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NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年8月25日 from那住行政書士事務所


2026年8月25日は、「一粒万倍日」「大明日」「母倉日」が重なる、なかなか縁起のよい日だそうです。一粒の籾が万倍にも実るとされる一粒万倍日、天地が開けて万事に吉とされる大明日、そして母が子を慈しむように天が人を慈しむとされる母倉日。この三つが重なるとなれば、何か新しいことを始めるにはちょうどよい日なのかもしれません。


宝くじを買うのか、新しい企画を始めるのか、積んだままになっている本をようやく開くのか。何を「最初の一粒」にするかは人それぞれですが、せっかく縁起のよい日ですから、小さくても何か一つ前へ進めてみるのは悪くないと思います。


もっとも、天が慈しんでくれる一方で、太陽の方は相変わらず容赦がありません。25日は西日本から関東にかけて猛烈な暑さが予想され、名古屋では37度、京都では38度、熊本では39度などという、数字を見ただけで体力を奪われそうな予報が出ています。関東でも35度以上の猛暑日となるところがありそうです。


「一粒万倍日だから外へ出て何か始めよう」と気合いを入れた結果、熱中症で救急搬送されていては縁起も何もありません。水分、休憩、冷房。この三つは吉日でなくても遠慮なく使いたいところです。


さて、今日のNEWS CLIPです。ネット通販で消費者を巧妙に誘導する「ダークパターン」に対し、いよいよ本格的な法規制の検討が始まりました。文部科学省は教育特化型AIの開発へ動き出し、F1では今季レギュラーシートを失っていた角田裕毅選手が突然の代役出場で存在感を示しました。今日も様々な話題に触れていきます。


那住行政書士事務所HP https://www.nazumi-office.com/

01|CONSUMER/DIGITAL|「契約はワンクリック、解約は迷路」――ダークパターンに法規制の議論


ネットで商品やサービスを申し込んでいて、「これは明らかに、こちらが間違えることを期待して作っているだろう」と感じた経験はないでしょうか。


購入ボタンは画面いっぱいに大きく表示されているのに、解約ページはメニューを何階層もたどらなければ見つからない。無料体験だと思って申し込んだら、注意書きの奥に小さく「翌月から自動的に有料契約」と書かれている。商品を一つ買おうとしただけなのに、知らないうちに追加サービスのチェック欄が最初からオンになっている。「あと3分で終了」「残り1個」と急かされたので購入したのに、翌日見ても相変わらず残り1個だった――。

こうした、利用者の心理や行動特性を利用し、本人が自発的に選んだように見せながら、実際には事業者側に有利な選択へ誘導する画面設計や仕組みが「ダークパターン」と呼ばれています。


8月24日に開催された消費者庁の第8回「デジタル取引・特定商取引法等検討会」では、この問題への規制強化を盛り込んだ「中間取りまとめ案」が議論されました。今回の議論で重要なのは、単なる注意喚起にとどまらず、特定商取引法そのものの見直しを視野に入れている点です。


デジタル取引では、新しい勧誘方法が登場する速度が非常に速くなっています。ところが法律というものは、基本的には具体的な問題が起き、議論し、法案を作り、国会で審議して、ようやく改正されます。悪質業者から見れば、その間に次の手口を考える時間はいくらでもあります。つまり、行政が一つの手口を禁止した頃には、悪質な側はもう別の方法へ移っている。これでは永遠に後追いです。


今回の検討では、禁止行為を法律に細かく一つずつ書き込むだけではなく、新しい手口にも機動的に対応できる仕組みをどう作るかが大きな論点になっています。ここは非常に重要だと思います。


ダークパターンの難しいところは、典型的な詐欺とは少し違うことです。事業者が真正面から「これは無料です」と嘘を言っているわけではない場合もあります。必要な情報は、一応どこかに書いてある。解約ページも、一応存在する。チェックを外すことも、一応できる。

そして事業者は言います。

「ちゃんと表示してあります」「本人が同意しました」「自分でボタンを押しました」

形式的には確かにそうなのかもしれません。しかし、利用者が見落とすことを期待して文字を極端に小さくしたり、解約だけ異様に複雑な手順を要求したりしているのであれば、「本人が自由な意思で選択した」と胸を張るのも少々厚かましい話です。


個人的な見解を述べると、ダークパターンへの規制強化には、私は、基本的に賛成です。

そもそも、まともな商品やサービスなら、消費者を罠にはめるような画面設計で契約させる必要はありません。入会は30秒で完了するのに、退会は平日昼間に電話をして、延々とオペレーターにつながるのを待たなければならない――そんなサービスを見ると、「技術的に解約ボタンを作れない」のではなく、「解約させたくないから作っていない」だけでしょうと言いたくなります。

もっとも、規制は慎重に設計する必要があります。購入ボタンを目立たせたら違法、広告に「今だけ」と書いたら違法、という話ではありません。通常の広告やマーケティングと、消費者の意思決定を不当にゆがめる行為との線引きは簡単ではありません。


重要なのは、消費者が合理的に判断するために必要な情報を隠していないか、契約と解約の手続に不合理な格差を設けていないか、心理的な弱点を意図的に利用しているか、といった実質面でしょう。


法律は長い間、契約する人間をかなり理性的な存在として想定してきました。しかし現実の人間は、そんなに立派ではありません。焦れば間違えるし、面倒なら説明を飛ばすし、「残り3分」と出れば急いでしまいます。そしてデジタル企業は、その人間の弱さをかなり精密に分析できるようになっています。


ならば消費者法の側も、そろそろ「押したあなたが悪い」「読まなかったあなたが悪い」という20世紀的な自己責任論だけでは足りないのだと思います。


参考:産経新聞「消費者庁が『ダークパターン』規制強化へ」https://www.sankei.com/article/20260824-QK2REQM5AZM5NDO3ZIC3EGS6MA/

02|EDUCATION/AI|文科省が「教育特化型AI」開発へ――便利な家庭教師になるか、巨大な答え合わせ装置になるか


文部科学省が、教育分野に特化した生成AIアプリの開発へ乗り出します。2027年度予算の概算要求に開発費や学校の情報セキュリティー強化費などを盛り込み、2027年度中には学校現場での実証研究を始める予定だと報じられています。


学校教育で生成AIを利用することそのものにはかなり肯定的に捉えています。現在の学校教育には、一人の先生が30人、場合によっては40人近い子どもたちを同時に教えなければならないという、考えてみれば相当に無茶な前提があります。同じ説明を一度聞けば理解する子もいれば、別の角度から説明してもらわなければ分からない子もいます。得意な子は先へ進みたいし、苦手な子は少し戻って確認したい。それを一人の先生がすべてリアルタイムで対応することには、当然限界があります。そこでAIが補助者になるのであれば、大きな可能性があります。


例えば分数が分からない子に、その子が理解できている地点まで戻って説明する。英語が苦手なら易しい表現に言い換える。外国にルーツを持つ子どもや保護者には別の言語で説明する。何度同じ質問をしても、AIはため息をつきませんし、「さっき説明したでしょう」と嫌な顔もしません。そういう意味では、AIはかなり優秀な補助教員になり得ます。


しかし、「文科省が教育専用AIを作る。これで安心です」と言われると、ちょっと待て、とも思います。まず、AIはいったい何を正解として学ぶのでしょうか。誰の教材を参照し、どの歴史観を採用し、どのような価値判断を「標準」とするのか。教育には、数学の計算問題のように正解が一つのものだけではありません。

歴史、倫理、政治、社会問題などには、異なる立場や解釈があります。そこで「文部科学省公式AI」が一つの答えを返すようになると、AIの回答が単なる参考情報ではなく、巨大な権威を帯びる可能性があります。「先生がそう言ったから」から「教科書に書いてあるから」へ。そして今度は「国のAIがそう答えたから」。


人間は、権威に思考を預ける道具を見つけるのが実に上手です。さらに、子どもの学習データをどう扱うかという問題もあります。「この子は算数が苦手」「文章理解に時間がかかる」「授業中にどんな質問をしたか」といった情報が、長期間にわたり記録される可能性があります。


教育データは、単なるアクセスログではありません。その子の能力、傾向、弱点、場合によっては家庭環境まで推測できる非常にセンシティブな情報です。子どもの頃の学習履歴が何年保存されるのか。誰が見ることができるのか。別の行政データと結び付けられることはないのか。大人になった後まで残るのか。「便利だから集めました」では済まない情報だと思います。


そして学校でAIを導入するのであれば、AIから答えをもらう方法よりも、「AIの答えを疑う方法」を教えることの方が重要かもしれません。


生成AIは、間違ったことでもかなり堂々と答えます。大人でもだまされるのですから、子どもが「AIが言っているから正しい」と思うのは無理もありません。だからこそ、教育AIは「正解を最速で教えてくれる機械」ではなく、「なぜそう思うのか」「別の考え方はないのか」と子どもの思考を広げる道具になってほしい。


学校とは、本来、正しい答えを早く出す訓練だけをする場所ではありません。


「なぜだろう」と考え、間違え、もう一度考える場所でもあるはずです。AIがその時間を奪うのか、それとも増やすのか。文科省には、ぜひ後者を目指してもらいたいと思います。


参考:朝日新聞「教育特化型のAIアプリ 文科省が開発へ」https://www.asahi.com/articles/ASV8P2HN3V8PUTIL00PM.html

03|F1/SPORTS|角田裕毅、突然のF1復帰で11位――これは「代役として無難に走った」ではない


本欄では、ときどきF1について書いています。今年は開幕戦で触れて以来、あまりF1について書いていませんでした。なぜか、角田がいないからですよ。


2026年シーズン、レギュラーシートを失い、レッドブルとレーシングブルズのサポートドライバーとしてシーズンを過ごしていた角田裕毅選手が、先週末のオランダGPで突然F1のグリッドへ戻ってきました。

きっかけは、レッドブルのアイザック・ハジャー選手の負傷です。レーシングブルズのリアム・ローソン選手がレッドブルへ代役で移り、その空いたレーシングブルズのシートに角田選手が呼ばれました。


角田選手自身、連絡を受けたときはギリシャのビーチで休暇を過ごしていたそうです。数日前まで海辺にいた人が、突然「今週末F1に乗ってください」と言われる。一般の仕事で言えば、休暇中に電話がかかってきて「明日から世界最高峰の現場の責任者をお願いします」というような話です。普通の人間なら怖気づいてしまうでしょう。

しかも、今季レースで新規定マシンを走らせていない状態での復帰。さらにスプリント開催のため、通常より練習時間も短い。条件としてはかなり厳しいものでした。


それでも角田選手は、セッションを重ねるごとに着実にペースを上げました。

唯一のフリー走行ではチームメートから大きく離されていたものの、予選になる頃にはその差をほとんど消し、決勝では12番手からスタート。ポイント圏内を争い、最終的には11位でフィニッシュしました。

1ポイントまで、あと一つ。結果だけを一覧表で見れば、「11位、ノーポイント」です。

しかし今回の11位は、かなり価値のある11位だったと思います。


今季レースに出ていないドライバーが突然呼ばれ、新しいマシンへほぼぶっつけ本番で乗り込み、短時間でレギュラードライバーと遜色ないペースまで持っていった。それを「11位だから結果を残せなかった」で片付けるのは、数字しか見ていない評価でしょう。


海外でも今回の角田選手の復帰はかなり注目されました。Reutersは「ビーチにいたところへF1復帰の電話が来た」という異例の状況を紹介し、Formula 1公式サイトも、長くリザーブとして待ってきた角田選手が再びレースへ戻れた喜びを大きく取り上げています。


何より評価したいのは、角田選手が「久しぶりだから仕方ない」という走りをしなかったことです。F1では、速いだけでシートを得られるわけではありません。スポンサー、チームの育成方針、契約、政治、年齢、タイミング。実力とは直接関係のない要素がいくつも絡みます。そこがF1というスポーツの面白さでもありますが、ときどき「で、結局この22人が本当に世界で一番速い22人なのですか?」と言いたくなることもあります。


だからこそ、シートを失ったドライバーにできることは限られています。チャンスが来たときに速く走る。今回、角田選手はそれをやりました。


26歳です。F1ドライバーとして老け込む年齢ではありません。むしろ経験と速さの両方がそろってくる時期でしょう。2027年、もう一度レギュラーシートへ戻ってほしい。今回のレースを見て、その期待は以前より強くなりました。1ポイントは取れなかった。しかし、チーム関係者や他チームに向けて「まだ自分はF1で戦える」と示したという意味では、もしかすると1ポイント以上のものを手にした週末だったのかもしれません。


04|YOKOHAMA/DISASTER|避難所に「トイレ・キッチン・ベッド」――そろそろ体育館で雑魚寝を当然にするのをやめたい


横浜市が8月24日、全国で初めて自治体が所有する「TKBユニット」を使った実証訓練を行うと発表しました。TKBとは、トイレのT、キッチンのK、ベッドのBです。


横浜市では、災害時の避難生活に必要となるこれらの設備を一つのユニットとして整備し、必要な地域へ機動的に運搬・設置できる仕組みを進めています。今回の訓練では、実際に設営し、運営し、最後に撤収するところまで検証するとのことです。


これはかなり良い取組です。日本では大きな災害が起きるたび、体育館の床に毛布を敷いて大勢の被災者が雑魚寝する映像が流れます。そして毎回、「避難所環境の改善が必要です」と言われます。


東日本大震災でも言われた。熊本地震でも言われた。能登半島地震でも言われた。それでも次の災害が起きると、また体育館に毛布が並びます。


もちろん巨大災害の直後に、ホテルのような環境をすべての避難者へ提供することはできません。しかし、だからといって「被災したのだから体育館で雑魚寝くらい我慢してください」という発想がいつまでも当然でよいはずもありません。


特にトイレは重要です。トイレ環境が悪ければ、高齢者などが水分を控えることがあります。それが脱水や健康悪化につながる。温かい食事を作れる設備も、床から身体を離して休めるベッドも、避難生活が長期化すれば単なる快適装備ではなく、健康を守るための設備です。


そして今回もう一つ評価したいのは、「買いました」で終わらせず、実際に組み立てるところまで訓練することです。

災害が起きた瞬間に、「説明書どこですか」「組み立てたことのある人が今日は休みです」では何の役にも立ちません。何人いれば設営できるのか。どれだけ時間がかかるのか。雨の中でも作業できるのか。電源、水、廃棄物の処理はどうするのか。訓練では、ぜひ失敗するところまで試してほしいと思います。


平時の訓練で失敗する分には、誰も困りません。本番で初めて失敗するより、何百倍もましです。


参考:横浜市「全国初 自治体所有のTKBユニットを活用した実証訓練」https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/bousai/2026/0824tkbunit.html

05|YOKOHAMA/ADMINISTRATION|水道局、174世帯分の文書が所在不明――書類は勝手に蒸発しません


横浜市水道局から、少々頭の痛くなる発表がありました。

横浜市では、ひとり親家庭医療費助成の対象世帯などに、水道料金・下水道料金の基本料金を減免する制度があります。ところが、本来なら資格喪失に伴って終了していなければならない一部の対象者について、減免がそのまま続いていたことが判明しました。

そこで市は、4,218世帯へ減免解除の通知書などを発送しました。ここまでで既に「なぜ今まで解除されていなかったのですか」という問題があります。


ところが話はそこで終わりません。郵便物が宛先不明などで戻ってきた174世帯、219人分の文書が、その後所在不明になりました。なかなか見事な連続技です。


まず、本来止めるべき減免を止められていなかった。次に、それを直す通知を送った。そして戻ってきた通知を今度はなくした。


行政事務のミスが、まるで起承転結を意識したように続いています。所在不明となった文書には個人情報が含まれています。しかも対象者は、ひとり親家庭医療費助成の対象世帯などです。単なる住所録より慎重な管理を要する情報でしょう。


市は、現時点で個人情報流出の被害は確認されていないとしています。ただ「流出した証拠は見つかっていません」ということと、「安全に管理されていました」は別の話です。


そもそも行政文書は、行政が何をしたのかを後から確認するために保存されています。誰に通知したのか。いつ送ったのか。戻ってきたのか。その後どう処理したのか。それを証明するのが文書です。行政文書は、行政組織の記憶と言ってもよいでしょう。


その記憶について「どこへ行ったか分かりません」と言われても、市民としては困ります。

もちろん、人が仕事をする以上、ミスをゼロにすることはできません。大切なのは、今回の原因を具体的に突き止め、運用を変えることです。


こういう発表の最後には、たいてい「再発防止に努めます」という言葉が登場します。実に便利な日本語です。謝罪会見から不祥事報告書まで、困ったときには大抵これで文章が締まります。ですので今回は、「努めます」で終わらず、「努めた結果、具体的に何を変えたのか」まで市民に説明してもらいたいと思います。


参考:横浜市水道局「水道料金等の減免に係る保存文書の所在不明について」https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/suidou/2026/0824su-sabisu.html

06|LABOR/BUSINESS|「サービス残業」という優しい名前の賃金不払い――令和7年も128億円超


厚生労働省が8月21日、「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和7年)」を公表しました。


全国の労働基準監督署が令和7年中に取り扱った賃金不払事案は2万2,605件。対象となった労働者は17万3,016人、不払いとなっていた金額は合計128億5,782万円に上ります。このうち、労基署の指導によって令和7年中に使用者が賃金を支払い、解決したものは2万1,731件、対象労働者16万7,828人、支払われた金額は109億9,703万円でした。件数ベースでは96.1%が解決しています。


128億円。


もちろん、この数字には通常の月例賃金そのものの不払いなども含まれており、すべてがいわゆる「サービス残業」というわけではありません。それでも、働いた人に本来支払われるべきお金が、これだけ支払われていなかったという事実は重いものがあります。

ところで日本では、残業代を支払わずに働かせることを、昔から「サービス残業」と呼んできました。私は、この言葉があまり好きではありません。

「サービス」という言葉には、本来、相手を喜ばせるために何かを提供するという響きがあります。ホテルのサービス、飲食店のサービス、お客様へのサービス。しかし「サービス残業」で提供されているのは、労働者の時間と労働力であり、それに対して会社がお金を払っていない。誰が誰にサービスしているのかといえば、労働者が会社へ一方的に奉仕させられているだけです。


飲食店で料理を食べて代金を払わず、「今日はサービス飲食ということで」と店を出ようとすれば、おそらくサービスでは済みません。それなのに労働者の賃金だけは、なぜか「サービス」という柔らかな言葉を付けることで、長い間、日本の職場にある程度仕方のない慣行であるかのように扱われてきました。

言葉というものは怖いものです。「サービス残業」と言えば、少しくらいは会社員なら仕方ないようにも聞こえる。しかし「賃金不払い」と言い換えれば、途端に意味は明確になります。実際、厚生労働省も今回の発表で使っているのは「賃金不払」という言葉です。

もちろん、現代の労働時間管理が以前より難しくなっていることは事実です。テレワーク、フレックスタイム、裁量労働制など働き方は多様化し、会社の外でメールを確認した時間をどう扱うのかなど、実務上判断の難しい場面もあります。

しかし、「労働時間の判断が難しい場合がある」という話と、「明らかに働いている時間の賃金を払わなくてもよい」という話を混ぜてはいけません。


厚労省が公表した是正事例にも、その点を考えさせるものがあります。監督署は、労働者への聴き取りや勤怠記録だけでなく、PCの使用記録など客観的な資料との食い違いを確認し、実際の労働時間を把握するよう指導しています。今や、タイムカードだけ18時に押させて、その後もPCで仕事を続けさせながら、「会社として残業は把握していませんでした」という説明が簡単に通る時代ではありません。


一方で、今回の数字には少し前向きな面もあります。労基署が取り扱った2万2,605件のうち、令和7年中に指導によって解決したものは2万1,731件で、96.1%に達しています。不払額128億5,782万円のうち109億9,703万円が支払われました。監督行政が実際に労働者の賃金回収につながっていることも、きちんと評価すべきでしょう。

企業と従業員は、本来、敵同士ではありません。会社が成長し、利益を上げ、その成果が働く人にも還元される。そういう関係であるべきだと思います。

だからこそ、その入口にある「働いた分の賃金を払う」という、ごく当たり前の約束くらいは守らなければならない。


企業の採用サイトを見ると、「人材こそ、わが社最大の財産です」「社員一人ひとりを大切にします」といった美しい言葉がよく並んでいます。

それ自体は結構なことです。


ただ、本当に「人材が財産」だと思っているのなら、まずその財産に残業代を払ってください。


福利厚生ページに洒落た写真を載せるより、そちらの方がずっと説得力があります。


今回のNEWS CLIPから


一粒万倍日という言葉を聞くと、「今日始めたことが万倍になる」と考えて、何か大きなことを始めなければいけないような気もします。でも、万倍になる「一粒」は、別に大それたものでなくてもよいのでしょう。読みかけの本を10ページ読む。ずっと返していなかったメールを一本返す。机の上を少し片付ける。行こうと思いながら先延ばしにしていた場所へ出掛ける。あるいは、誰かに「ありがとう」と一言伝える。そんな程度の一粒なら、毎日のどこかに落ちています。


8月も残り一週間ほどです。


暑さは相変わらずですが、夕方の空を見れば、ほんの少しずつ夏の終わりも近づいています。何か一つくらい、秋になった頃に「あの日から始めたんだよな」と思えるものを、今日から始めてみるのも悪くないかもしれません。


那住行政書士事務所

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