他の行政書士事務所とは違う当事務所の特徴の一つとして、当事務所では「著作権」に関する業務を多く扱っております。昨日は保護期間が延長されたことについて記載しましたが、今回は保護期間延長において、おこった議論について書きたいと思います。
保護期間延長には、著作権の利益を享受する著作権者の間でも賛否両論がありました。
まず保護期間が延長されれば、単純にその分だけ保護期間が延長されるので、利益が受けられる期間が長くなります。また、世界各国の著作権法を眺めてみると、欧米各国の多くでは保護期間が70年となっているので「世界の潮流」に合わせるのであれば、70年とする必要があります。保護期間賛成派の方々からはこのような意見が上がっていました。
一方同じ著作権者でも、例えば劇作家の方々からは反対の声が上がっていました。と、言うのは「原作」があってその作品を「舞台化」するような場合は、保護期間の間でしたら、著作権者の許諾が必要となります。これまで一部の著名な文学作品で、なかなか著作権継承者から舞台化の許諾が下りなかったり、また著作権継承者がわからなかったりというようなことから、舞台化が行われなかったということがあったからです。
著作権法は単なる著作権の経済ルールを決める法律ではなく、「文化の発展に寄与することを目的」としています。
一つの作品から新たな芸術が産み出されるということは、間違いなく「文化の発展に寄与する」ことであり、そのような視点から保護期間の延長を見ると、延長されることにより利用の制限が拡大することになるならば、はたして保護期間の延長は必要なのかということです。
この問題は2006~07年ごろ一度、関係者で激しい議論になり、法案提出が見送られたことがありました。それから10年ちょっと、今回、多国間の協定の中で延長が行われたわけですが、保護期間の延長を行う必要性について、10年ちょっと前の議論のころからどのような事情の変化があったのか、その部分についての説明が足りなかったのではないかと思いました。
私の考えとしては、国境を越えて著作物の流通が拡大している現状からすると、「世界の潮流」と合わせる保護期間延長は避けられないと思いますし、「著作権者不明」の場合の制度について、かなり使いやすいよう、度々の改正が行われていますので、保護期間延長に概ね賛成ではありました。
昨日”戦時加算”について書くしましたが、その前提で、まず保護期間の延長について書いてたら紙幅がつきましたので、”戦時加算”の件は来週月曜日に改めて。
5月9日木曜日。平日昼間は比較的、お客様先や役所回りなどで歩いていることが多いのです。で、外を歩いていると……街のあちらこちら”令和”の表記が見られるようになってきましたね。こういうの、一つ一つ貼り変えるだけでもけっこう大変そうだなぁと。
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