NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年9月12日 from那住行政書士事務所(032)

9月12日、土曜日。
昨日は神奈川県行政書士会の研修会に参加し、久しぶりに、と言っては語弊がありますが、行政手続法を正面から勉強してきました。許認可、行政指導、不利益処分、届出と、行政書士の仕事を少し深く掘っていけば、結局どこかで行政手続法へ戻ってくる。日常の実務では個別法や申請要領に目を奪われがちですが、その後ろにある行政法の骨格を理解していなければ、書類を作ることはできても、行政と依頼者の間で何が起きているのかまでは見えなくなるのだと思います。
この話については、昨日別の記事にしました。興味のある方はこちらをどうぞ。
研修会の後、講師の先生、研修会を実施した神奈川県行政書士会企画部の方々と、軽く一杯やらしてもらいました。行政法を肴に酒を飲むのいうのも、また良いもんです。が、そんな場でも、横浜にいると話題になるのは、横浜市長選挙の話題です。
今日9月12日に立候補者説明会があるから、ということもあるのでしょうが、市長選挙は少し混戦、いや乱戦模様とねってきたようです。
01|YOKOHAMA/ELECTION|横浜市長選、次々に候補者――でも「空いた席があるから座りたい」では困る
横浜市長選が、一気に騒がしくなってきました。
山中竹春前市長の辞職に伴う市長選は10月18日投開票。この数日で立候補の動きが相次ぎ、前衆議院議員の中谷一馬氏、前回の市長選にも出馬した福山敦士氏、弁護士の原沢敦美氏と、次々に名前が挙がり始めています。まだ告示まで時間がありますから、このまま候補者がさらに増えれば、かなりの乱戦になる可能性があります。
横浜市は人口約370万人を抱える巨大自治体です。政策分野も福祉、子育て、都市整備、防災、観光、経済政策、教育、国際政策と、およそ地方行政で考えられるものは何でもある。市長の仕事はテレビに出て「横浜を元気にします」と言うことではなく、巨大な行政組織を動かし、議会と折り合いをつけ、国や県とも交渉しながら、日々かなり泥臭い決定を積み重ねることです。
候補者が多いこと自体は悪くありません。選択肢が増えることは、有権者にとって本来歓迎すべきことです。ただし今回の選挙には、普通の市長選とは違う事情があります。
山中氏は任期満了で退任したのではありません。横浜市が設置した第三者委員会の調査によって市長の言動が調査され、その報告書が7月30日に公表され、その後8月28日に本人が辞職願を提出しました。山中氏は自信の「ハラスメント」で辞職したわけです。今回の選挙は、単に「次の4年間を誰に任せますか」というだけでなく、「組織のトップに何を求めるのか」という問いを横浜市そのものが突きつけられて行われる選挙であるといえます。
市民はいつも以上に、人となりを見ているわけです。
その中で続々あがってくる候補の名前。昨晩、急に浮上した中谷一馬氏の名前には、ちょっとびっくりというか、正直に率直にいえば、かなり疑問がわいてきました。中谷氏は、今年2月の衆議院総選挙に神奈川7区から立候補し、落選したばかりです。それから半年余りで横浜市長選への出馬に転じるのであれば、「なぜ今、市長なのか」は当然問われるでしょう。国会議員を経験した人が自治体首長を目指してはいけない、などという話ではありません。国政で得た経験を地方行政に生かすというのも、一つの政治家人生でしょう。しかし、2月には「国会でこれをやりたい」と有権者に訴えていた人が、9月には「横浜市長になりたい」と言うのであれば、その間に何が変わったのかくらいは説明してもらわないと、有権者には単なる選挙区替えならぬ「職種替え」に見えてしまいます。市長は、国政選挙で議席を失った政治家の再就職先ではありません。もし横浜市長を目指すのであれば、次の衆院選で状況が良くなったらまた国政へ戻ります、では困る。市長選に出る以上、少なくとも任期中は横浜市政に骨を埋める覚悟を示してほしい。「国会議員へ戻るための足場」ではなく、市長という仕事そのものを選ぶのだという説明が必要だと思います。
そして、今回の選挙を考える上で避けられないのが山中氏本人の動きです。辞職後、山中氏は駅頭に立ち、頭を下げていると報じられています。一方で再出馬については、はっきりした態度を示していない。辞職会見でも、自分の言動について研修を続け、第三者から評価を受けたいという趣旨の説明をしています。そこでどうしても気になるのは、誰に向かって、何を謝っているのかということです。市職員に謝っているのか、市会に謝っているのか、市民に謝っているのか。それとも、再出馬へ向けて「反省している姿」を見せているのか。もちろん人間が反省することまで疑ってかかる必要はありませんが、政治家の謝罪は頭を下げる角度で評価するものではありません。
何について自分の責任を認めるのか。第三者調査で指摘された問題をどう受け止めるのか。
そして前回2025年の市長選に出馬した田中康夫氏についても、今回再び出馬してほしいという声があります。前回選挙では田中氏も正式な候補者でしたが、9月11日現在、今回の選挙への正式な立候補表明は確認されていません。
また同じく前回出馬した、福山敦士氏は今回も立候補を表明し、参政党が推薦をしています。
まだ告示まで時間があります。
最終的に何人が出るのかも、政党が誰を支援するのかも、これから動くでしょう。
しかし、候補者が増えれば増えるほど、選挙は名前の人気投票になりやすくなります。SNSでは短い動画が飛び交い、キャッチコピーが並び、「改革」「横浜の未来」「市民目線」といった、誰も反対しようのない言葉が大量生産されるのでしょう。
しかし重要なのはその裏側です。答えにくい質問をされたときに、逃げずに答えるか。
自分に都合の悪い経歴を、どう説明するか。横浜市という巨大組織を率いる覚悟について、具体的な言葉を持っているか。
政治家というのは、用意してきた演説より、答えたくない質問への答え方に本性が出ます。
今回の横浜市長選は、そんな、各候補者の「裏の顔」をしっかりとみて、投票したいと思います。
参考:
横浜市「横浜市長選挙の選挙期日等について」https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/senkyo/2026/0831_shichousen.html
横浜市「第三者による調査にかかる調査報告書について」https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/gyosei-kansa/compliance/daisanshahoukoku.html
Yahoo!ニュース「横浜市長選挙、中谷一馬氏が立候補の意向固める」https://news.yahoo.co.jp/articles/013cfd2fa30238cfc87dee57c7c9c114b1e8f260
神奈川新聞「横浜市長選挙、福山敦士氏が立候補の意向固める」https://www.kanaloco.jp/news/government/electiondata/article-1303406.html
読売新聞「横浜市長選、弁護士・原沢敦美氏が無所属で立候補表明」https://www.yomiuri.co.jp/election/20260910-GYT1T00257/
朝日新聞「パワハラで辞職の横浜市前市長、再始動か 駅立ちでおわび繰り返す」https://www.asahi.com/articles/ASV9C1T6QV9CULOB006M.html
横浜市「横浜市長選挙(候補者情報・選挙公報)(令和7年8月3日執行)」https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/senkyo/data/mayor/0803kohosya_koho.html
02|CONSUMER/DARK PATTERN|契約は3分、解約は30分――その「面倒くささ」は偶然ではないかもしれない
ネット上のサービスを申し込むとき、最近は驚くほど簡単です。メールアドレスを入れ、カード番号を入力して、大きく目立つ色で表示されたボタンを押せば契約完了。企業の側も「ユーザー体験」を研究していますから、途中で客が面倒になって逃げないよう、入力欄を減らし、画面を美しくし、少しでもクリック数を少なくしてくれています。ありがたい話です。
ところが、そのサービスをやめようとした途端に、さっきまであれほど親切だった画面が急によそよそしくなることがあります。
解約ボタンがない。マイページを探しても見つからない。FAQを開くと別のページへ飛ばされ、そのページの一番下に小さな文字で「お問い合わせはこちら」と書いてあり、押してみれば「解約についてはお電話で」と出る。ようやく電話すると自動音声が流れ、番号をいくつか押した末に「ただいま大変混み合っております」。
契約するときは最新のDX、やめるときだけ昭和です。
こうした問題に消費者庁がいよいよ本格的に規制を検討し始めています。
9月10日、消費者庁は「デジタル取引・特定商取引法等検討会」と「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」の二つの中間取りまとめを公表しました。オンライン取引が生活の中心へ入り込み、従来の法律だけでは十分に捉えきれない取引手法が増えていることを踏まえたものです。
そこで問題になっている言葉の一つが「ダークパターン」です。
少々SF映画の悪役のような名前ですが、やっていることはもっと身近です。ウェブサイトやアプリの表示方法を工夫し、消費者が本来なら選ばなかったかもしれない選択へ誘導する。定期購入であることを目立たなくする、支払総額を分かりにくくする、解約手続きを何段階にもする、断ろうとすると不安を煽る表示を出すといった、利用者の判断を巧みに誘導する画面設計が問題になっています。
ここで厄介なのは、昔ながらの詐欺のように「全部ウソ」とは限らないことです。どこかには書いてある。規約にも書いてある。ボタンを5回押せば解約できる。
だから事業者からすれば「説明しています」「契約者本人が同意しています」と言える。しかし、重要な情報だけ薄い灰色にし、押してほしいボタンだけ巨大な青色にし、解約しようとする利用者に何度も別の選択肢を表示するのであれば、その設計全体を無視して「クリックした本人の責任です」で済ませるのは、いささか乱暴です。
いま企業は、私たちがどのボタンを押すかをかなり研究しています。どんな色なら目に入るのか、選択肢をどう並べれば申し込むのか、「残りわずか」と書けば購買率がどれだけ上がるのか。「おすすめ」と付けると何%動くのか。A/Bテストを繰り返し、膨大なデータを集め、人間の認知特性を分析して画面を作る。そこまで科学的に人間を誘導しておいて、最後だけ「消費者が自分の意思で選びました」と言うのは、少々虫がよすぎます。
今回の消費者庁の中間取りまとめは、こうしたデジタル取引について、特定商取引法などの見直しも視野にルールを整えようというものです。また、消費者契約法の検討会では、契約締結時だけでなく、契約を終了する場面で消費者の意思決定が不当に妨げられる場合をどう扱うかという問題も検討されています。
私はこの方向には基本的に賛成です。ただし、「ダークパターンを禁止します」という言葉だけで満足してはいけないとも思います。
インターネットの画面設計は千差万別ですから、禁止行為を細かく列挙しても、事業者側がその隙間を探すゲームになれば終わりがありません。一方で、規制を抽象的にしすぎれば、普通の広告表現まで萎縮してしまいます。「おすすめ」と表示すること、「期間限定」と伝えること、それ自体は商売として当然に許されるべきでしょう。
要するに、売るための工夫と、判断を誤らせる仕掛けをどう分けるのか。そこが法制度として一番難しいところです。
それでも、最低限の原則はそれほど難しくないように思います。契約するときに一度押せば済むなら、解約するときも不必要に何十回も押させない。定期購入なら、定期購入だと普通に見える場所へ普通の大きさで書く。総額が重要なら、「月980円」の横に小さな文字で年間契約の総額を隠さない。消費者に考えさせないことが優れたUIだと言われますが、契約に関してまで考えさせない方がいいわけではありません。
むしろ、お金と契約期間だけは、ちゃんと考えさせた方がいい。それを邪魔するデザインまで「マーケティング」と呼ぶのなら、法律が口を挟むのも仕方がないでしょう。
参考:
時事通信「『ダークパターン』包括規制へ 中間まとめ公表、法改正視野―消費者庁」https://www.jiji.com/jc/article?k=2026091000694&g=soc
47NEWS「サブスク解約妨害を規制 消費者庁、報告取りまとめ」https://www.47news.jp/14914216.html
消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/
消費者庁「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/meeting_materials/review_meeting_006
03|IMMIGRATION/COMPLIANCE|不法就労対策で入管庁が合同調査へ――制度を守る側にも、当然責任がある
外国人政策というテーマは、話がすぐ大きくなります。外国人をもっと受け入れるべきなのか、受け入れを抑えるべきなのか。人手不足をどうするのか。多文化共生とは何なのか。ニュース番組でもSNSでも、あっという間に国家論や移民論になります。しかし行政実務の現場で考えると、その前にもっと地味で、もっと当たり前の問題があります。
日本に在留する外国人には在留資格があり、それぞれ認められた活動の範囲があります。雇用する企業にはそれを確認する責任があり、在留資格に関する申請を取り扱う側にも、事実に基づいた適正な手続きを行う責任がある。制度を作った以上、守らなければ意味がありません。
報道によれば、出入国在留管理庁は不法就労対策を強化するため、他省庁と合同で事業所への調査を行う方向で調整を進めています。解体業者などを念頭に、国土交通省など他機関が行う立入調査へ入管職員も参加し、在留カードや在留資格、在留期間などを確認することが想定されています。
これまで、それぞれの役所が自分の所管する法律だけを見ていた結果、「この事業所は建設業法上どうか」「廃棄物処理法上どうか」「労働法上どうか」「入管法上どうか」という確認が縦割りになり、その境目に問題が残ることがありました。
であれば、必要な行政機関が一緒に現場へ行く。考えてみれば当たり前の話です。外国人の不法就労を厳しく取り締まるという話になると、時折「外国人排斥だ」という方向へ話が飛びますが、私は少し違うと思っています。適正な出入国管理と、外国人を社会の一員として受け入れることは、本来矛盾する話ではありません。むしろルールを守って日本で働いている外国人にとって、不法就労が放置されることは迷惑です。
正規に在留資格を取得し、税や社会保険を負担し、ルールを守って働いている人の横で、資格外の仕事を安い賃金でさせる会社が利益を得る。その状態を「外国人に優しい社会」と呼ぶのは、かなり無理があります。
違法な雇用は外国人を守らない。外国人を安く使いたい事業者を守るだけです。
そして、このニュースは行政書士にとっても他人事ではありません。在留資格に関する申請では、一定の研修等を受けて届出を行った行政書士が「申請等取次者」として手続に関与します。外国人本人が地方出入国在留管理局へ出頭せず、行政書士が申請を取り次ぐことができる制度です。現在はオンラインによる在留申請も進んでいます。制度として行政書士に相当な便宜と信用が与えられているわけです。その信用をこちら側が食い潰してはいけません。
依頼者が持ってきた資料を右から左へ提出することが申請取次ではないでしょう。雇用契約書には技術職と書いてあるのに、話を聞けば実際には別の単純労働へ従事する予定だったり、会社の事業内容と申請する職務内容がどう見ても噛み合わなかったりするのであれば、当然確認しなければならない。「本人がそう言っていますから」で済ませれば楽です。
でも、それなら資格者が間に入る意味がありません。
行政書士は捜査官ではありませんから、依頼者を犯罪者扱いして事情聴取する必要などありません。それでも、説明に不自然な点があれば質問をする。資料が足りなければ求める。事実と申請内容が違うのであれば直してもらう。それでも適法な申請にならないなら、仕事を受けない。その線は守らなければならないと思います。
行政書士法は2026年1月の改正法施行によって使命規定なども整備され、制度としての行政書士の役割は以前より重くなっています。国に対して「行政手続の専門家として行政書士を活用してほしい」と求めるのであれば、同時にこちらも、「行政書士が関与した申請だからこそ一定の信頼がおける」と思われる仕事をしなければ話が合いません。
権限だけ欲しい、責任は知りません、では専門職とは呼べないでしょう。不法就労対策が強化されること自体は必要です。しかし本当に効くのは、取締りを何件増やしたかではなく、不法就労を使った方が得だという構造をなくすことです。雇う企業が適正な確認をし、働く外国人にも正しい情報が届き、行政が縦割りを越えて監督し、その間にいる専門職が制度の抜け穴づくりに加担しない。それぞれが自分の持ち場を守る。
派手さはありませんが、結局そういう仕組みしか長続きしないのだと思います。
参考:
Yahoo!ニュース「入管庁、他省庁と合同で調査へ 外国人の不法就労対策」https://news.yahoo.co.jp/articles/a0f01e79bf15bc58e283b2158a5ff29b575984bd
出入国在留管理庁「弁護士・行政書士の方」https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/10_00113.html
週末ですから少し軽い話題を思っていたのに、気がつきゃなんか固めの話題が並んでしまいました。そんなニュースばかりが目につくのはちょっとどうかな、と思います。
ま、今日は少し頭を軽くして、ちょっとしたお楽しみにいってきます。お楽しみは何かって? それはまた明日の本欄で。
そうそう、この週末はF1もあります。角田君の出走するマドリード。いろいろ楽しみだ!
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TODAY|9月11日(金) 今日の予定
・09:55〔現地〕/16:55〔日本〕|FIA F3スペインGP・フリー走行
・13:30〔現地〕/20:30〔日本〕|F1スペインGP・フリー走行1
・17:00〔現地〕/24:00〔日本〕|F1スペインGP・フリー走行2
・18:25〔現地〕/翌01:25〔日本〕|FIA F3スペインGP・予選
・東京六大学野球秋季リーグ開幕
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