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NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年8月18日


お盆休みも終わり、今週から通常の仕事に戻ったという方も多いのではないでしょうか。8月も後半に入ります。


ここ数日のNEWS CLIPでは、横浜市政や熊本地震など大きなニュースを続けて取り上げましたが、私たちの暮らしや仕事に関係するニュースは、それ以外にも次々と出ています。


今日のNEWS CLIPでは少し視野を広げます。


遺言制度のデジタル化によって「遺言を作ること」は本当に身近になるのか。アニメなどの海賊版をめぐり、捜査当局が「最初に流した人」を追う新しい動き。そして生成AI時代に避けて通れなくなってきた「AIで作ったことを表示するべきか」という問題。

さらに、日本企業の景況感、これからの横浜の多文化社会を考える「やさしい日本語」、最後は日本の近現代建築が次々と失われているという話題を取り上げます。


一見すると別々のニュースですが、制度や技術、社会の変化に対して、これまでのルールをどう適応させていくのかという共通した問題も見えてきます。


那住行政書士事務所HP https://www.nazumi-office.com/

01|INHERITANCE/WILL|スマホで遺言を作る時代へ――便利になれば「争族」は減るのか


今年6月、遺言制度を大きく見直す民法改正が成立しました。

その中でも注目されているのが、パソコンやスマートフォンを利用して作成できる新しい「保管証書遺言」、いわゆるデジタル遺言です。

現在の自筆証書遺言は、原則として遺言者本人が本文を自筆しなければなりません。財産目録についてはパソコンなどを利用できますが、本文までパソコンで作成して印刷しただけでは、有効な自筆証書遺言にはなりません。

今回の改正によって、新たにパソコンやスマートフォンなどで作成した遺言を法務局で保管する制度が創設されることになります。


これは非常に大きな変化です。


「遺言を書いた方がいいとは思っているけれど、全部手書きするのは大変だ」と感じていた人にとって、遺言を作成するハードルは確実に下がるでしょう。特に高齢になると長い文章を手書きすること自体が負担になりますし、財産や相続人が多ければ遺言の内容も複雑になります。そういう意味で、デジタル化には大きな意義があります。

一方で、「スマホで簡単に遺言が作れるようになれば、相続争いも減る」とまで考えるのは少し早いと思います。


遺言で難しいのは、文字を書くことだけではないからです。


誰にどの財産を相続させるのか、その結果として相続人同士の関係はどうなるのか、遺留分の問題は生じないか、不動産を共有させる内容になっていないか、遺言執行者を指定する必要はないか。こうしたことまで考えて初めて、実際に機能する遺言になります。

むしろ重要なのは、遺言の「中身」です。


作成方法が簡単になることで遺言を残す人が増えることは歓迎すべきですが、同時に、不十分な内容の遺言が増える可能性も考えておく必要があります。

そして、もう一つ注意しておきたいことがあります。


改正法は成立しましたが、新しい制度がすべて既に利用できるわけではありません。デジタル遺言の新制度についても施行を待つ必要があり、現在遺言を書く場合には、現在施行されている法律に従う必要があります。


「ニュースでスマホの遺言が認められたと聞いたから、スマホで文章を作って保存しておいた」というだけでは、現在の自筆証書遺言として有効にはなりません。

制度が変わるときほど、「法律が成立したこと」と「制度が施行されたこと」、そして「自分が実際に利用できること」を分けて考える必要があります。

遺言を作りやすくすることは重要です。しかし、本当の目的は「遺言という書類を作ること」ではありません。


自分が亡くなった後、自分の意思をできるだけ正確に実現し、残された家族が困らないようにすることです。


デジタル化されても、そこは変わらないと思います。


参考記事:

02|COPYRIGHT/PIRACY|海賊版サイトだけではなく「最初に流した人」を追う――著作権侵害対策の変化


著作権侵害対策をめぐって、興味深い動きが報じられています。


アニメなどの海賊版ファイルが大量に流通するTorrentサイト「Nyaa」に関連して、作品を最初にアップロードした、いわゆる「ファーストシーダー」とみられる人物が日本で摘発されたというものです。海外の知財専門メディアも、この事件を海賊版対策の新しいアプローチとして取り上げています。

ここで注目したいのは、「海賊版サイトを閉鎖する」という従来型の対策とは少し発想が違うことです。インターネット上の海賊版対策には、昔から難しい問題があります。一つのサイトを閉鎖しても別のドメインで再開されたり、サーバーを海外へ移されたり、別のサイトに同じコンテンツが掲載されたりする、いわゆる「いたちごっこ」が続いてきました。


そこで発想を変え、違法コンテンツの流通経路の上流を追う。誰が最初に作品をネットワークへ流したのかを特定できれば、その後に何千、何万というコピーが作られる前の段階にアプローチできます。


これは著作権保護という観点から、かなり重要な意味を持つと思います。


特に日本のアニメ、漫画、映画、ドラマなどは世界中で人気があります。それは日本のコンテンツ産業にとって大きな強みである一方、作品が公開されると短時間で違法コピーが世界中へ拡散するという問題も抱えています。

しかも現在は、単純な違法アップロードだけではありません。違法ストリーミングやTorrent、SNSへの転載、クラウドストレージでの共有など、流通経路そのものが複雑化しています。


著作権侵害対策も、「違法サイトを見つけたら削除する」という方法だけでは追いつかなくなっています。だからこそ、流通の起点を特定する技術や、国境を越えた捜査・権利執行が重要になってきます。


一方で、こうした技術が高度化すれば、通信の秘密やプライバシーとの関係も慎重に考える必要があります。


著作権を守るためであれば、ネット上のあらゆる行動を監視してよいという話ではありません。


クリエイターの権利とインターネット利用者の権利、その両方を守りながら、悪質な海賊版の流通経路をどう断つのか。

著作権実務でも、今後ますます重要になるテーマだと思います。


参考記事:

03|AI/COPYRIGHT|「AIで作りました」と表示すればいい?――生成AI時代の新しい表示問題


生成AIで作られた画像や文章、動画が急速に増えています。


そこで世界的に議論されているのが、「AI生成物であることを表示すべきか」という問題です。

一見すると単純です。AIで作ったのであれば、「AI generated」と表示すればよい。しかし、実際にはそれほど簡単ではありません。

8月に公表された研究では、AI生成コンテンツのクリエイター21人へのインタビューと複数の画像生成サービスの検証を通じて、AIラベルに対するクリエイター側の複雑な意識が報告されています。

興味深いのは、AI利用を表示することによって「作品の価値を低く評価されるのではないか」「SNSなどで不利に扱われるのではないか」という懸念から、AI利用の痕跡を消そうとする行動が生じ得るという点です。

これは、今後かなり重要な問題になると思います。

そもそも「AIで作った」という言葉自体が曖昧です。プロンプトから画像全体を生成する場合もあれば、人間が描いた作品の背景だけをAIで作る場合もあります。写真から不要なものを消すために生成AIを使うこともあれば、自分で書いた文章の誤字脱字を直すためだけにAIを利用する場合もあります。

これらをすべて同じ「AI生成」と表示することが適切なのかは、十分考える必要があります。


著作権の問題とも関係します。


日本の著作権法では、AIを利用したという事実だけで、その作品に著作権が認められる、あるいは認められないと機械的に決まるわけではありません。人間がどの程度創作的に関与したのかという点が重要になります。

だとすれば、将来的には「AIを使ったか、使わなかったか」という二択ではなく、「どの工程で、どの程度AIを利用したのか」を考える必要が出てくるでしょう。

一方で、AIによって作られた偽画像や偽動画が社会問題になっている以上、何らかの表示や来歴情報が必要だという考え方にも十分な理由があります。

重要なのは、AI表示を「AIを使った人に貼る注意書き」にしてしまわないことだと思います。


消費者の誤認を防ぐためなのか、コンテンツの来歴を明らかにするためなのか、偽情報対策なのか。何のために表示するのかによって、必要な情報も制度も違ってくるはずです。

生成AIが制作現場へ当たり前に入り始めたからこそ、「AIを使った/使わなかった」という単純な区分から、もう一段深い議論へ進む時期に来ているのだと思います。


参考:

04|BUSINESS/ECONOMY|企業の景況感が改善――半導体と国内消費がけん引する一方で


少し経済の話題です。


8月のロイター企業調査では、日本企業の景況感が改善しました。

製造業の景況感指数は7月のプラス13から8月にはプラス18へ上昇し、今年3月以来の高い水準となりました。非製造業についてもプラス25からプラス28へ改善しています。

特に製造業を押し上げているのが半導体関連需要で、化学、金属・機械などで景況感が大きく改善しています。非製造業でも卸売、情報サービスなど幅広い業種で改善がみられます。

数字だけを見ると、かなり明るいニュースです。


しかし、中小企業や個人事業者の現場では、必ずしも「景気がよくなった」という実感ばかりではないでしょう。


原材料費や人件費、エネルギー価格、物流費など、事業者が負担するコストも増えています。売上が増えても、それ以上に経費が増えれば利益は残りません。


そのため、これからの中小企業経営では単純に売上を増やすだけではなく、生産性を上げるための設備投資やデジタル化、適切な価格転嫁、新しい市場への進出などを組み合わせていく必要があります。

そして、そのために国や自治体が用意している補助金・助成制度を活用できる場合もあります。


補助金は単なる「もらえるお金」ではなく、事業計画を実現するための政策的な支援制度です。何を実現するために投資するのか、その結果として会社をどう変えていくのかまで考えて利用することが重要です。


景況感が改善している時期だからこそ、次の成長に向けた投資を検討する企業にとっては、一つの機会になるかもしれません。


参考記事:

05|YOKOHAMA/COMMUNICATION|今日、横浜で「やさしい日本語」を学ぶ――外国人だけのためではない伝え方


8月18日、横浜市青少年育成センターで「青少年支援のためのやさしい日本語の使い方」をテーマとした講座が開催されます。

「やさしい日本語」とは、難しい日本語を外国人にも理解しやすい表現に言い換えて伝える考え方です。


例えば、行政の文章にある「ご持参ください」を「持ってきてください」と言い換えるだけでも、意味はずっと伝わりやすくなります。「申請期限を徒過した場合」という表現も、「この日までに申し込んでください。期限を過ぎると申し込めません」と説明すれば、法律や行政の知識がない人にも意味が伝わります。

もともとは外国人への情報提供などで注目されてきましたが、私は「やさしい日本語」は外国人のためだけのものではないと思います。

高齢者や子ども、その分野の専門知識を持っていない人に情報を伝えるときにも、同じ発想が役立ちます。


そして、これは行政書士の仕事にも非常に関係があります。


行政手続や法律の世界には、「被相続人」「遺留分」「瑕疵」「許認可」「行政不服申立て」など、専門家にとっては当たり前でも、初めて相談する人には意味が分かりにくい言葉が数多くあります。


専門用語をたくさん知っていることだけが専門家なのではありません。


難しい制度を理解したうえで、それを相談者に分かる言葉へ置き換えて説明する。そこまでできて初めて、専門知識を相談者へ届けたことになるのだと思います。

外国人住民も多い横浜では、行政情報をどのように伝えるかは、これからますます重要になります。


「正しい日本語」と「伝わる日本語」は必ずしも同じではありません。

「やさしい日本語」という考え方が、行政や専門職の世界にもさらに広がってほしいと思います。

参考:

06|CULTURE/PROPERTY|日本の名建築が次々と消えていく――「建物は土地のおまけ」でいいのか


最後は、建築と文化について少し考えさせられるニュースです。


英Financial Timesが8月15日、日本の近現代建築が次々と失われている問題を大きく取り上げました。

日本では、欧米と比較して住宅など建物の寿命が短く、古くなった建物を改修して使い続けるより、取り壊して新築することが一般的です。

その背景には耐震基準、建物の老朽化、土地価格、維持管理費などさまざまな事情があります。しかし、その結果として建築史上重要な建物まで次々と姿を消しています。

代表的なのが、黒川紀章氏が設計した「中銀カプセルタワービル」です。メタボリズム建築を象徴する世界的にも有名な建物でしたが、老朽化などを背景に2022年に解体されました。


Financial Timesの記事では、こうした建築物が失われる背景として、日本では土地の価値に比べて建物の資産価値が低く評価されやすいことや、耐震改修に大きな費用が必要になることなどが指摘されています。


ここには相続の問題もあります。


親から土地と建物を相続しても、相続人がそこに住むとは限りません。維持費や固定資産税がかかり、場合によっては相続税の問題も生じます。その結果として土地を売却し、建物を解体することが、所有者にとって合理的な判断となる場合もあります。

だからこそ難しい問題です。

「文化的に価値があるから残してください」と言うだけでは、その維持費を誰が負担するのかという問題が残ります。


一方で、建築物も文化です。一度壊してしまえば、同じものを取り戻すことはできません。

著作権法でも建築の著作物は保護対象になり得ますが、著作権があるから建物を永久に保存しなければならないという制度ではありません。

所有権、都市計画、建築規制、文化財保護、相続、税制など、さまざまな制度が交差するところに建築保存の難しさがあります。


古い建物を全部残すことはできません。しかし、「古くなったから壊す」「土地を売るから壊す」以外の選択肢を、社会としてどこまで用意できるのか。

横浜にも、開港以来の歴史的建造物から戦後の近現代建築まで、多くの建物があります。

10年後、20年後の街に何を残すのか。

これは文化の問題であると同時に、法律と政策の問題でもあると思います。


参考記事:

今回のNEWS CLIPから

今回は、遺言のデジタル化から海賊版対策、生成AI、企業経営、やさしい日本語、そして建築保存まで、少し幅広いニュースを取り上げました。

分野は違っても、技術や社会が変化すれば、それに合わせて法律や制度にも新しい課題が生まれます。

新しいものを取り入れながら、何を守り、どのようなルールを作っていくのか。これからも日々のニュースから考えていきたいと思います。

8月18日のNEWS CLIPでした。


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