混乱する政局は、どこに向かうのか……(令和7年10月14日 火曜日)
- 那住行政書士事務所

- 10月14日
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まったく政治が良くわからない状況になっています。高市自民党新総裁が誕生し、通常であれば、すでに「高市総理」が誕生しているはずなのですが、先週、公明党が政権離脱を表明。26年続いた自民党と公明党の連立政権が、ついに終焉を迎えました。
「自公は一体」という言葉が政治の常識として定着していた中での離脱劇は、日本の政界に大きな衝撃を与えています。そして永田町では次の政権構想をめぐって激しい駆け引きが始まっています。
過去にも政治が大きく動いた時期がありました。しかしこれまでの「政変」と比較しても今回の公明党の動きは異様にも感じます。本稿ではまず、過去の政局の混乱を振り返りつつ、今後の日本政治がどの方向に進むのかを展望してみたいと思います。
―1993年の政変がもたらした「政党再編の時代」
まず思い出されるのが、1993年、細川護熙首相の下で誕生した非自民連立政権です。
当時、自民党は党内対立から分裂し、新生党・日本新党・社会党など八党派が手を組んで政権交代を実現しました。
「55年体制の崩壊」と呼ばれたこの出来事は、戦後政治の枠組みを根底から変えるものでした。
もっとも、細川連立は政策面での共通基盤が弱く、約8か月で崩壊。続く羽田内閣も短命に終わり、結局自民党は社会党との「自社さ連立」で政権に復帰しました。この経験は、“理念よりも数の論理”で動く日本政治の宿命を象徴するとともに、与党に復帰するのであれば、長年対立していた社会党とも手を組む、自民党のなりふり構わない姿は、世間に驚きを与えました。
しかしこの時点では、社会党の村山富市総理が誕生したことに大きな意義がありました。55年体制以降、自民党からしか総理が生まれていなかったわけですが、他党からも総理が誕生するという現実が、この連立から生まれ、政治のいろいろな可能性を国民に示す結果となりました。
―小泉劇場と郵政解散 ― 党内統制の危うさ
2005年、小泉純一郎首相が断行した郵政民営化をめぐる「解散総選挙」も、政局の混乱を象徴する出来事でした。党内造反を切り捨て、「刺客」を送り込むという強硬な手法で世論の支持を得たものの、この手法は党内の亀裂を深め、後の政治不信の温床となりました。
小泉劇場の教訓は、強いリーダーシップが一時的な安定を生んでも、制度的な安定を保証するわけではないということです。安倍総理が協力なリーダーシップを発揮するところまでは、小泉後の自民党は紆余曲折はあったものの、強いリーダーが統制した形で、進んで来たと思います。しかし突然、安倍総理を失ったことで、この「リーダー依存型政治」の限界が自民党に再び迫っている、そんな状況であるようにも見えます。
―民主党政権の苦悩 ― 連立の難しさ
2009年、国民の期待を背負って民主党が政権を奪取しました。
しかし、社民党や国民新党との連立は調整に苦しみ、政策決定の遅れと迷走が続きました。
特に東日本大震災への対応、原発政策、消費税論議などをめぐる不統一は、政権の求心力を大きく損ねました。この時期の経験が示したのは、「理念が異なる複数政党の協調」は理想的に見えても、現実には極めて難しいという現実です。
連立を維持するには、単なる政策合意ではなく、深い信頼と利害調整の仕組みが不可欠なのです。
― 自公連立の崩壊からどうなるのか
こうした過去の教訓を踏まえると、今回の「自公離脱」がいかに異例かが分かります。
自民・公明は1999年に連立を組んで以来、どんな政権交代や総理交代の波にも耐えてきました。それが破綻した背景には、いくつかの要因が重なっています。
第一に、政策的乖離の拡大です。
石破政権の間は比較的に公明党が寄り添いやすい政治で、様々な政策が進んできました。しかし高市新総裁が総理になった場合、防衛政策、憲法改正、経済安保の問題など、本来自民党が有す、保守的な政策が進むことで、公明党が持つ政策との乖離が拡大する可能性があります。
第二に、政治とカネの問題です。
自民党の旧派閥による裏金問題が尾を引く中、公明党はクリーンイメージを保つため距離を取らざるを得なかったということです。この問題は、「表向き」の理由とするには、とても良い理由ではあると思います。
第三に、選挙戦略上の対立です。
自民党が公明党の票に頼っているのと同時に、公明党も自民党の票に頼っている現実があります。公明党の支持者が自民党のポスターを貼っているの同時に、自民党の支持者も公明党のポスターを貼っている現実があります。そのバランスが、均等であるならばお互いに不満はないでしょうが、どちらかが負担と感じた時、信頼関係は崩れてしまいます。
現実問題として公明党の離脱という状況が発生してしまいました。このなかで、日本の政治はどこへ向かうのでしょうか。
現時点で考えられる主なシナリオは、次の4つです。
シナリオ① 新連立の模索
自民党が国民民主党や日本維新の会などと組む「再構築型連立」。
政策の一部を譲ってでも安定多数を確保する動きです。
ただし、譲歩が大きければ自民党の保守支持層が離反する危険もあります。
シナリオ② 自民単独政権の継続
公明党を欠いたまま、都度、他党や無所属議員を取り込みながら法案を通す「少数与党方式」。短期的には現実的ですが、国会運営は不安定で、政策実行力は大きく落ちます。
“時間稼ぎ”の政権運営に終わる可能性もあります。
シナリオ③ 解散・総選挙による再出発
行き詰まりを打開するため、年内から来春にかけて解散・総選挙が行われる可能性も。
「国民に信を問う」という大義は立ちますが、結果次第では政権交代のリスクも伴います。
小選挙区での公明党不在は自民にとって致命的な打撃となるかもしれません。
シナリオ④ 公明党の“野党化”と中道再編
一方の公明党は、立憲民主党や国民民主党などとの協調を探る可能性もあります。
「第三極の再編」を掲げ、中道・穏健路線を旗印に野党再構築を主導するシナリオです。
ただし、政党間の信頼や政策整合性が欠ければ、短命に終わるリスクもあります。
今回の政局を見ていて感じるのは、政党政治の制度疲労です。連立の利点である「多様な意見の調整」が、逆に“停滞”を生む構造になっている。党利党略が優先され、政策が後回しになる日本政治の弱点が再び露わになりました。
また、首相のリーダーシップも試されています。高市新総裁がこの難局をどう乗り越えるのか。求められているのは“強さ”よりも、“聴く力”と“調整力”でしょう。一方的な路線転換や保守強硬策では、連立崩壊の連鎖を食い止めることはできません。
―歴史の繰り返しと、国民の選択
日本政治は、混乱を繰り返しながらも最終的には安定を志向してきました。1993年の政変後も、2009年の政権交代後も、数年の試行錯誤を経て体制は収束しました。今回の自公連立崩壊も、やがて新たな「均衡点」を見いだすでしょう。
ただし、その過程で失われるのは時間と信頼です。政治の停滞は、経済政策、社会保障、外交安全保障など、あらゆる分野に影響を及ぼします。特に、安全保障巡る状況は、1993年や2009年とはまったく違う状況にあります。このような状況の中で、この日本という国を安心・安全な方向へ導ける、強い政治を国民は望んでいるのではないでしょうか。
長年続いた「自公政権」という枠組みが崩れた今、日本政治は再び“再構築”の時代に入ろうとしています。それは混乱でもあり、同時に新しいチャンスでもあります。
かつての細川連立や民主党政権が果たせなかった「協調と改革の両立」。その課題をどう乗り越えるか。次のリーダーと政党には、単なる数合わせではなく、理念と現実をつなぐ知恵が求められています。政治の安定とは、単に権力を維持することではありません。国民が納得し、未来に希望を持てる仕組みをつくることです。今回の政変を、その一歩とできるかどうか。
それが、これからの日本政治の試金石となるのではないでしょうか。
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