暮らしに役立つワンポイント法務。日々の生活、皆様の事業で役立つ話を更新していきます。
相続はある日突然やってきます。そしてどんな人にもやってきます。いざ相続が始った時、どのような手続きをとっていったらよいのか、具体的にお話を続けていきます。
今日は「生死が判明しないとき」についてのお話です。
生死が判明しないときの手続きとは
一般的に相続の開始とは、被相続人が死亡することにスタートすることは、昨日、本稿でお話した通りです。しかし震災等の天災や事故、もしくは失踪等によって生死が判明しない場合もあります。その場合、いつまでも「生きている」ということにした場合、法律上の様々な手続きに支障をきたす場合があります。そこで、そのような場合対処できるよう、法律でいくつかの方法を定めています。
一つが認定死亡です。例えば、水難や火災、その他の災害により、死亡したと思われる可能性が極めて高いが、死体が確認できない場合、官公署が死亡を認定する制度です。例えば海での事故の場合は、海上保安庁が「死亡認定事務取扱規程」を定めており、一定の鉄卯月に沿って死亡が認定されます。記憶の新しいところでは、2011年の東日本大震災の際は、震災発生3カ月後の6月7日に、法務省民事局民事第一課長通知(法務省民一第1364号「東日本大震災により死亡した死体未発見者に係る死亡届の取扱いについて」)が発出され、各市町村の認定で、「死亡」が認定されることとなりました。
もう一つが失踪宣告です。生きているか死んでいるのか、その生死が7年間あきらかでない時、又は戦争、船舶の沈没、震災など、死亡の原因となる危機に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明かでないとき、家庭裁判所への申立てにより、裁判所から失踪宣告を受けることができる制度です。この宣告を受けると死亡が擬制され、法律上、死亡したものとみなし、死亡したのと同じ効果を生じさせることができます。
認定死亡と失踪宣告は同じような制度ですが、認定死亡は戸籍法が、失踪宣告は民法が根拠法となっています。認定死亡は「その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない」と行政が行う手続き、失踪宣告は、家庭裁判所によって為される司法手続きということになります。
また認定死亡は、法律上、生存している可能性が限りなく低い場合に行われる手続きとなりますが、失踪宣告は、生きているか死んでいるかわからない場合で死亡したことにするための手続きとなります。
戸籍法
第八十九条 水難、火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。但し、外国又は法務省令で定める地域で死亡があつたときは、死亡者の本籍地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。
民法
(失踪の宣告)
第三十条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止やんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
認定死亡の手続きについて
状況によりケースバイケースとなりますが、東日本大震災の際は、法務省からの通知により、①親族等の届出人による「申述書」、②事件本人の被災の状況を現認した者、また、事件本人の被災直前の状況を目撃した者等の「申述書」、③事件本人が災害の発生時、被災地域にいたことを強く推測させる客観的資料(在勤・在学証明書等)、④警察等からの事件本人の行方が判明していない旨の公的機関の証明書又は報告書、⑤その他参考となる書面 のうち、①は必須、②~⑤は可能な限り、死亡届を提出する市区町村に提出することにより、認定が判断されるとされています。なおこと通知は2024年8月20日現在も有効です。
失踪宣告の手続きについて
失踪宣告は家庭裁判所に「審判の申立て」を行います。申立てがなされると、家庭裁判所は調査を行った上で、「公告」を行い、公告期間満了ののち、失踪宣告の審判が為されます。
失踪宣告を受けた者は、「その生死が7年間あきらかでない時」の期間満了の時に、或いは「戦争、船舶の沈没、震災など、死亡の原因となる危機に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明かでないとき」の場合は「その危難が去った」時に死亡したものとされ、その時点から相続が開始することとなります。
失踪宣告の届出について
失踪宣告の審判確定の日から10日以内に、失踪宣告の申立人は、失踪宣告を行けた者の本籍地または届出人の所在地の市区長村に「失踪宣告の届出」を行う必要があります。この届出をもって、戸籍等にその旨が記載されます。
迷ったら、行政書士にご相談ください
重要なのは、焦らずに必要な情報を集め、適切に手続きを進めることです。相続は、人生の大きな節目の一つです。手続きをスムーズに進めることで、故人の遺志を尊重し、遺族が新たな一歩を踏み出せるよう、しっかりと進めていきましょう。
また、日頃から遺言書を作成し、相続財産の把握を行っておくことも大切です。これにより、相続が発生した時にスムーズに手続きを進めることができます。相続について不安がある方は、早めに行政書士等専門家に相談し、適切な準備を進めることをお勧めします。
今日は、「生死が判明しないとき」についてご説明しました。さて次回は、「在日外国人の相続」ついてご説明します。
初出2024/8/20
※本記載は投稿日現在の法律・情報に基づいた記載となっております。また記載には誤り等がないよう細心の注意を払っておりますが、誤植、不正確な内容等により閲覧者等がトラブル、損失、損害を受けた場合でも、執筆者並びに当事務所は一切責任を負いません。
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