
2024年4月1日に犯罪収益移転防止法の一部改正が施行されました。これにより、行政書士が行う会社設立、組織変更、定款変更等の業務において、お客様(依頼者)にお願いする確認事項が増加しました。
2025年1月23日、日本行政書士会連合会は「行政書士のための犯罪収益移転防止法 取引時確認等ハンドブック」作成し、行政書士向けに公表しました。当事務所では今後の業務について、日行連の指針に基づき、受任にあたり、本人確認等を行わせて頂きます。
お客様にはご面倒をおかけいたしますが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
「改正犯罪収益移転防止法」の趣旨そして、必要な確認事項についてご説明させていただきます。
1. 改正の背景と目的
犯罪収益移転防止法は、犯罪による収益が組織的犯罪やテロ資金供与に使用されることを防止し、健全な経済活動と国民生活の安全を確保することを目的としています。今回の改正により、行政書士を含む士業者が取り扱う特定取引において確認事項が追加されました。
2. 取引時確認の対象と具体的な確認事項
行政書士が取り扱う以下の業務が対象となります:
① 宅地又は建物の売買に関する行為又は手続
② 会社の設立又は合併に関する行為又は手続
③ 現金、預金、有価証券その他の財産の管理又は処分
※ 租税、罰金、過料等の納付は除きます。
※ 成年後見人等裁判所又は主務官庁により選任される者が職務として行う他人の財産の管理又は処分は除きます。
当事務所がお取り扱いしている業務で具体的にご説明いたしますと、以下の業務が対象となります。
① 宅地又は建物の売買に関する行為又は手続
「宅地」とは、宅地建物取引業法第2条第1項に規定する土地を指します。
業務としては、行政書士法第1条の2第1項に基づき売買契約書を作成する場合や、同法第1条の3第1項第3号に基づいて売買契約書の代理作成をする場合が該当します。
② 会社等の設立又は合併等に関する行為又は手続
ア)次の業務で定款又は議事録を作成し、手続を行うことが該当します。
株式会社
設立、組織変更、合併、会社分割、株式交換又は株式移転、定款の変更、取締役若しくは執行役の選任又は代表取締役若しくは代表執行役の選定
持分会社
設立、組織変更、合併又は合同会社の会社分割、定款の変更、業務執行社員又は代表社員の選任
イ)会社以外の法人、組合又は信託であって政令で定めるものに係るこれらに相当するものとして政令で定める行為又は手続
「会社以外の法人等」、「政令で定める行為又は手続」の具体例は次のとおりです。
「会社以外の法人等」
(法施行令第8条第3項)
特定非営利活動法人、特定目的会社、一般社団法人、一般財団法人、民法組合、匿名組合、有限責任事業組合等
「政令で定める行為又は手続」(同第4項)
※法人、組合、信託によって異なる
設立、定款・規約の変更、執行役員・理事・取締役の選任、組合契約の締結又は変更等
③ 200万円を超える現金、預金、有価証券その他の財産管理又は処分
・公正証書遺言書等の作成に関連して遺言執行者(民法第1006条)に就き財産管理を行う場合
・任意後見契約に関する法律第2条第1号に規定する任意後見契約の契約書の作成に関連して任意後見人に就き財産管理を行う場合
※ 任意後見契約の締結は除きます。
※ 特定業務から除かれているものは、特定取引にも該当せず、取引時確認の対象ではありません。
※ 列挙した取引に加え、特別の注意を要する取引(マネー・ローンダリングの疑いがあると認められる取引/同種の取引の態様と著しく異なる態様で行われる取引)も特定取引となります。
※ 200万円以下の取引であっても一回当たりの取引の金額を減少させるために一の取引を分割していることが一見して明らかなものは一の取引とみなすため、特定取引に該当する場合があります。
これらの取引において、以下の確認事項が必要です。
(1) 本人確認事項の確認
依頼者が個人の場合は、氏名、住所、生年月日を確認します。法人の場合は、名称、本店所在地を確認します。
(2) 取引目的の確認
取引の目的について、依頼者から申告を受けます。
(3) 職業または事業内容の確認
個人の場合は職業、法人の場合は事業内容を確認します。
(4) 実質的支配者の確認
法人取引の場合、法人の事業経営に実質的な影響を与える人物について確認します。
(5) 資産および収入の状況の確認
特定のハイリスク取引では、依頼者が取引を実行するための適切な資産や収入を有しているか確認します。
3. お客様にお願いしたいこと
改正法に基づき、依頼者であるお客様に以下のご協力をお願いする必要があります。
(1) 必要書類の提示
以下の書類をご準備いただきます。
自然人の場合:運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどの公的証明書
法人の場合:登記事項証明書、印鑑登録証明書
(2) 追加情報の提供
取引目的や事業内容についての具体的な情報
実質的支配者に関する情報
(3) 書類の正確性と期限の遵守
提出いただく書類は有効期限内である必要があります。また、最新の情報が記載されていることをご確認ください。
(4) 疑わしい取引の申告への理解
本法に基づき、疑わしい取引が発見された場合、当事務所は速やかに所轄官庁へ届出を行う義務があります。この際、お客様のご協力をお願いいたします。
4. 確認記録の作成と保存
行政書士事務所では、取引時確認を実施した記録を作成し、契約終了後7年間保存する義務があります。このため、お客様から提供いただいた情報や書類は厳重に管理されますのでご安心ください。
5. 遵守すべきポイント
ご提供いただく情報は正確かつ最新のものであること
必要書類のご提示や送付は、速やかに対応いただくこと
当事務所からの追加質問や確認依頼にご協力いただくこと
6. 最後に
本改正により、皆さまには一部ご負担をおかけすることになりますが、これは不正取引を防止し、より安全で健全な取引環境を確保するための重要な取り組みです。当事務所では、お客様の信頼に応えるため、適切な対応と管理を徹底してまいります。
ご不明な点や詳細についてのご質問がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
法務通信
ー暮らしと事業の法務情報+地元・横浜/市ヶ尾の話題
行政書士・特定行政書士 那住史郎
のブログというかそんなようなもの
Comments