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NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年8月17日


7月28日に発生した令和8年熊本地震から、まもなく3週間が経とうとしています。


熊本県熊本地方を震源とする大きな地震によって、熊本県内では人的被害や住宅・建物への被害が生じました。発災直後の救命・救助の段階から、現在は被災した住宅や事業所をどう再建するのか、各種支援制度をどのように利用するのか、生活や事業をどう立て直していくのかという、長い復旧・復興の段階へと課題が移りつつあります。


あらためて被災された皆様に改めて心からお見舞い申し上げるとともに、一日も早く穏やかな生活を取り戻されることを願っています。


そして、この段階になって非常に重要になるのが、行政と被災者をつなぐ専門家の存在です。

今回のNEWS CLIPでは、熊本地震を受けた行政書士会の活動と、災害時に専門家が果たせる役割について考えます。

後半は話題を変え、会社法改正で議論されている株主提案権、大学生と生成AI、そして最後は横浜に新しく誕生する文化拠点について取り上げます。


那住行政書士事務所HP https://www.nazumi-office.com/

01|DISASTER/ADMINISTRATIVE SCRIVENER|熊本県行政書士会が迅速に動く――10年前の経験を、今回の支援へ


今回の熊本地震で、熊本県行政書士会が迅速に様々な動きを見せています。こうした動きはマスコミでも数々報道されています。

発災後、熊本県行政書士会は被災者に対する相談対応など、行政書士としてできる支援に早い段階から動き始めています。地震が発生した直後には、救命・救助、避難所の確保、水や食料、医療などが最優先となります。しかし時間が経過すると、被災者の前には次々と行政手続の問題が現れます。罹災証明書をどう取得するのか、利用できる生活再建支援制度は何か、壊れた住宅や事業所をどうするのか、事業を再開するために利用できる支援制度はあるのか。許認可や自動車、相続などの手続が必要になる場合もあります。

普段であっても複雑な行政手続きを、住まいや仕事が被害を受け、生活そのものが混乱している状態で被災者自身が調べ、書類をそろえ、申請することは容易ではありません。

そこに行政手続の専門家である行政書士が関わる意味があります。

今回の熊本県行政書士会の迅速な対応には、10年前の経験が大きく生きているのではないかと思います。2016年の熊本地震です。

熊本県行政書士会の櫻田直己会長をはじめ、現在の役員の先生方の中には、10年前の熊本地震でも支援活動の最前線に立った方々が多くいらっしゃると伺っております。災害支援には、実際に経験して初めて分かることがあります。いつ、どのような相談が増えるのか。行政とどう連携すればよいのか。相談窓口をどこへ置けば被災者に届くのか。会員をどのように配置し、何を優先すべきなのか。過去の災害対応で得た経験が組織に蓄積されていたからこそ、今回も早い段階から行動に移すことができたのだと思います。

私自身、櫻田直己先生には日頃から大変お世話になっています。

櫻田先生は熊本県行政書士会の会長であるとともに、日本行政書士会連合会では国際・企業経営業務部の部長を務めています。私も同部の専門員を務めていますので、ご一緒する機会があります。企画力、実行力、そして多くの人をまとめて物事を前へ進める統率力を持った、大変素晴らしい先生です。今回の熊本会の動きんは、櫻田会長の強いリーダーシップがあったのだろうと思います。また熊本会が、10年前の経験を単なる「過去の記憶」にせず、次の災害で実際に機能する組織の力として残していたこともすばらしいことだと思います。

災害は起きてほしくありません。しかし、いざ起きてしまったときに、過去の経験を生かして迅速に動けるかどうか。そこに専門職団体としての日頃の備えが表れるのだと思います。

今回の熊本県行政書士会の活動には、同じ行政書士として心から敬意を表したいと思います。

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02|DISASTER/ADMINISTRATIVE SCRIVENER|熊本だけではない――日行連も全国組織として被災地を支える


熊本県行政書士会が現場で活動する一方、全国組織である日本行政書士会連合会も被災地支援に動いています。

大規模災害で忘れてはいけないのは、被災地の行政書士自身もまた被災者だということです。

事務所が被害を受けているかもしれません。自宅が損壊しているかもしれません。家族の安全確保や、既存の依頼者への対応もしなければなりません。そうした状況の中で、地域の行政書士会だけにすべての支援を委ねることには限界があります。

そこで重要になるのが、日本行政書士会連合会と全国の都道府県行政書士会のネットワークです。

今回の熊本地震では、熊本県氷川町、八代市、宇城市において、住家被害の認定調査や罹災証明書発行事務を円滑に進めるため、「罹災証明コーディネーター」が派遣されました。被災自治体の事務負担を軽減し、迅速な生活再建につなげるための支援です。

この動きは2024年9月、政府と日本行政書士会連合会との間で、大規模災害時の被災自治体への支援に関する協定を締結していることから、実施された動きです。今回の熊本地震におけるコーディネーター派遣は、この協定に基づく要請・派遣としては初めての事例となります。

必要に応じて人員や情報を提供し、過去の災害対応のノウハウを共有し、国の関係機関との調整を行う。場合によっては、被災地外の行政書士が支援に入ることも考えられます。行政書士会が全国組織であることは、こうした場面で大きな意味を持ちます。

東日本大震災、2016年熊本地震、西日本豪雨、令和6年能登半島地震など、日本では残念ながら大規模災害が繰り返されてきました。そのたびに、各地の行政書士は被災者の生活再建に関する相談に携わり、経験を積み重ねています。

熊本で得られた経験を熊本だけに残すのではなく、全国で共有する。別の地域で災害が起きたときには、今度はその経験を生かす。専門職団体として重要なのは、こうした知識と経験の循環なのだと思います。熊本県行政書士会を熊本だけで孤立させることなく、全国の行政書士が支える。

日行連には、全国組織だからこそできる役割を果たしてもらいたいと思います。

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03|DISASTER/LEGAL SUPPORT|災害時に行政書士などの専門家は何ができるのか


では、災害が起きたとき、行政書士をはじめとする専門家には具体的に何ができるのでしょうか。

発災直後の現場では、自衛隊、消防、警察、医療関係者などが救命・救助を担います。行政書士が倒壊家屋に入り、人を救助するわけではありません。

しかし、時間が経つにつれて、被災者が直面する問題は「命を守ること」から「生活を再建すること」へ変化します。

そのとき、行政や法律に関係する問題が一気に増えていきます。

罹災証明や各種支援金、住宅の再建、事業者向け補助制度、許認可、自動車関係の手続、相続、契約、保険、登記、税金、雇用、債務など、一人の被災者について複数の問題が同時に発生することも珍しくありません。そこで大切なのは、「行政書士だけですべて解決する」という発想ではないと思います。行政書士には行政手続があります。弁護士には法律紛争、司法書士には登記、税理士には税務、社会保険労務士には労務・社会保険、建築士には建物の専門分野があります。

被災者から相談を受けた専門家が、まずその人の抱えている問題を整理し、自分の専門領域であれば支援し、別の専門家が必要なら適切につなぐ。

この「相談の交通整理」も、災害時には非常に重要です。

被災者にとっては、「この問題は行政書士に聞くのか、司法書士なのか、弁護士なのか」と自分で判断すること自体が負担になることがあります。

そのため、専門家側が横につながっている必要があります。

そして災害対応で最も重要なのは、こうした連携を災害発生後に初めて考えないことです。自治体との協定、士業間の連携、相談員の研修、連絡体制、相談マニュアルなどを平時から準備しておかなければ、いざというときにはなかなか機能しません。

今回の熊本県行政書士会の動きを見ていると、災害対応は災害が起きた日から始まるのではなく、何も起きていないときから始まっているのだと改めて感じます。

04|CORPORATE LAW/GOVERNANCE|会社法改正で株主提案が難しくなる?――少数株主の権利と企業側の負担


ここからは災害とは離れ、会社法の話題です。

東京新聞は8月14日、「会社法見直しは脱原発提案つぶし? 株主提案権制限の動きに『健全な経営監視』への影響を危惧する声」と報じました。

現在、法制審議会では会社法の見直しが進められており、その論点の一つが株主提案権です。

現行制度では、一定の会社について、総株主の議決権の1%以上を持つ株主だけでなく、300個以上の議決権を一定期間保有する株主にも株主提案への道が開かれています。

今回の中間試案では、この「300個」という要件を廃止する案や、必要な個数を引き上げる案が示されています。

この見直しに強い懸念を示しているのが、これまで電力会社に脱原発などの株主提案を続けてきた市民株主らです。

巨大企業の議決権の1%を取得しようとすれば、企業によっては数十億円、数百億円単位の株式が必要になる可能性があります。そのため300個要件がなくなれば、市民運動をベースとした株主提案は事実上困難になるという主張です。

この懸念には、相当の理由があると思います。

株主提案の意味は、必ずしも提案を可決させることだけではありません。提案内容が招集通知に掲載されれば、多くの株主がその問題を知ることになります。株主総会では経営陣に直接説明を求めることもできます。

否決された提案であっても、それを契機に会社側が考え方や制度を変えることはあり得ます。

したがって、少数株主の提案権は経営監視の一つの手段として意味を持っています。

ただし、「今回の会社法改正は脱原発提案をつぶすことを目的としている」とまで断定するのは慎重であるべきでしょう。

企業側にも合理的な問題提起があります。

株主提案が増加すれば、会社側には招集通知への掲載や法的検討、株主総会での対応など相応の負担が発生します。また、会社の規模にかかわらず一律に「300個」とする基準が現在も適切なのかという議論にも一理あります。

そこで本当に問われているのは、企業の効率的な運営と、少数株主による経営監視をどこで均衡させるのかという問題でしょう。

個人的には、300個という数字そのものを見直す議論はあり得ると思います。

しかしその結果、資金力のある機関投資家だけが提案でき、一般の個人株主が実質的に企業へ問題提起できなくなるのであれば、それは別の問題を生みます。

政府は「貯蓄から投資へ」と個人の株式投資を促しています。

株主になることを促す一方で、「資金を出すことは歓迎するが、会社へ意見を言うハードルは上げる」という制度になってしまえば、やはり違和感は残ります。

会社法は、経営者が経営しやすくするためだけの法律ではありません。

経営者、株主、債権者など、株式会社をめぐるさまざまな利害を調整する法律です。

株主提案権の見直しについても、企業側の事務負担だけではなく、少数株主が持つ経営監視機能をどこまで残すのかという視点から、慎重な議論が必要だと思います。


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05|AI/EDUCATION|大学生の生成AI利用が当たり前に――使わせないより、正しい使い方を教える


KAI-YOUが、学生と生成AIの利用について興味深い記事を掲載しています。

生成AIが登場した当初、教育現場では「レポートをAIに書かせるのではないか」「学生が自分で考えなくなるのではないか」といった懸念が強くありました。

もちろん、その懸念には理由があります。

生成AIが作った文章をほとんど確認せず、そのまま自分のレポートとして提出するのであれば、学習として問題があるのは当然です。

しかし私は、だからといって学生による生成AI利用そのものを否定するべきではないと思っています。

むしろ、これから社会へ出る学生に生成AIを全く使わせないことの方が問題ではないでしょうか。

今後は企業でも行政でも専門職でも、生成AIを利用する場面がさらに増えるはずです。

学生時代に必要なのは「AIを使わない訓練」ではなく、「AIを適切に使う訓練」だと思います。

例えば、理解できない概念を別の言葉で説明してもらう。自分の意見に対する反論を出してもらう。論文を読む際に事前に論点を整理する。自分が書いた文章について論理の飛躍を指摘してもらう。

こうした使い方であれば、AIは人間の思考を奪う存在ではなく、思考を広げるための道具になります。

一方で、AIには間違いもあります。

もっともらしい嘘を答えることもありますし、出典が存在しない場合もあります。著作権、個人情報、機密情報の取扱いにも注意しなければなりません。

だからこそ、生成AIを使わせないのではなく、その危険性まで含めて使い方を教える必要があります。

AIが答えた内容を一次資料で確認すること、自分の考えとAIの回答を区別すること、最終的な判断は自分自身で行うこと。

こうした能力は、今後社会で仕事をするうえで極めて重要になると思います。

電卓が登場しても数学教育はなくなりませんでした。インターネット検索が普及しても、調査能力が不要になったわけではありません。

生成AIについても同じです。

学生にAIを使わせない教育ではなく、AIを使いながら、それでも自分の頭で考えられる人を育てる。

私はその方向へ教育も変わっていくべきだと思います。


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06|YOKOHAMA/CULTURE|横浜に新しい文化拠点「Sta.R」――廃材とアートがつながる場所


最後は、少し明るい横浜の話題です。


8月24日、相鉄線星川駅に直結する場所に、新たな文化拠点「Sta.R(ステーション・アール)」がオープンします。

横浜市によれば、Sta.Rのテーマは「創造・循環・文化」。

施設内には、地域から集まった廃材を展示・活用する「マテリアルライブラリー」が設けられるほか、アートギャラリーやイベント、ワークショップなども展開されます。オープンを記念したイベントも8月29日と9月1日に予定されています。

この施設で面白いと思うのは、「文化施設」と「資源循環」を最初から一つのテーマとして扱っている点です。

通常、廃材という言葉からは「不要になったもの」というイメージを持ちます。

しかし、素材そのものに目を向ければ、それを別の作品や製品、空間づくりに生かせる可能性があります。

捨てるものを、新しい創造の材料として見る。

そこにデザインやアートを組み合わせる。

Sta.Rは、そうした発想を実際に体験できる場所を目指しているようです。

これは知的財産やコンテンツの世界にも少し似ているように感じます。

創作活動では、既に存在する素材や文化、技術をどのように新しい形へ変えていくのかという場面が多くあります。

一方で、他人が作った作品やデザインを利用する場合には、著作権などの権利処理も必要です。

創造を促すことと、作った人の権利を守ること。

その両方を成立させながら新しい文化を作っていくことが、これからの地域の文化政策にも求められるのだと思います。

横浜はこれまでも、赤レンガ倉庫や象の鼻テラス、黄金町など、まちづくりと文化芸術を結び付ける取組を進めてきました。

Sta.Rが、星川という日常的な駅のすぐそばで、どのような人や作品を結び付ける場所になっていくのか。

新しい横浜の文化拠点として、少し注目してみたいと思います。


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今回のNEWS CLIPから――経験を蓄積し、新しいものへつなげる


今回のNEWS CLIPは熊本地震から始めました。

時間が経つと報道は減りますが、被災者にとってはこれからが本番です。生活再建には専門家の支援が欠かせません。

特に熊本県行政書士会が10年前の経験を今回に生かしている点は印象的でした。経験を組織に残し、次に備えることの重要性が改めて感じられます。

この視点は会社法や生成AIの議論にも通じます。制度や技術は、変化に合わせて更新していく必要があります。

またSta.Rでは、廃材を新しい創造につなげる試みが始まります。

異なる6つの話題に共通するのは、「過去をどう次につなぐか」という点でした。

熊本の復旧・復興を願いつつ、経験を未来に生かす大切さを考えた8月17日のNEWS CLIPでした。


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