と。それにしても暑い……
▼宇賀克也裁判長の歴史的判決、その意義をしっかりと考えたい
2025年6月27日、最高裁判所は国による生活保護費の引き下げを「違法」と認める歴史的な判決を下しました。対象となったのは、2013年から2015年にかけて政府が実施した一連の生活保護費の減額措置で、全国29地裁・高裁で争われていた約1000件以上の訴訟の行方に、大きな影響を与える判決です。
「生活保護」は国民の「生存権」を支える、とても大切な制度です。この制度を「悪用」して「不正受給」をする人たちがいるのも事実で、そのことがニュースになったりもします。しかし「不正受給」の問題と、「生存権」を保障する制度としての生活保護の運用は、切り離して考える必要があります。
これまでも生活保護等、生存権を支える制度の受給者が、その権利を国と争ってきた歴史もあります。「朝日訴訟」「堀木訴訟」などで得た判例は、生存権を考える上で大切にしなくてはなりません。
そして今回の判決。この判決を出した裁判長が、宇賀克也先生だったということも、私は一つのポイントだったのではないかと思っています。宇賀克也先生は「行政法」の専門家です。多くの専門書があり、法律を勉強する人なら、絶対に目にする名前の先生です。
その宇賀先生が、「生存権」に対し真正面から出した今回の判決の意義を、しっかりと考える必要があります。
▼ 生活保護費の引き下げ、なぜ違法とされたのか
今回争点となったのは、2013年度から段階的に行われた最大10%近い生活扶助基準の引き下げです。判決では、「厚生労働相には基準改定にあたり、専門技術的、政策的な見地から裁量権がある。改定の判断に裁量権の範囲の逸脱や乱用があれば、同法に違反し違法となる」としています。当時、厚生労働省は消費者物価指数の動向に基づくと説明していましたが、最高裁は「本来あるべき政策判断の手続きを踏まず、恣意的な数値操作が行われた疑いがある」と厳しく指摘しました。実際の物価動向との乖離や、比較対象とした商品群の偏り、統計上の不備が認定されました。
生活保護の根幹をなす「生活扶助基準」は、憲法第25条に基づき、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための基準です。これが明確な合理性なく引き下げられた場合、その影響は制度利用者の生活に直結します。最高裁は、政策変更の透明性と合理性が欠けていた点を問題視し、国の裁量権の逸脱を明確に否定しました。
▼ 朝日訴訟・堀木訴訟と積み上げられた「生存権」の大切さ
生活保護と憲法25条をめぐる司法判断といえば、やはり「朝日訴訟」が思い起こされます。1950年代、結核を患った原告・朝日茂さんが、当時の生活保護基準が人間らしい生活を保障するものではないと訴えた裁判です。最高裁は最終的に訴えを退けましたが、「生存権の理念」を社会に知らしめ、制度改善の道を開く大きな一歩となりました。
一方、「堀木訴訟」は、障害年金と児童扶養手当の併給を制限した制度について争われたもので、裁判所は国の裁量を広く認めつつも、行政による支援の在り方に社会的関心が集まりました。
先人によるこれらの判決の積み重ねが、今回の判決に与えた影響は非常に大きいです。今回の最高裁判決は、これらの判例に連なるものとして位置づけられると同時に、「国の裁量は無制限ではない」という明確なメッセージを発した点で、極めて画期的といえます。
▼支援現場の実感と、行政書士としての可能性と
この10年間、各地で原告となった生活保護受給者や支援者、弁護士たちは、根拠の不明確な「減額」に苦しみ、日々の暮らしを脅かされてきました。制度の利用に伴う心理的ハードルや、申請時の萎縮効果、あるいは減額を受けた家庭の子どもたちの教育・健康への影響、そうした「見えにくい被害」が社会の中で積み上がっていったとも言えます。今回の判決に対し、原告弁護団が「司法は生きていた」と語ったことは、まさにこの裁判が「人間の尊厳」に関わる問題であったことを物語っています。
私自身、行政書士として何度か生活保護に関するご相談を受けてきました。その中で制度利用者や相談者と接して感じたのは、生活保護の申請は「最後の手段」でありながら、制度的にも心理的にも高いハードルが存在するということです。
そしてご相談頂いたとしても、制度に対しての一般的なご説明に終始し、できたとしても、申請につきそう、ぐらいまでのことしかできませんでした。
こうした中、2025年6月に成立したれ行政書士法の改正により、特定行政書士が行うことができる「不服申立て」の業務範囲が拡大されました。(施行は来年1月)これまでの制度では、「行政書士が作成した申請書」に関する処分についてのみ、不服申立ての代理が認められていましたが、改正により、「行政書士が作成することができる申請」に関する処分についても、不服申立ての代理が可能になりました。
この改正により、生活保護の申請が却下された場合や、受給者が減額・打ち切り等の処分を受けた場合、行政書士が依頼者に代わって不服申立てを行うことが可能になります。制度の運用において、行政の裁量や判断が争点となる場面で、法的知見と実務的な支援を持つ行政書士が適切に介入できることは、申請者・受給者にとって大きな支えとなるでしょう。
このような法改正は、行政書士の業務の幅を広げただけでなく、「法と制度のはざまで声をあげにくい人々に寄り添う専門職」としての責任を、いっそう明確にしました。単に書類を作成するだけではなく、制度の適正運用をチェックする存在として、そして「人のくらしと行政をつなぐ」担い手として、私たちはより丁寧に、誠実に仕事をしていかなくてはなりません。
生活保護を巡る制度運用については、今回の最高裁判決を受けて、以下のような課題が浮かび上がっています。
・支給基準変更における客観性・透明性の確保
・不利益変更時の丁寧な説明と救済措置の整備
・地方自治体の裁量と本庁ガイドラインのバランス
・AIやビッグデータを活用した生活実態の的確な把握
制度の信頼性を担保するためにも、国民に対する十分な情報開示と説明責任が欠かせません。そしてその運用がしっかりとされているか、行政書士もその職責で、しっかりと監視していかなくてはならないのではないかと、考えます。
▼今後に向けて:制度の「温かさ」と「合理性」の両立を
今回の最高裁判決は、国が生存権の保障を担う主体として、決して「効率化」や「予算制約」だけで物事を決めてはならないという警鐘でした。福祉の現場では、効率と共に「温かさ」や「人へのまなざし」が求められています。
制度に関わる一人ひとりが、自らの役割を見直し、支援を必要とする人がきちんと制度にアクセスできる社会をつくっていく。今回の判決は、その第一歩となるかもしれません。
生存権は“理念”ではなく“現実”でなければならない。
この判決を機に、制度を支える一人として、自らの責任をあらためて見つめ直し考えていきたいと思います。
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