NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年8月23日 from那住行政書士事務所
- 那住行政書士事務所

- 11 分前
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今日は日曜日。そして二十四節気の「処暑」です。暦の上では、そろそろ暑さが峠を越えて和らぎ始める頃とされています。もっとも、実際の空気に触れていると、「その暦、いったいいつの気候を前提にしているのだろう」と少し問いただしたくなるような暑さが続いています。
それでも日曜日です。少し遅く起きて、冷たい飲み物でも飲みながら、新聞やネットの記事を眺める。そんな時間も悪くありません。ただ、今日取り上げるニュースは、前半からなかなか穏やかではありません。
横浜では、山中竹春市長のパワハラ問題が、とうとう市が主催する国際会議にまで具体的な悪影響を及ぼし始めました。法務省からは、企業法務におけるAIサービスと弁護士法72条との関係について新しいガイドラインが公表されています。そして国際社会では、ICCの赤根智子所長に米国が制裁を科すという、かなり看過し難い事態も起きています。
後半では、働き方をめぐる監督行政、危険ドラッグ規制、そして最後は少し力を抜いて、ズーラシアの動物たちにホテルの「もったいない果物」が届く話題まで。今日も、ニュースを並べるだけではなく、その向こう側にある「それ、本当にそれでいいのですか」というところまで見ていきます。
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01|YOKOHAMA/POLITICS|ついに国際会議からも「市長抜き」――山中市長が居座るコストを横浜市が払い始めた
山中竹春横浜市長のパワーハラスメント問題については、これまでも何度か取り上げてきました。第三者調査で複数のパワハラ行為が認定され、市議会でも長時間にわたる質疑が行われ、主要会派からは辞職を求める声まで出ています。それでも市長は、なお続投の可能性を探っています。そして、とうとう「本人が続けたいかどうか」という話では済まなくなってきました。
横浜市が9月上旬に主催する「アジア太平洋循環型都市フォーラム2026」について、当初は主催者として開会・閉会時に出席する予定だった山中市長が、参加を見送ることになりました。国内外の都市や国際機関が参加する会議ですが、一部の参加者側から、市長のパワハラ問題について「人権に関わる問題として注視している」「副市長が出席する可能性はあるのか」といった問い合わせがあり、市は市長が出席することで参加辞退などが生じる可能性を懸念し、副市長が代行することにしたと報じられています。
これは、かなり深刻です。これまで市長は、自らの進退について「考える」「判断する」という立場にいました。しかし、本人が結論を先送りしている間にも、市の仕事には具体的な影響が出ています。横浜市が主催する国際会議なのに、主催自治体の市長を出席させると参加者が来なくなるかもしれないので、市長本人を外す。かなり異常な状態です。
もはや市長が市政を支えているのではなく、市政の方が市長を避けながら仕事を回し始めています。
しかも、今回のテーマは「循環型都市」や「持続可能性」です。国際会議で人権やサステナビリティを立派に語る一方、足元では職員に対する重大なパワハラが第三者調査で認定されている。それで世界の都市に向かって笑顔で「横浜へようこそ」と挨拶するのは、さすがに冗談としても出来が悪い。
もちろん、パワハラが認定されたからといって、市長が法的に自動失職するわけではありません。しかし、「辞めなければ違法なのか」という問いと、「市長として職務を続けることが横浜市にとって適切なのか」という問いは別です。今や、山中市長が留任することによって、横浜市の国際的な信用、職員との関係、議会との関係、そして市の行事や対外活動にまで余計なコストが生じています。
市長職は、本人が名誉回復に挑戦するための舞台ではありません。人口約380万人の自治体の行政トップです。そろそろ「山中氏が続けたいかどうか」ではなく、「山中氏が続けることが横浜市にとってプラスなのか」という基準で判断すべきでしょう。
02|INTERNATIONAL LAW|ICC赤根智子所長に米国が制裁――司法判断が気に入らないから裁判官を制裁するのか
国際法の世界で、かなり深刻なニュースが入ってきました。
米国政府は、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長とセネガル出身のアブドゥライ・セイ検察官に対して経済制裁を科しました。赤根氏は日本人で、2024年にICC所長へ選出されています。今回の制裁では、米国内資産の凍結や米国の金融システムへのアクセス制限などが課されます。背景には、ICCがイスラエルのネタニヤフ首相に対する逮捕状を扱っていることなどがあります。米国はローマ規程の締約国ではなく、ICCの管轄権について法的な異論を述べること自体は理解できます。イスラエルへのICCの対応に政治的・法的に反対する自由も当然あります。
しかし、だからといって裁判官個人に経済制裁を科すというのは、私は明確に問題だと思います。
裁判所の判断が気に入らなければ、裁判官の資産を凍結する。これを「法の支配」と呼ぶのは、かなり無理があります。強い国が「その裁判は認めない」と言い、さらに裁判官本人へ直接経済的圧力をかけるのであれば、それは司法判断への異論というより、司法そのものへの威圧に近づきます。
民主主義国家にとって、司法の独立は、自分に都合のよい判決が出たときだけ尊重すればよいものではありません。気に入らない判断が出たときにどう振る舞うか。そこで本当に「法の支配」を信じているのかが分かります。
しかも、赤根所長は日本人です。日本政府は今回の制裁を批判し、ICCへの支持も改めて表明しています。ただ、私は日本政府の反応についても、少々物足りなさを感じます。
日本はICC加盟国として、長年にわたり財政面・人材面の双方でICCを支えてきました。その日本人の裁判所長が、裁判官としての職務を理由に同盟国から制裁を科された。それなら日本として、もう少しはっきり「司法の独立への政治的圧力は認められない」と言ってよいのではないでしょうか。
同盟国であることと、何をされても声を小さくすることは同義ではありません。
トランプ大統領には、ぜひ思い出していただきたい。自分の気に入らない裁判官を攻撃することは、法治国家の強さを示す行為ではありません。むしろ、司法判断を政治権力でねじ伏せなければならないほど、自らの主張に自信がないように見えます。
ICCには当然、制度上の限界もありますし、個々の判断を批判することも自由です。しかし、制度を批判し改善する方法は、議論や法的手続であって、裁判官の財布を締め上げることではありません。
03|AI/CORPORATE LEGAL|企業法務AIと「非弁」の境界が明確に――法務省が新ガイドライン
8月21日、法務省から、企業法務とAIのこれからを考えるうえで非常に重要な資料が公表されました。「ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について」という新しいガイドラインです。
2023年にも、AIなどを利用した契約書の作成・審査・管理支援サービスと弁護士法72条との関係について方針が示されていました。しかしこの3年間で生成AIの能力は大きく変わりました。契約書の誤記を見つけるだけではなく、法令調査、契約書案の作成、論点抽出、社内法務相談の支援など、企業法務における利用範囲は急速に広がっています。
そこで法務省は今年3月にタスクフォースを設け、従来の考え方を補完・拡充しました。さらに今回、今後のルールメイキングを継続的に検討するためのロードマップまで公表しています。問題になるのが弁護士法72条です。同条は、弁護士や弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、法律事件に関して法律事務を取り扱うことなどを原則として禁止しています。いわゆる「非弁行為」の禁止です。
では、AI会社が提供するサービスが契約書を作り、法律上の論点を分析し、「この条項は危険です」と回答した場合、それは法律事務を行っていることになるのか。この点はリーガルテックの普及当初から、かなり重要な論点でした。
従来のガイドラインでは、「報酬を得る目的」があるか、「法律事件」に当たるか、「鑑定その他の法律事務」に当たるか、そして誰がどのようにサービスを利用するのかなど、複数の要素を踏まえて判断する枠組みが示されていました。今回の新ガイドラインでは、生成AIの進歩と企業法務での実際の利用を踏まえ、その考え方をさらに整理しています。
これは企業にとって非常に重要です。これまで、「便利そうだけれど弁護士法72条が怖いので使わない」という企業もあったでしょう。法的境界が曖昧なままでは、日本企業だけが慎重になり、海外ではAI法務をどんどん使っている、というあまり笑えない状況にもなりかねません。その意味で、今回のガイドラインが予測可能性を高めたことは評価できます。
ただし、ここで一つ重要なことがあります。
「非弁ではない」と「AIの回答が正しい」は、まったく別の話です。
弁護士法72条には触れない。でも回答は間違っていた。それでは企業にとって何の慰めにもなりません。AIの回答を誰が検証するのか、誤った回答が出た場合の責任を誰が負うのか、契約書や顧客情報を入力した場合の秘密保持や個人情報管理をどうするのか。実務ではむしろ、ここからの方が重要です。
また、これは弁護士だけの話でもありません。行政書士を含む各士業がAIをどう使うのか、それぞれの資格者法との関係をどう整理するのかという問題もあります。
「AIが専門家をなくす」と大騒ぎしている間に、実務はもうその先へ進んでいます。問われているのは、AIを使うか使わないかではなく、「どこまでAIにやらせ、どこから人間が責任を負うのか」でしょう。
このガイドラインはかなり重要ですので、本件については後日、資料そのものを読み込み、改めて詳しく取り上げたいと思います。
04|BUSINESS/LABOR|労基署の監督指導を見直し――「柔軟な働き方」が「長く働かせる方便」にならないか
8月19日、厚生労働省は時間外労働に関する相談・支援と、労働基準監督署による監督指導の見直しを発表しました。
政府の成長戦略や骨太の方針を踏まえ、36協定や柔軟な労働時間制度について企業への相談支援を充実させるとともに、監督指導についても労使の合意を踏まえた運用となるよう見直すとしています。一方で、重大・悪質な事案については厳正に対応する方針も示されています。
方向性そのものは理解できます。働き方は多様化しています。全員が朝9時から夕方5時まで同じ場所で働く時代でもありませんし、企業には繁閑があります。働く側にも、「今日は少し長く働いて、明日は早く帰りたい」という希望があるでしょう。法律があまりに硬直的で、本人も会社も望んでいない働き方を強制するのであれば、それはそれで問題です。
ただし、「柔軟化」という言葉には少し注意した方がよいと思います。労働政策の世界で「柔軟」という言葉が出てくると、ときどき働く側だけが妙に柔軟体操を要求されます。会社は柔軟に長時間働かせる。社員は柔軟に対応する。ところが残業代の話になると、なぜか急に制度が硬直化する。そんな「柔軟性」では困ります。
36協定があるから何時間でも働かせてよいわけではありません。また、労使が合意したと書類に書いてあれば、本当に労働者が自由意思で納得したことになるとも限りません。
特に中小企業では、経営者と従業員の距離が近い分、「嫌なら反対してください」と言われても、現実にはなかなか反対できないことがあります。
行政が企業への相談支援を充実させるのはよいと思います。しかし、監督まで「柔軟」にし過ぎれば、最後にしわ寄せを受けるのは現場の労働者です。
働き方改革が、「残業時間の数字を帳簿上きれいにする改革」にならないよう、そこはきちんと見ていてほしいと思います。
05|DRUG POLICY/LAW|危険ドラッグ4物質を新たに指定――名前を変え続ける「いたちごっこ」
厚生労働省は8月18日、危険ドラッグに含まれる4物質を新たに「指定薬物」として指定しました。
危険ドラッグ問題では、規制対象となっている薬物の化学構造をわずかに変更し、別の物質として流通させる手口が以前から繰り返されてきました。一つを規制すると、少し分子構造を変えたものが登場し、それをまた規制する。まさにモグラ叩きです。しかも、売る側は妙に穏やかな名前を付けたりします。「お香」「アロマ」「研究用」と書かれていれば、中身まで穏やかになるわけではありません。危険ドラッグの怖いところは、違法か合法か以前に、何が入っているのか利用者自身にも分からないことです。
「法律で禁止されていないから安全」というのは、かなり危険な思い込みです。法律は、新しい化学物質が世の中に登場した瞬間に自動更新されるわけではありません。昨日まで規制対象になっていなかった物質でも、それは「安全だから合法だった」のではなく、「まだ役所が追いついていなかった」だけかもしれません。
この分野では包括指定など規制手法も強化されてきましたが、それでも新物質との競争は続きます。売る側が化学の知識を犯罪に使い、行政が後から追いかける。その知識と発想力を、もう少し別の方向へ使ってもらえれば、社会の役に立つ製品の一つでも作れそうなものですが、残念ながらそうはいかないようです。
危険ドラッグ対策では、規制の迅速化と同時に、「合法と表示されているから大丈夫」という誤解をなくすことも重要です。法律が追いつく前に、人の身体の方が先に壊れてしまっては意味がありません。
厚生労働省「危険ドラッグの成分4物質を新たに指定薬物に指定」
06|YOKOHAMA/SUNDAY|ホテルで余った果物が動物のおやつに――ズーラシアの「もったいない」がいい
最後は日曜日らしく、少し穏やかなニュースで終わります。
この週末、よこはま動物園ズーラシアの「ナイトズーラシア」で、市内ホテルで消費されなかった果物を動物たちのおやつとして活用する取組が行われています。
横浜市、市内ホテル、運搬事業者が連携して行っているもので、もともと今年6月から継続的に実施されています。ナイトズーラシアでも8月22日、23日に実施されています。ホテルでは、どうしても食べ物が余ります。宿泊者に十分な量を提供しようとすれば、ある程度余裕を持って食材を準備する必要がありますし、衛生上、人に再提供できない食品もあります。そこで、まだ食べられる果物を廃棄せず、動物たちのおやつにする。非常に分かりやすい取組です。
環境政策というと、「サーキュラーエコノミー」「資源循環」「サステナブル社会」など、やたらカタカナが増えます。難しい言葉を並べるほど政策が高度に見える、という行政資料特有の病気もあります。
でも、「ホテルで余った果物を動物が食べる」。これで十分伝わります。むしろ、この方が子どもにも分かります。
食品ロスの問題は、「年間何十万トン」という数字だけ聞いても、なかなか実感できません。しかし、昨日まで捨てられていたリンゴやバナナを、目の前で動物が喜んで食べている姿を見れば、「捨てなくても使えるものがあるんだ」と自然に理解できます。
環境教育は、ときどき説教臭くなります。「地球のために我慢しましょう」と言われ続けると、こちらも少し疲れます。
でも、余った果物を動物にあげる。ホテルは廃棄を減らせる。動物はおやつを食べられる。来園者は楽しみながら食品ロスを知る。こういう「みんな少し得をする仕組み」の方が、案外長続きするのではないでしょうか。
日曜の夕方、少し涼しくなったズーラシアで夜の動物を眺めながら、そんなことを考えてみるのもよさそうです。
今回のNEWS CLIPから
日曜日は少し緩やかなニュースをお伝えしたいのですが、山中市長の問題、ICCへの米国制裁、世の中はいろいろ難しい問題だらけです。
政治でも企業でも行政でも、立派な理念を語るのは簡単です。人権を語るなら、まず自分の組織で人を大切にする。法の支配を語るなら、気に入らない裁判官にも圧力をかけない。働き方改革を語るなら、本当に働く人を楽にする。
看板より中身。
結局、どのニュースもそこへ戻ってくるように思います。
日曜日ですから、最後くらいは難しいことを少し脇に置いて、ズーラシアの動物たちのように、ゆっくり過ごすのもよいかもしれません。
那住行政書士事務所
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