NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年8月20日
- 那住行政書士事務所

- 2 日前
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残暑と言って良いのか少し暑さが戻ってきている日々ですが……
ここ数回のNEWS CLIPでは生成AIや著作権に関するニュースを多く取り上げてきました。それだけ社会の動きが速い分野なのですが、法律や政策が私たちの暮らしに影響する場面は、もちろんそれだけではありません。
今日は少し方向を変えて、家計に直結する税制から、偽通販サイト、最低賃金、行政手続、そして新しく施行された国旗損壊等罪まで、幅広く取り上げます。
法律というと難しく感じますが、税金を払う、ネットで買い物をする、会社で働く、役所の制度を利用する――普段の生活そのものが、実はたくさんの制度の上に成り立っています。
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01|TAX/SOCIAL POLICY|「給付付き税額控除」導入へ――税金を減らすだけでは届かない人にどう支援するか
政府は8月5日、「給付付き税額控除」の制度導入に向けた基本方針を閣議決定しました。高市総理も同日、この制度について記者会見を行っています。
「給付付き税額控除」。
名前を聞いただけでは、何の制度なのか少し分かりにくいかもしれません。
基本的な考え方は、所得税などから一定額を税額控除し、控除しきれない部分については現金給付を行うというものです。
通常の所得控除や税額控除には、一つの限界があります。
そもそも支払っている所得税が少ない人には、大きな減税を行おうとしても十分な効果が届きません。例えば5万円の税額控除を設けても、納める所得税が2万円しかなければ、通常の税額控除では2万円までしか恩恵を受けられません。
そこで、残りの部分を「給付」する。
これが給付付き税額控除の大きな特徴です。
私は、考え方としては非常に興味深い制度だと思います。
これまで日本では、生活を支援するときに「減税するのか」「給付金を配るのか」という議論になりがちでした。
しかし、所得や家族構成などによって必要な支援額は違います。
減税だけでは低所得者に十分届かない。一方、一律給付では所得にかかわらず同じ金額を配ることになります。
給付付き税額控除は、その中間にある仕組みともいえます。
ただし、制度設計は簡単ではありません。
所得をどの時点で把握するのか、給与所得者と個人事業主をどう扱うのか、世帯単位なのか個人単位なのか、社会保険制度や既存の給付制度とどう調整するのか。実際に運用するとなれば、税務と社会保障を横断した仕組みが必要になります。
制度が複雑になりすぎれば、本来支援を受けられる人が制度を理解できず、利用できないという問題も起こり得ます。
良い制度とは、理論的に精緻な制度だけではありません。
必要な人に、必要な支援が、できるだけ分かりやすく届く制度であること。
今後具体的な制度設計がどのようになるのか、注目したいと思います。
参考:
02|CONSUMER/EC|「限定品が格安」に注意――ネット通販に潜む偽サイト
ネット通販で「どうしても欲しかった商品」を検索すると、一般的な販売価格よりかなり安いサイトが見つかることがあります。
しかも「残りわずか」「期間限定」「特別価格」などと表示されている。
こうしたとき、人は冷静な判断をしにくくなります。
消費者庁も、実在する通販サイトを装った「偽サイト」について注意を呼びかけています。実在する会社やブランドの名称、商品画像などを利用して、本物の通販サイトのように見せるケースもあります。
ウェブサイトがきれいに作られているから安全とは限りません。
ネット上では、外見だけなら本物そっくりのサイトを作ることは難しくなくなっています。
そこで購入前に確認したいのが、そのサイトを誰が運営しているのかということです。
会社名や所在地、電話番号などの表示に不自然な点がないか。極端に安い価格になっていないか。日本語がおかしくないか。支払方法が不自然に限定されていないか。消費者庁もこうしたポイントを確認するよう呼びかけています。
そして、少しでも「おかしい」と感じたら、その場で決済しないことです。
ネット通販では「今買わなければなくなる」という心理を利用されることがあります。
しかし、本当に希少な商品が、市場価格から大きく離れた金額で突然販売されているのであれば、「得をした」と考える前に一度疑った方がよいでしょう。
契約や消費者問題では、トラブルになってから解決するより、契約する前に一度止まる方がはるかに簡単です。
ネットショッピングが当たり前になった今だからこそ、「買う前の数分」が大切なのだと思います。
参考:
03|WORK/WAGE|最低賃金、今年度の目安は全国平均1176円――中小企業経営から考える賃上げ
今年度の最低賃金について、中央最低賃金審議会は7月28日、地域別最低賃金額改定の目安を取りまとめました。
Aランクは54円、BランクとCランクは56円の引上げが目安とされ、仮に目安どおり引き上げられた場合、全国加重平均は1176円となります。現在は各地方最低賃金審議会で地域ごとの審議が進められています。
働く側からすれば、物価が上昇している以上、賃金が上がることは当然重要です。
しかし、中小企業の側から見ると話はそれほど単純ではありません。
人件費が上昇しても、それを販売価格へ転嫁できなければ、企業の利益は減少します。利益が減れば設備投資ができない。新しい人を雇えない。さらに賃金を上げることもできない。
結局、賃上げを継続するためには企業そのものが稼げるようになる必要があります。
そのためには、単に人件費を「コスト」として考えるだけではなく、業務の効率化や設備投資、デジタル化、価格転嫁、新規事業などを組み合わせて生産性を高める必要があります。
ここは補助金政策とも深く関係します。
最近の国の補助制度では、単純に設備を購入するだけではなく、賃上げを要件としたり、賃上げによって補助率などを優遇したりする制度が増えています。
つまり国も、「設備投資をする→生産性を上げる→利益を増やす→賃金を上げる」という循環を政策として作ろうとしているわけです。
最低賃金がいくらになるかという数字はもちろん重要です。
しかし本当の課題は、その賃金を無理なく払い続けられる企業をどう増やしていくのか。
最低賃金のニュースを見るときには、そこまで含めて考える必要があると思います。
参考:
04|ADMINISTRATION/DIGITAL|年金の振込口座を「公金受取口座」に――8月から新制度スタート
この8月から、公金受取口座をめぐる新しい仕組みが始まっています。
年金を受給している人について、現在使っている年金の振込先口座を、公金受取口座として簡単に登録できる特例制度です。
対象となる人には、2026年8月頃から2027年2月頃にかけて、日本年金機構から順次案内が送られます。
公金受取口座とは、給付金などを国から受け取るための本人名義の預貯金口座を、あらかじめ登録しておく制度です。
登録しておけば、対象となる給付金等を申請する際、口座情報の記入や通帳のコピーなどの添付を省略できます。デジタル庁によれば、年金や高額療養費、所得税の還付金など160種類以上の給付金等で利用できます。
私は、こういうところに行政のデジタル化の本来の意味があると思います。
行政手続のデジタル化というと、紙の申請書をオンラインフォームへ置き換えることばかりが注目されます。
しかし、本当に重要なのは、紙を画面に置き換えることではありません。
一度行政が確認した情報を、本人の意思や適切な情報管理のもとで再利用し、同じ情報を何度も国民に提出させない。
行政手続そのものを簡単にすることです。
もちろん、個人情報を扱う以上、情報管理への信頼は不可欠です。そのためにも、何のために情報を登録し、どの範囲で利用されるのかを分かりやすく説明する必要があります。
デジタル化によって行政が便利になるというのは、「スマホで申請できる」ということだけではありません。
そもそも申請の際に記入したり、添付したりしなければならないものを減らしていく。
行政のデジタル化には、そんな方向へ進んでほしいと思います。
参考:
05|LAW/SOCIETY|国旗を傷つける行為に刑罰――「国旗を大切に思う気持ち」を法律はどう守るのか
8月13日、「国旗の損壊等の処罰に関する法律」が施行されました。
今年7月17日に成立し、7月24日に公布された新しい法律です。人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊、除去、汚損した場合、2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金が科されることになりました。私は、この法律が制定されたことについては、基本的に肯定的に受け止めています。
国旗は単なる一枚の布ではありません。
国家を象徴するものであり、国際社会では日本を示すものとして掲げられ、スポーツの国際大会などでも多くの人が日の丸を見ながら選手を応援します。そして、そこに敬意や愛着を感じる人がいることも、ごく自然なことだと思います。
今回の法律が保護しようとしているのも、まさにそのような「国旗を大切に思う国民感情」です。法律の附則でも、施行後の検討に際して「国旗を大切に思う国民感情を保護するのに必要かつ十分なものとなっているか」という観点が明記されています。
これまで刑法には、外国の国旗や国章を侮辱する目的で損壊・除去・汚損する行為を処罰する外国国章損壊等罪がありました。一方、日本の国旗については、それ自体を対象とする同様の処罰規定がありませんでした。自国の国旗を公然と、しかも多くの人に著しい不快感や嫌悪感を抱かせるような方法で損壊する行為について、社会として一定の線を引く。そのこと自体には十分な理由があると思います。
もちろん、国旗を大切に思うことを法律によって強制するべきではありません。
国に対する考え方も、日の丸に対する思いも、人それぞれ違ってよいでしょう。
しかし、「国旗に敬意を持つことを強制する」ことと、「多くの人が大切にしている国旗を、公然と著しく侮辱的な方法で傷つける行為に一定の制限を設ける」ことは、分けて考える必要があると思います。
今回の法律も、国旗を傷つければ何でも犯罪になるというものではありません。
例えば、古くなった国旗を廃棄するために切ったり焼いたりする行為や、誤って国旗を傷つけてしまった場合などまで処罰する制度ではありません。法務省も具体的な適用についてQ&Aを公表しています。また、法律には、適用に当たって「表現の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意しなければならない」という規定も置かれています。政治的・芸術的表現についても、刑法上の正当行為として違法性が阻却される場合があることが法務省から示されています。
私は、このバランスが重要なのだと思います。
表現の自由は民主主義社会にとって極めて重要です。一方、表現の自由があるからといって、他者が大切にしている象徴をどのような方法で傷つけても、社会として何のルールも必要ないということにはならないでしょう。
国旗を大切に思う人の感情も尊重する。
同時に、国家や政府を批判する自由、政治的・芸術的な表現の自由も守る。
今回の法律は、その両方をどのように調整するのかという問題に、一つの答えを示したものだと考えます。
法律が施行された以上、今後はその趣旨を踏まえながら、過度に広い適用にならないよう適切に運用されることを期待したいと思います。
参考:
06|ADMINISTRATION/DIGITAL|法務局のオンライン申請が土日祝日にも――「役所は平日」の常識が少しずつ変わる
最後も、行政手続の変化です。8月3日から、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」の利用時間が大幅に拡大されました。
平日は午前8時30分から午後11時まで、さらに土曜日、日曜日、祝日についても午前8時30分から午後6時まで利用できるようになっています。一見すると、単なるシステムの利用時間変更です。
しかし私は、こういう変化が行政のデジタル化では意外と重要だと思っています。
行政手続には長い間、「役所が開いている時間に手続をする」という前提がありました。
窓口へ行くのであれば、それは仕方ありません。ところがオンライン申請になっても、「利用できるのは平日の一定時間だけ」となれば、デジタル化のメリットを十分に生かしているとはいえません。自宅や事務所から申請できるのであれば、仕事が終わった夜や休日にも手続ができた方がよい。今回の利用時間拡大は、その当たり前の方向へ一歩進んだものだと思います。
ただし、注意したいのは、システムへ「送信できる時間」と登記所で「受付される時間」は違うことです。
登記所の受付時間は従来どおり平日の午前8時30分から午後5時15分までで、平日の午後5時15分以降や休日に送信した登記申請は、原則として翌業務日の受付となります。それでも、「申請する側」が行政機関の開庁時間に合わせなければならない場面を減らすことには意味があります。行政のデジタル化というと、新しいシステムを導入するといった大きな政策ばかりが注目されます。
しかし、利用時間を延ばす、同じ情報を何度も入力しなくて済むようにする、添付書類を減らす。こうした一つひとつの改善の方が、利用者にとっては便利さを実感しやすいこともあります。
「役所の手続だから平日に時間を作らなければならない」。
そんな常識が少しずつなくなっていくことも、行政のデジタル化なのだと思います。
参考:
今回のNEWS CLIPから
今回は、税、ネット通販、最低賃金、行政手続、そして国旗をめぐる新しい法律まで、少し幅広くニュースを取り上げました。
日々のニュースを追っていると、法律や制度は決して遠いところにあるものではなく、暮らしや仕事、そして社会の価値観とも密接につながっていることが分かります。
また次回も、気になったニュースを拾っていきたいと思います。
8月20日のNEWS CLIPでした。
那住行政書士事務所
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