NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年9月4日 from那住行政書士事務所
- 那住行政書士事務所

- 5 時間前
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今朝は、横浜・川崎・相模原の「特別市」をめぐる県との応酬から。680億円の赤字になるという県に対し、3市側の試算では逆に130億円のプラスになるというのですから、同じ自治体の将来を論じているとは思えないほど数字が違います。
そのほか、最低賃金、約束手形、偽サイト、特殊詐欺。制度は動き、犯罪の手口も動く。問題は、私たちの感覚がその速度についていけているかです。
01|特別市をめぐり県と3政令市が真っ向対立――680億円赤字か、130億円黒字か
02|最低賃金、全国平均1,177円へ――「上げれば解決」で終わらせてはいけない
03|約束手形がいよいよ退場へ――「払う側に都合のいい商慣行」を終わらせる
04|1万5000円の「純金」は銅と鉄――有名ブランドをかたる偽サイトに注意
05|特殊詐欺、半年で1,816億円――もはや「高齢者だけの問題」ではない
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01|YOKOHAMA/POLITICS|特別市をめぐり県と3政令市が真っ向対立――680億円赤字か、130億円黒字か
横浜市、川崎市、相模原市が9月1日、「特別市に関する三市の考え方」を公表しました。
「特別市」というのは、簡単にいえば政令指定都市を道府県から独立させ、現在は県が担っている事務や権限、税財源を市側へ移す新しい大都市制度です。横浜市などは長年その実現を求めており、人口減少社会を迎えるなか、県と市による二重行政を解消し、大都市が地域の実情に合わせて行政サービスを提供できるようにすべきだと主張しています。
ところが神奈川県は、これに一貫して反対しています。
9月3日、県は3市の考え方に対する「受け止め」を公表し、「住民目線から見て法制度化は妥当でない」と改めて表明しました。ここまでは、まあ、自治制度をめぐる昔ながらの県と大都市の綱引きです。面白いのは、その根拠となる数字がまるで違うことです。県は、3政令市が県から抜ければ約680億円の財源不足が生じると試算しています。ところが3市側の試算では、逆に県財政は約130億円のプラスになるという。
差額810億円。さすがに「多少、計算方法が違いました」で済ませるには大き過ぎます。
川崎市の福田紀彦市長は3日の記者会見で、試算条件の詳細を今後詰めたいとの考えを示し、県との協議を求めました。一方、黒岩祐治知事は、なぜ3市側の数字になるのか根拠がよく分からないとして、県の約680億円の財源不足という認識は変わらないとしています。
ここで少し冷静になって考えたい。特別市に賛成するか反対するか以前に、制度変更によって県財政が680億円悪化するのか、130億円改善するのかさえ共有できていない状態で、住民に「どちらを選びますか」と聞くのは少々乱暴です。
しかも、これは役所同士の縄張り争いではありません。県から横浜市が独立するとなれば、税金の行き先、警察、道路、河川、防災、医療、福祉、教育、広域行政など、住民生活に関係する様々な問題が出てきます。横浜市民は同時に神奈川県民でもあるわけで、行政組織の都合だけで「こっちの方が効率的です」と言われても、そう簡単には納得できません。
逆に県側も、「今の制度で困っていないのだから変えなくていい」という話では済まないでしょう。人口370万人近い横浜市を、人口数万人の市町村と同じ「県の中の一市」という制度だけで扱い続けることに無理がないのか。それもまた検証されるべきです。
私は特別市の議論そのものは、もっとやればいいと思います。
むしろ問題は、これほど大きな制度改革なのに、市民の関心がまだ十分高いとは言えないことでしょう。「県から独立します」と言われれば大ニュースに聞こえますが、独立したら税金はどうなるのか。警察はどうなるのか。県立施設はどうなるのか。横浜市以外の県民にはどんな影響が出るのか。制度論をやるなら、まずそこを普通の言葉で説明してほしいと思います。
そして何より、680億円の赤字と130億円の黒字が同じテーブルに載っている現状は、早めに片付けてもらいたいところです。政治の議論では意見が違って当然です。しかし算数まで違ってしまうと、住民は何を信じればいいのか分かりません。
参考:
神奈川県「『特別市に関する三市の考え方』に対する神奈川県の受け止め」https://www.pref.kanagawa.jp/docs/gz8/prs/r3460363.html
テレビ神奈川「『特別市』めぐる試算に相違 福田市長と黒岩知事は」https://www.tvk-yokohama.com/tvknews-archive/2026/09/03/19809.php
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02|LABOR/WAGE|最低賃金、全国平均1,177円へ――「上げれば解決」で終わらせてはいけない
厚生労働省は9月3日、今年度の地域別最低賃金について、47都道府県すべての地方最低賃金審議会から答申が出そろったと発表しました。
全国加重平均は時給1,177円。昨年度の1,121円から56円上がり、目安制度が始まった1978年度以降では2番目に大きな引上げとなります。都道府県ごとの引上げ幅は54円から65円で、改定後の最高額は1,280円、最低額でも1,085円となります。神奈川県は54円上がって1,279円。10月1日から適用されます。東京都に次ぐ水準です。賃金が上がること自体は歓迎すべきでしょう。
物価がこれだけ上がっているのに、給料だけ「企業努力に期待します」で済ませていたら、働く人の生活は持ちません。ただし、最低賃金のニュースを見るたびに少し気になるのは、「最低賃金を上げました」というところで政策が一件落着したような顔をしてしまうことです。
時給1,279円で1日8時間、月20日働けば、単純計算で月額約20万4,600円。ここから税金や社会保険料が引かれます。横浜で家賃を払い、電気代を払い、食事をし、携帯電話を持ち、たまには服も買う。これを「余裕のある生活」と呼ぶ人は、そう多くないでしょう。
一方、支払う中小企業の側も楽ではありません。
例えば時給1,225円だった人を1,279円にすれば、一人当たり54円の上昇です。しかし雇用主が負担するのは時給だけではなく、社会保険料もあり、労働保険料もあり、有給休暇もある。従業員が10人、20人といれば、年間ではかなりの額になります。だからといって賃上げを止めろ、という話ではありません。むしろ逆です。
最低賃金を上げ続けなければならない経済をつくるのであれば、同時に中小企業が価格を上げられる環境をつくらなければ筋が通らないのです。
大企業が取引先に値下げを求め、その取引先が人件費を削り、それでも国は最低賃金を上げる。そんな三方向から挟まれたら、最後に残る選択肢は「人を雇わない」になってしまいます。
賃上げ政策で本当に見るべき数字は、最低賃金の額だけではありません。
企業がきちんと価格転嫁できたのか、生産性は上がったのか、社会保険料を含めた手取りはどうなったのか。額面の時給だけを毎年競うのなら、政治としては比較的簡単です。
難しいのは、払える会社を増やし、働いた人の手元にもちゃんと残る経済をつくること。こちらには「○円上げました」と一行で書ける答えがありません。
参考:
厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html
神奈川労働局「最低賃金のお知らせ」https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/saiteichingin_chinginseido/saichin.html
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03|BUSINESS/PAYMENT|約束手形がいよいよ退場へ――「払う側に都合のいい商慣行」を終わらせる
公正取引委員会と中小企業庁が、約束手形の利用廃止を見据え、各業界団体や金融機関に支払条件の適正化を要請しました。
一見すると地味なニュースですが、中小企業の経営にとってはかなり重要です。
今年1月に施行された中小受託取引適正化法、いわゆる「取適法」では、対象となる製造委託などの代金を手形で支払うことが禁止されました。さらに2027年4月からは、取適法の対象外となる一定の製造委託などについても、独占禁止法上の新しい「支払告示」により、原則として給付を受けてから60日以内に代金を支払うことが求められます。
そしてもう一つ、実務上の大きな期限が迫っています。
電子交換所における手形・小切手の交換は2027年3月31日で終了する予定で、多くの金融機関が2026年9月30日を手形・小切手の最終振出期限に設定しています。つまり今月末です。
長く商売をしてきた人には、手形は当たり前の存在だったでしょう。商品は今日受け取る。しかし金を払うのは数か月後。考えてみれば、ずいぶん発注者に都合のいい仕組みです。
受注側は材料費も人件費も先に払わなければならないのに、売上代金は何十日、場合によっては何か月も先まで入ってこない。その間の資金繰りは受注側の仕事です、というのですから、力関係がどちらに傾いているかは説明するまでもありません。しかも問題は、紙の手形を電子記録債権に置き換えれば解決するわけではないことです。公取委もそこは分かっていて、電子記録債権や一括決済方式であっても、一定の場合には60日以内に満額を受け取れない支払いを禁止しています。さらに対象外の取引についても、支払サイトを60日以内へ短縮し、できる限り現金払いとするよう求めています。
これは大事なところです。紙を電子にしただけで「DXしました」と言われても、金が入る日が同じなら受注側の資金繰りは一円も改善しません。本質は決済手段ではなく、いつ払うかです。
日本では長い間、「昔からこの条件です」「業界の慣行です」という言葉で、妙な商習慣が延命してきました。しかし業界慣行というものは、それだけで正当になるわけではありません。むしろ長く続いているからこそ、誰も疑問を持たなくなっている場合があります。
手形が消えること自体を惜しむ必要はないでしょう。
惜しむべきなのは、まともな技術や商品を持つ中小企業が、取引先から金が入るまでの資金繰りで倒れることです。
「仕事をしたら、なるべく早く金を払う」。随分長い制度改革の末にたどり着いた結論としては、驚くほど普通の話です。
参考:
公正取引委員会「約束手形の利用廃止を踏まえたサプライチェーン全体での支払の適正化について」https://www.jftc.go.jp/yakusokutegata_yousei.html
政府広報オンライン「各府省の新着情報」https://www.gov-online.go.jp/info/
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04|CONSUMER/FRAUD|1万5000円の「純金」は銅と鉄――有名ブランドをかたる偽サイトに注意
消費者庁が9月3日、田中貴金属工業やミキモトをかたる偽サイトについて注意喚起しました。SNS広告から偽サイトへ誘導し、「24Kピュアゴールド」の金貨を1万5000円、真珠のネックレスを1万4800円などと表示して販売。消費者庁が検査したところ、金貨の主成分は約7割が銅、約2割が鉄。ネックレスも真珠の模造品だったとされています。
純金が1万5000円。
冷静に見れば相当に怪しいのですが、そこへ有名企業の名前とロゴが付き、SNS広告という入口が付くと、人は案外信用してしまいます。
「残りわずか」「今日だけ」と急がせるのも定番です。詐欺師が嫌うのは、消費者が検索して考える時間なのでしょう。
ブランド名を見たら安心するのではなく、その会社の公式サイトから入り直す。
ネット通販では、この一手間がだんだん「防犯」になってきました。
参考:
消費者庁「報道資料 2026年度」https://www.caa.go.jp/notice/release/2026/
ITmedia NEWS「“純金金貨”購入→中身は銅と鉄 田中貴金属やミキモトかたる偽サイトに注意」https://www.itmedia.co.jp/news/article/2609/03/2000001141/
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05|CRIME/FRAUD|特殊詐欺、半年で1,816億円――もはや「高齢者だけの問題」ではない
警察庁の集計では、2026年上半期の特殊詐欺等の認知件数は2万2,031件、被害額は1,816.2億円。前年同期より被害額が51.7%増えています。1日平均にすれば約10億円が詐欺で消えている計算です。
特にSNS型投資詐欺は797.9億円。ニセ警察詐欺も507.9億円に達しています。SNS型投資詐欺では20~50代が認知件数の約6割を占めており、「特殊詐欺=高齢者を狙う電話」という古いイメージでは、もう実態を捉えられません。
これだけ被害が膨らめば、個人の注意力だけに責任を押し付けるのにも限界があります。
偽広告を載せる場所、送金する場所、連絡を取る場所。そのどこかに巨大なサービス事業者がいる。
「だまされないよう注意しましょう」は必要です。しかし年間数千億円規模の犯罪になれば、それだけでは政策とは呼べないでしょう。
参考:
警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260731/01.html
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最近、店で何かを買うたびに「アプリはお持ちですか」と聞かれます。
コンビニ、ドラッグストア、家電量販店、飲食店。どこへ行ってもアプリです。ポイントが貯まる、クーポンが届く、会員限定価格になる。なるほど便利なのですが、こちらのスマートフォンにも容量というものがあります。
昔は財布の中がポイントカードでパンパンになっていました。それが嫌で「スマホに全部入れば便利だ」と思ったはずなのに、今度はスマホの画面が各社のアプリでパンパンになっている。
人類は進歩しているのでしょうか。しかも久しぶりに開けば、たいていログアウトされています。レジの前でメールアドレスを思い出し、パスワードを何度か間違え、後ろに人が並んでいることに気付き、「もういいです」となる。30円のポイントをもらうために、なぜこんな試練を受けているのか分かりません。
便利という言葉は、なかなか油断できない言葉です。
一つ一つは確かに便利なのに、それが50個集まると妙に面倒になる。
最近は「便利なものを増やす」より、「面倒なものを減らす」方が、よほど立派なサービスなのではないかと思うようになりました。
……などと言いながら、ポイントが付くと言われれば、たぶん今日もアプリを開くのですが。
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