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NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年8月30日 from那住行政書士事務所


8月最後の日曜日です。


日曜日の朝は、平日とは少しだけ時間の流れ方が違います。目覚まし時計に追い立てられずに起きて、コーヒーを淹れ、新聞やスマートフォンを眺めながら、「今日は何をしようか」と考える。何もしないという選択肢まで含めて予定を決められるのが、休日のぜいたくなのかもしれません。

実際、今朝のNEWS CLIPは近所のファミレスで朝ごはんを食べながら書いてします。


横浜では今日、こども自然公園で「横浜旭ジャズまつり」が開かれます。35回目を迎える横浜市内最大級の野外ジャズフェスティバルです。また、ズーラシアの「ナイトズーラシア」も今日が最終日。夏休み最後の日曜日らしく、市内ではいろいろな催しがあります。


今日は次の話題を取り上げます。


01|最高裁、実際の裁判記録を使って生成AIを検証へ

02|福島の除染土、仙台で再生利用――東京都外では初

03|政府システムは「作って納品」でいいのか――デジタル庁が調達改革

04|最低賃金調査の調査票を紛失――行政の情報管理を考える

05|8月最後の日曜日、横浜では35回目の「旭ジャズまつり」


那住行政書士事務所HP https://www.nazumi-office.com/

01|AI/JUSTICE|裁判所にも生成AI――しかし「裁判官よりAIの方が速い」で済む話ではない


生成AIが、いよいよ裁判実務のすぐそばまで来ました。


最高裁は、民事裁判における生成AIの活用可能性を検討するため、早ければ2027年度にも、実際に終了した訴訟の確定記録を使った本格的な実証に着手する方針と報じられています。


これまで最高裁は、今年1月から2月にかけて模擬の民事訴訟記録を用いた検証を実施しており、現役裁判官らが複数の生成AIサービスを実際に試しています。そこで確認されたのは、ある意味では予想どおりの結果でした。


大量の主張書面を要約したり、長大な訴訟記録から事件全体の構造を素早く把握したりすることについては、生成AIに相当の利用価値がある。一方で、重要な事実や証拠を拾い漏らす危険があり、さらに人間の側が「AIがそう言っているのだから正しいのだろう」と過度に信頼してしまう問題もあるとされています。


民事裁判の記録は、とにかく多い。訴状があり、答弁書があり、準備書面が何度も往復し、証拠説明書と大量の書証が付く。複雑な事件になれば数百ページ、数千ページという世界になります。それを生成AIに読ませ、「原告と被告の主張を争点ごとに整理してほしい」と指示すれば、確かに仕事は速くなるでしょう。


行政書士などの法律実務家から見ても、魅力的な使い方です。


ただし、裁判所の場合は話が一段違います。裁判とは、単に大量の文章を上手に要約する仕事ではありません。一見すると些細な一文が事件の結論を左右することもあれば、当事者が以前の書面で述べていたことと今回述べていることの微妙な違いに意味があることもある。生成AIは文章を「それらしく整理する」ことには非常に強い一方で、何を落としてはいけないのかまで自分で保証してくれるわけではありません。


ここで怖いのは、AIが間違えること以上に、人間がAIを信じることかもしれません。

生成AIが堂々と整った文章を出してくると、人間はつい「ここまできれいに書いてあるのだから正しいのだろう」と思ってしまう。間違った答えを自信なさそうに出してくれればまだ親切なのですが、生成AIにはそういう遠慮がありません。


最高裁自身も、これまでの検証で裁判官による補正を前提とした活用が必要だとしています。


私は、裁判所が生成AIを研究すること自体には賛成です。

司法だけが「AIは怖いので使いません」と紙の山に埋もれている方が問題でしょう。

重要なのは、AIを使うか使わないかという二択ではありません。何をAIに任せ、何を人間が絶対に手放さないのか。その境界線を先に決めることです。

AIに判決を任せる必要はありません。


しかし裁判官が書類を探したり、単純な整理をしたりする時間を減らし、その分、人間にしかできない判断に時間を使えるのであれば、それは司法の質を上げる可能性があります。

「司法DX」「AI活用」という看板だけで拍手する必要もなければ、「裁判にAIとはけしからん」と条件反射する必要もない。


使うなら、きちんと使う。最後に判断するのは人間である。結局、そこに尽きると思います。


千葉日報「最高裁、AI活用を本格検証 来年度にも、確定記録利用」(2026年8月6日) https://www.chibanippo.co.jp/newspack/20260806/1650737

埼玉新聞「AI、訴訟書面要約で有効 最高裁検証、誤誘導恐れも」(2026年5月30日) https://www.saitama-np.co.jp/articles/198835/postDetail nippon.com

「AI、訴訟書面要約で有効 最高裁検証、誤誘導恐れも」(2026年5月30日) https://www.nippon.com/ja/news/kd1433425337057476726/

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02|FUKUSHIMA/POLICY|除染土が仙台へ――「科学的に安全です」だけでは社会は動かない


昨日29日、東京電力福島第一原発事故に伴う除染で発生した土壌について、仙台市の国の合同庁舎で再生利用する取り組みが始まりました。

これまで福島県内で実証事業が行われ、東京都内でも政府施設での利用が進められてきましたが、今回の仙台での利用は、福島県外での再生利用を広げていくうえで重要な一歩となります。


政府がこれを進める理由は明確です。


福島県内には、除染によって膨大な量の土壌が集められています。そして法律上、2045年3月までに福島県外で最終処分を完了しなければならない。ところが、その膨大な土をどこで最終処分するのかという最大の問題は、いまだ解決していません。

そこで放射性物質の濃度が一定基準以下の土を、道路や造成などに再生利用することで、最終処分しなければならない量そのものを減らそうというわけです。

理屈は分かります。


環境省は安全基準を設け、覆土などを行うことで追加被ばく線量を十分に低く抑えられると説明しています。実際に再生利用する場所では、放射線量のモニタリングも行われます。

しかし、この問題を「基準値以下だから安全です。以上」で終わらせるのも違うと思います。


福島第一原発事故から15年。除染土をどこへ持っていくのかという問題は、放射線量という数字だけでは処理できない社会的な問題になっています。

一方で、では全部福島に置いておけばいいのか、と言えば、それも無責任です。

事故によって最も大きな負担を背負った地域に、「私たちは不安だから、そちらで持ち続けてください」と言うのであれば、それはそれで随分身勝手な話でしょう。

この問題には、気持ちのいい正解がありません。


だからこそ必要なのは、政府が「安全です」と繰り返すことだけではなく、なぜ再生利用が必要なのか、どの程度のリスクなのか、何を測定し、異常が起きた場合にはどうするのかを、嫌になるほど丁寧に説明することです。


行政では「リスクコミュニケーション」という言葉がよく使われます。しかし時々、これを「行政が説明し、住民が理解すること」だと勘違いしているように見えることがあります。

コミュニケーションなのですから、行政側も住民が何を不安に感じているのかを聞かなければならない。「説明会を開催しました」という実績を一つ作って終わりでは困ります。

膨大な量の除染土をどうするのか。花壇に少量を置いて終わる話ではありません。


参考:環境省「除去土壌の復興再生利用・県外最終処分」環境省公式サイト

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03|DIGITAL/GOVERNMENT|行政システムは「仕様書を書いて、作らせて、納品」でいいのか


8月27日、デジタル庁が「情報システム調達におけるアジャイル開発やオープンソース化等に係る有識者検討会」の最終報告書を公表しました。名前だけで読む気をなくしそうな報告書ですが、中身はかなり重要です。


政府や自治体のシステム開発では長い間、行政側が最初に詳細な仕様書を作り、事業者へ発注し、完成したものを納品してもらうという方式が中心でした。

しかしデジタルサービスというものは、本来、使ってみなければ分からないことが山ほどあります。


利用者がどこで迷うのか、どんな機能が実際には使われないのか、制度改正で何を変えなければならないのか。最初に完璧な仕様書を書いて、数年後に「完成品」を受け取るという発想そのものが、現代のソフトウェア開発とは相性が悪いのです。

そこで今回の報告書では、短い期間で開発と改善を繰り返すアジャイル開発を、どのような行政プロジェクトで採用することが効果的なのかという判断基準や、官公庁でオープンソースソフトウェアを活用していくための具体策が検討されています。


私はこの方向性には賛成です。行政のデジタル化で最も避けたいのは、「予定どおりシステムを納品した。しかし誰も使いたがらない」という事態でしょう。行政の調達では、仕様書どおり作ったか、期限までに納品したか、契約手続に瑕疵がないかが重視されます。それ自体は当然なのですが、その結果として「手続は完璧、製品は微妙」という笑えないことが起こる。


デジタル化の目的は、システムを作ることではありません。国民や行政職員の手間を減らすことです。ところが「○○システムを構築しました」と書けば政策実績になるので、いつの間にか作ること自体が目的になる。そして数年後、使いにくいので「次期システム」をまた何億円もかけて作る。


IT業界にとっては永久機関でしょうが、税金を払う側には笑えません。もっとも、アジャイルもOSSも魔法ではありません。発注する行政側に能力がなければ、方式だけ変えても失敗します。本当に必要なのは調達制度を変えることと同時に、行政自身がシステムについて判断できる人材を持つことでしょう。


業者に丸投げしておいて、「今回はアジャイルでお願いします」と言ったところで、それはアジャイルではありません。丸投げの速度が上がっただけです。


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04|PRIVACY/GOVERNMENT|最低賃金の調査票を紛失――「調査する側」の情報管理は大丈夫か


8月28日、厚生労働省が少し気になる発表をしました。

「令和8年最低賃金に関する基礎調査」の調査票を紛失し、個人情報が漏えいしたおそれがあるというものです。


最低賃金に関する基礎調査は、最低賃金を決めるための重要な基礎資料です。企業側から情報を集め、それを行政が分析して政策決定に使う。その意味では、事業者が行政を信用して情報を預けることで成り立っている仕組みでもあります。だからこそ、こういう事故は軽く見ない方がいい。行政は民間企業に対して、個人情報を適切に管理してください、漏えいした場合には報告してください、安全管理措置を講じてください、と求めます。


もちろん、それ自体は必要なことです。しかし、求める側が預かった書類をなくしてしまっては格好がつきません。デジタル化やAI活用が進めば、行政が扱うデータはますます増えていきます。そこで必要になるのは、立派な「個人情報保護方針」をホームページに掲載することではありません。誰が情報を持ち出せるのか、どこに保管するのか、紙ならどう運ぶのか、電子データなら誰がアクセスできるのか。そして事故が起きたときに、どう追跡できるのか。


結局、情報管理というものは、こういう地味なところで決まります。

AI時代だ、データ利活用だ、と大きな話をしている横で、調査票そのものがどこかへ行ってしまった。これでは少々困ります。


参考:厚生労働省「令和8年最低賃金に関する基礎調査の調査票の紛失及び個人情報の漏えいのおそれについて」厚生労働省公式サイト

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05|YOKOHAMA/CULTURE|8月最後の日曜日、横浜で35回目のジャズ


最後は、日曜日らしい話題で。


今日、横浜市旭区のこども自然公園野球場で「'26横浜旭ジャズまつり YOKOHAMA SWING EMOTION VOL.35」が開催されます。35回目です。


横浜市も「横浜市の野外ジャズフェスティバルとしては最大規模」と紹介しており、幼稚園児によるマーチングバンドから、オーディションを勝ち抜いたアマチュアバンド、プロミュージシャンまでが出演します。開場は11時20分、開演は11時40分です。


横浜とジャズは相性がいい。

港町だからなのか、古いバーが残っているからなのか、街の歴史そのものが少し雑多だからなのか。きれいに整理されすぎていないところに、ジャズという音楽はよく似合います。

最近は、街のイベントにもすぐ「経済効果」や「交流人口」「地域活性化」という説明が付きます。


もちろん税金を使う以上、行政には説明責任があります。

でも、音楽を聴きに人が集まる。芝生に座って、知らない人同士が同じ曲に拍手する。それだけで成立する時間があってもいい。何でもKPIにしなくていい。

日曜日くらいは、そう思います。


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あとがき


最近、本屋に行くと、つい目的とは違う棚を見てしまいます。買うつもりだった本を探していたはずなのに、その隣の本を手に取り、さらにその隣が気になり、気が付けば最初に何を探していたのか分からなくなっている。

インターネットなら、検索窓に欲しいものを入力すれば、ほぼ一直線に目的地へ連れて行ってくれます。それは圧倒的に便利です。

でも、本屋には「探していなかったものを見つける」という妙な機能があります。これは案外、大事なことなのかもしれません。


AIも検索エンジンも、こちらが何を知りたいのかを察する能力は、ますます高くなっています。過去に読んだものから「あなたはこれが好きでしょう」と次々に差し出してくる。実際、かなり当たります。ただ、人生には、自分が好きだとも知らなかったものに出会う時間も必要です。日曜日くらい、検索履歴とは関係のない場所へ行ってみる。


休日というのは、案外そのためにあるのかもしれません。


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