NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年9月1日 from那住行政書士事務所
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- 7 時間前
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「四半世紀」という言葉があります。
25年。数字にすればたった二桁ですが、人間の時間として考えると、なかなかの長さです。生まれた子どもが大学を卒業して社会人になり、当時30歳だった人は55歳になる。街の景色も変わり、携帯電話はスマートフォンになり、インターネットは特別なものではなくなり、いまではAIと普通に会話をする時代になりました。
私の25年前、2001年は大学を卒業して1年目。雑誌の編集部で働いていました。
原稿を集め、校正をし、締切に追われる。いま振り返れば若かったのですが、当時の本人は自分をそれなりに立派な大人だと思っていたはずです。25年後に行政書士をやりながら、毎朝ニュースを拾って文章を書いているなどとは、まず想像していなかったでしょう。
25年という時間は、振り返ると奇妙です。
その間には、思い出せないほど多くの日がある。それなのに「25年前」と言われると、当時の街の匂いや、自分が着ていた服、仕事場の机まで突然近くに戻ってくることがある。
長い。
でも、あっという間だった。人間の時間というものは、どうもこの二つが同時に成立するようです。
そして今日、2001年9月1日に起きた歌舞伎町ビル火災から、ちょうど25年を迎えました。
44人が亡くなった、戦後の建物火災史に残る惨事です。
あの火災を契機として消防法は大きく改正され、査察や違反是正、防火管理の制度も強化されました。それでも25年後のいま、雑居ビルから消防法令違反はなくなっていません。
今日は少し、防火対策の問題について考えたいと思います。
01|歌舞伎町ビル火災から25年――44人の命を奪った小さな雑居ビル
02|消防法は変わった。それでも違反はなくならない――25年後の防火対策
03|消防署への届出は「紙を出せば終わり」ではない――行政書士と防火手続
04|今日は「防災の日」――横浜市も災害対策本部訓練
05|今週末は横浜市役所で「横浜防災フェア2026」
那住行政書士事務所HP https://www.nazumi-office.com/
01|FIRE/HISTORY|歌舞伎町ビル火災から25年――44人の命を奪った小さな雑居ビル
2001年9月1日、午前1時ごろ。東京・新宿歌舞伎町の雑居ビル「明星56ビル」で火災が発生しました。
建物は地下2階、地上5階。延べ床面積は約500平方メートルという、繁華街では決して珍しくない規模のビルでした。ところが、この火災で44人が死亡、3人が負傷しました。東京消防庁の記録では焼損面積は160平方メートル。建物全体が巨大な炎に包まれた大規模火災だったから44人が亡くなった、という事件ではありません。むしろ、小さな雑居ビルで、これほど多数の命が失われたことこそ、この火災の恐ろしさでした。
当時の消防研究所の報告によれば、出火階である3階以上にいたと推定される47人のうち、44人が死亡しています。死傷者の多くは、階段室から急速に流入した煙に巻かれ、一酸化炭素中毒によって命を落としたとされています。
なぜ、これほど被害が大きくなったのか。後の消防審議会の答申では、いくつもの問題が指摘されています。階段室に物品が置かれていたこと、避難訓練が実施されていなかったこと、消防用設備の点検が行われていなかったこと、自動火災報知設備のベルが停止されていた可能性が高かったこと。そして、このビルには屋内の直通階段が一本しかなく、その避難の生命線ともいうべき階段部分から火災が発生したうえ、防火戸も正常に閉鎖しませんでした。一つ一つを見ると、いかにも地味な話です。階段に物を置かない。火災報知器を正常にしておく。防火戸の前をふさがない。避難訓練をする。消防設備を点検する。どれも、ニュースになるような華々しい防災対策ではありません。
しかし火災というものは、そういう「当たり前」を一つずつ怠った先で、人を殺します。
当時、火災原因については放火の可能性も指摘されましたが、出火原因は最終的に特定されていません。ここで重要なのは、仮に火をつけた人物がいたとしても、「火が出ること」と「44人が逃げられずに死亡すること」は別問題だということです。消防研究所も、この火災について原因を含む情報には不明な部分が多いとしています。
火災を完全になくすことはできません。放火もある。電気設備から出火することもある。
人間がミスをすることもある。だから防火という考え方は、「火を絶対に出さない」だけではなく、「火が出ても人を死なせない」ために何重にも安全策を置きます。
その最後の砦である避難経路まで機能しなかった。歌舞伎町ビル火災が社会に突きつけたのは、そこでした。
そして火災直後、全国の小規模雑居ビルを一斉に調べると、何らかの消防法令違反が確認された建物は9割を超えていました。つまり、明星56ビルだけが異常だったわけではありません。たまたま火が出なかった。たまたま大事故にならなかった。それを「安全」と呼んでいただけの建物が、日本中にあったということです。
25年という時間は長い。しかし25年前の出来事を「昔の事件」にしてしまった瞬間から、次の事故へのカウントダウンが始まるのだと思います。
参考:東京消防庁「歌舞伎町ビル火災25年」https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/fs/sinjuku/page_00106.html
総務省消防庁・消防審議会「小規模雑居ビルの防火安全対策に関する答申」https://www.fdma.go.jp/singi_kento/singi/singi038.html
消防研究所「明星56ビル火災の概要と問題点」https://nrifd.fdma.go.jp/publication/kouenkai_gaiyou/files/koenkai_6th.pdf
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02|FIRE SAFETY/LAW|消防法は変わった。それでも違反はなくならない――25年後の歌舞伎町
歌舞伎町ビル火災は、その後の日本の消防行政を大きく変えました。翌2002年には消防法が改正されました。
消防機関による立入検査について、それまであった時間的制約や事前通告に関する制限を撤廃し、違反是正のための措置命令を強化。命令を出した場合には、その事実を建物に標識を設置するなどして公示する制度も整えられました。
さらに一定の防火対象物について、防火対象物点検資格者による定期点検と消防署への報告を求める「防火対象物定期点検報告制度」が導入され、避難に必要な階段や廊下などの管理義務も明確化されました。罰則も強化されています。
要するに、歌舞伎町の44人を無駄にしてはいけないと、法律の側はかなり本気で変わったのです。
東京消防庁も火災直後、類似する4169棟を対象として緊急特別査察を実施。その後も歌舞伎町について専門的に査察を担当する体制を整備し、2011年には重大な消防設備違反などがある建物を公表する「違反対象物の公表制度」も始まりました。
では、25年経って問題は解決したのか。残念ながら、そうではありません。
日本経済新聞の報道によれば、東京消防庁管内の雑居ビルなどへの立ち入り検査では、避難経路への物品放置をはじめとした法令違反がいまも確認され、違反率はここ10年ほど約2割で横ばいの状態が続いています。
火災から四半世紀がたち、その間に法律も、行政の運用も変えましたが、それでも、階段に物を置く人はいなくならなかった。何とも人間らしい話ではありますが、笑って済ませるわけにはいきません。
8月27日には、25年の節目を前に、東京消防庁、新宿区、警視庁、地域団体など約200人が参加して、歌舞伎町の雑居ビルに対する一斉立ち入り検査が行われました。新宿区の吉住健一区長も、雑居ビルは権利関係や建物構造が複雑で安全対策がおろそかになりやすく、繰り返し現地に入り、管理者や店舗責任者への指導を継続することが重要だと述べています。
ここが雑居ビル問題の難しいところなのでしょう。
一棟のビルに、飲食店、バー、風俗店、事務所などが入り、テナントが頻繁に入れ替わる。建物所有者と店舗経営者は別で、防火管理の責任関係も複雑になる。そして、営業している側からすれば、階段の隅は「ちょっと物を置くのに便利な場所」に見える。しかしその「ちょっと」が25年前延焼拡大の一因となりました。
東京消防庁は25周年の啓発でも、階段や廊下に避難の障害となる物品を絶対に置かないよう、改めて強く呼びかけています。「25年間、同じことを注意している」と聞けば、行政の仕事が進歩していないようにも見えます。しかし逆なのかもしれません。
25年間、同じことを言い続けなければ、人間はまた階段に物を置く。防災とは、最新技術の話ばかりではありません。ちょっとした日々の当たり前を繰り返すことこそ重要なのではないでしょうか。
歌舞伎町ビル火災から25年という節目で考えるべきなのは、新しい防災スローガンではなく、この退屈な「当たり前」を続けられているかどうかではないでしょうか。
参考:日本経済新聞「雑居ビルで進まぬ防火対策 避難経路に障害物、後絶たず 歌舞伎町ビル火災あす25年」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260831&ng=DGKKZO98480490Q6A830C2CT0000
新宿区「歌舞伎町地域における雑居ビルへの一斉立入検査を実施(25年の節目)」https://www.city.shinjuku.lg.jp/whatsnew/pub/2026/0827-01.html
産経新聞「東京消防庁、東京・歌舞伎町の建物に一斉立ち入り検査 雑居ビル火災から25年を前に」https://www.sankei.com/article/20260827-IIWOG6DETZM55EYS6W7ESZXCGI/
総務省消防庁「消防法施行規則の一部を改正する省令概要」https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/021018gaiyo/
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03|ADMINISTRATIVE SCRIVENER/FIRE SAFETY|店を開く前に消防署――行政書士が関われる「防火の手続」
この「防火」についてですが、実は行政書士の実務も大きくかかわっています。なぜなら、実際に飲食店や店舗、事務所などを開くとき、防火について行政手続が必要になるからです。
これが意外に複雑です。
たとえば東京都では、建物や建物の一部を新たに使用する場合、「防火対象物使用開始届出書」を使用開始の7日前までに管轄消防署へ提出する必要があります。
新築だけではありません。テナントが入れ替わった場合、間取りや天井高を変更した場合、さらには工事をしなくても使用形態を変更する場合などにも届出が必要になることがあります。東京消防庁は、レストランから居酒屋へ用途を変えるケースなどを具体例として挙げています。
内装工事を伴えば、「防火対象物工事等計画届出書」が必要になることもあります。
さらに建物の用途や規模、収容人員によっては防火管理者を選任し、「防火・防災管理者選任(解任)届出書」を提出するとともに、防火管理者が「消防計画」を作成して届け出なければなりません。複数のテナントが入る一定規模以上の建物では、統括防火管理者や「全体についての消防計画」が必要になる場合もあります。
行政書士は、官公署へ提出する書類について、法律上認められた範囲で、依頼を受けて作成や提出手続の代理・代行を行う専門職です。したがって、消防署へ提出する各種届出についても、行政書士が関与できる領域があります。
・防火対象物使用開始届。
・防火管理者選任届。
・消防計画作成・変更届。
・各種の火災予防条例に基づく届出。
店舗開業では、飲食店営業許可、深夜酒類提供飲食店営業の届出、風俗営業許可、建設・用途変更関係の確認などと消防手続が絡み合うこともあり、「消防だけ見れば終わり」というケースはむしろ少ないでしょう。
ただし、ここは誤解してはいけません。行政書士なら消防に関することを何でもできる、という話ではなく、消防用設備の工事や整備については、消防法上、一定の設備について消防設備士の資格が必要ですし、工事整備対象設備等の着工届など、消防設備士の専門業務と密接に結び付く手続もあります。防火管理者そのものについても一定の資格要件を満たした者を選任する必要があります。
行政書士の役割は、設備工事をすることではない。どの手続が必要なのかを整理し、事業者から必要な情報を聞き取り、官公署へ提出する書類を適正に整え、必要に応じて消防署などとの手続を進めるところにあります。
行政書士はこうした必要な手続きの、「交通整理」もお手伝いすることができます。消防関係の手続では、工事着手前や使用開始前に届出が必要になるものがあります。東京消防庁では、防火対象物工事等計画届出書は工事着手7日前、防火対象物使用開始届出書は使用開始7日前など、手続ごとにタイミングが定められています。「明日オープンなので今日お願いします」と書類を持ち込んでも、建物の安全性に問題があれば、予定どおり営業できるとは限りません。
そして何より、消防手続の目的は「許可を取ること」でも「書類を受理してもらうこと」でもない。火災が起きたときに、人が死なないようにすることです。
行政書士が消防関係手続に関わるのであれば、この原点は忘れてはいけないと思います。書類の空欄を全部埋めて、受付印をもらった。それで仕事が完璧だったかどうかは、火災が起きたときに初めて分かる。
本当は、それでは遅いのです。
25年前の歌舞伎町の44人が残した教訓は、行政手続の世界にもつながっています。
参考:東京消防庁「防火対象物使用開始届出書」https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/drs/ss_03/001.html
東京消防庁「防火・防災管理者選任(解任)届出書/消防計画作成(変更)届出書」https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/drs/ss_02/001.html
東京消防庁「防火対象物の使用開始の届出をしよう」https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/bouka02.html
横浜市消防局「防火管理・消防用設備等のお知らせ」https://www.city.yokohama.lg.jp/bousai-kyukyu-bohan/shobo/shobosho/nishi/202306061.html
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04|YOKOHAMA/DISASTER PREVENTION|9月1日は「防災の日」――横浜市も災害対策本部訓練
今日9月1日は「防災の日」です。
横浜市では今日、発災時の災害対策本部機能と関係機関との連携を確認するため、市災害対策本部の運営訓練が行われます。
防災訓練というと、どうしても「毎年やっている行事」に見えてしまいます。
しかし本当に怖いのは、災害が発生した瞬間に「誰が決めるのか」「誰が情報を集めるのか」「誰がどこへ連絡するのか」が分からなくなることです。
マニュアルは、棚に置いておくだけでは何の役にも立ちません。
一度動かしてみる。そこで不具合を見つける。直す。
防災訓練とは、上手に避難するところを見せる発表会ではなく、むしろ失敗を見つけるためにやるものだと思います。
参考:横浜市「『防災の日』に横浜市災害対策本部運営訓練を実施します!」https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/bousai/2026/0821honbukunren.html
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05|YOKOHAMA/EVENT|今週末は市役所で「横浜防災フェア2026」
もう一つ、横浜の防災の話題を。9月4日(金)と5日(土)、横浜市役所1階アトリウムで「横浜防災フェア2026」が開催されます。
会場では防災関連のブース展示に加え、消防音楽隊の演奏、水難救助訓練、ステージイベントなどが予定されています。
防災用品を買っただけで、防災をした気になってはいけません。
非常食はどこにあるのか。
モバイルバッテリーは充電されているのか。
家族が別々の場所にいるとき、どこで連絡を取るのか。
そして、避難所はどこなのか。
知っているつもりのことを一度確認する。
防災の日というのは、本来そのくらいでいいのだと思います。
大地震は、こちらの準備が整うまで待ってはくれません。
参考:横浜市「横浜防災フェア2026」https://www.city.yokohama.lg.jp/bousai-kyukyu-bohan/bousai-saigai/moshimo/shitaisaku/kunren/bousaifair2026.html
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25年前の自分に会えるとして、何を話すだろう。そんなことを考えました。「25年後はこうなっているぞ」と教えたいことはいくらでもあります。スマートフォンが生活の中心になっていること。紙の地図をほとんど使わなくなること。音楽も映画もネットで見ること。AIに文章の相談までしていること。
でも、たぶん25年前の私は、そんな未来予想よりも「で、俺はどうなってるんですか」と聞くでしょう。それには、あまり詳しく答えない方が面白い。人生というものは、先にあらすじを読んでしまったら、たぶんつまらない。
25年前には想像もしなかった仕事をして、想像もしなかった人たちと知り合い、想像もしなかったことで悩んだり笑ったりしている。四半世紀という時間は長い。
けれど、今日から25年後は2051年です。そう書くと、とんでもなく未来に見えます。
その頃には74歳。ところが2001年から今日までが、振り返れば驚くほど短かったことを考えると、2051年だって案外すぐそこなのかもしれません。だから25年という時間は怖くもあり、面白くもある。長いようで短い。短いようで、その間に人生をまるごと変えるくらいのことが起きる。
9月1日。
25年前の火災を忘れない日であると同時に、自分に残されたこれからの「四半世紀」を、少し考えてみる日にしてもいいのかもしれません。
那住行政書士事務所
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