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NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年8月12日


日々流れてくるニュースの中から、法務、政策、知的財産、行政、そして私たちの生活や事業に関係する話題を拾い、そのニュースが実務や社会にどのような意味を持つのかを考える「法務通信 NEWS CLIP」。

8月12日号では、AI生成コンテンツをめぐるEUの新しいルール、個人情報保護法改正、フリーランスとの契約、大規模小売業者と納入業者との取引、終活をめぐる横浜市の新制度、そして横浜市民の消費生活相談という6つのニュースを取り上げます。

一見すると別々のニュースですが、共通しているのは「ルールを作るだけでなく、それを実際の社会や取引の中でどう機能させるのか」という問題です。


那住行政書士事務所HP https://www.nazumi-office.com/

01|AI|「これはAIが作りました」を表示する時代へ――EU AI Actの透明性ルールが適用開始


生成AIをめぐって、8月に大きな節目を迎えたのがEUです。


EUのAI規則、いわゆる「AI Act」のうち、AI生成コンテンツなどに関する透明性義務が8月2日から適用されています。

欧州委員会はこれに先立つ7月20日、AIシステムの提供者・利用者が透明性義務を履行するためのガイドラインを公表しました。AIと直接やり取りする場合にはAIであることを知らせることや、AIによって生成・加工された一定のコンテンツについて機械判読可能な形で識別できるようにすることなどが求められます。ディープフェイクや、人によるレビュー・編集管理を経ずに公的関心事項について公開されるAI生成テキストなどにも透明性義務が関係します。


これは日本から見ても興味深い動きです。

これまで生成AIをめぐる議論では、

「AI生成物に著作権はあるのか」

「AI学習に著作物を使えるのか」

という問題が大きく取り上げられてきました。


しかし、AI生成物が社会に大量に流通するようになると、その次の問題として、

「人間が作ったものなのか、AIが作ったものなのか」

を利用者が判断できるようにする必要が出てきます。

つまり、AI法務の焦点が「作ってよいか」から「作ったものをどう表示するか」にまで広がっているわけです。


特に画像、動画、音声については、生成AIによるものなのか、人間が撮影・制作したものなのかを見ただけで判断することが難しくなっています。

EUのルールはEU域内の制度ですが、世界的にサービスを提供するAI事業者が対応する以上、その影響はEUだけにとどまりません。

日本でもAI生成コンテンツの表示や来歴情報をめぐる議論は、今後ますます重要になるでしょう。

02|PERSONAL/BUSINESS|個人情報保護法が改正――生体情報と「課徴金制度」に注目


国内では、個人情報保護法に大きな動きがありました。

改正個人情報保護法が7月10日に成立し、7月17日に公布されています。個人情報保護委員会では、今後、円滑な施行に向けて政令、規則、ガイドラインなどの検討を進めるとしています。


今回の改正で注目したいポイントの一つが、身体的特徴に関する情報です。

一定の個人情報について、違法な取扱いがなくても本人から利用停止等を請求できる仕組みが設けられます。


さらに重要なのが「課徴金」です。


個人情報を違法に取り扱うことによって財産上の利益を得た場合に、個人情報保護委員会が課徴金納付を命じる制度が導入されます。

これまで個人情報保護法というと、

「プライバシーポリシーを作っておけばよい」

「漏えい事故を起こさなければよい」

という程度の認識を持つ事業者も少なくなかったと思います。

しかし、データそのものが企業の重要な経営資源になった現在、個人情報の不適切な利用によって利益を得る行為に対して、経済的な制裁を課す方向へ制度が動いています。

そして、この問題はAIとも密接に関係します。

AIによって大量のデータを分析できるようになれば、これまで利用価値が低いと思われていた情報からも、個人の行動や属性などを推測できる可能性があります。

企業のAI利用を考える際には、著作権だけではありません。

どのデータをAIへ入力するのか。そのデータを取得した目的は何だったのか。本人への説明は十分なのか。第三者提供に当たらないのか。

個人情報保護法をセットで考える必要があります。


AI時代の企業法務において、個人情報保護はますます重要なテーマになりそうです。


03|BUSINESS/CONTENTS|ラジオ局にフリーランス法違反で勧告――「口約束で仕事を頼む」は通用しない


クリエイターや個人事業主との契約という点で注目したいニュースです。

公正取引委員会は7月31日、エフエム京都に対し、フリーランス・事業者間取引適正化等法に基づく勧告を行いました。


問題となったのは、放送番組等の制作に関する音源制作や出演などの業務委託です。

公正取引委員会によると、39名のフリーランスに対し、業務を委託する際に取引条件の全部または一部を直ちに書面または電磁的方法で明示していませんでした。

さらに29名について報酬の支払期日を定めていなかったほか、3名については役務提供から60日を超える支払期日を設定するなどの問題が認定されています。

これはクリエイター業界にとってかなり重要な事例です。

音楽、映像、イラスト、執筆、出演などの世界では、

「いつもの人だから」

「メールで大体話しているから」

「金額はあとで決めればいい」

という取引が今でもあります。

しかしフリーランス法施行後は、その感覚では済まなくなっています。

特にクリエイターとの契約では、報酬だけでなく、納品物は何か。著作権は誰に帰属するのか。利用できる範囲はどこまでか。修正は何回までか。

といった点も契約段階で整理することが重要です。


ここで重要なのは、「立派な契約書を作ること」それ自体が目的ではないということです。

仕事を始める前に、

「何を頼んだのか」「いくら支払うのか」「いつ支払うのか」

を明確にしておく。

取引の基本ともいえることですが、フリーランスとの取引について、それが法律上の義務として具体化されていることを改めて認識しておく必要があります。


04|PERSONAL|高齢者の「終身サポート」、横浜市が事業者を独自評価へ


高齢化が進むなかで、身元保証、入院・施設入所時の支援、死後事務などを一体的に提供する「高齢者等終身サポート事業」が広がっています。

一方で、この分野は利用者にとって事業者のサービス内容や信頼性を判断することが難しいという問題があります。

そこで横浜市は7月28日、市独自の評価基準を満たす高齢者等終身サポート事業者等と連携協定を締結し、市民が安心して事業者を選べる環境を整える取組を開始しました。公募は9月25日まで行われ、選定結果は12月以降に通知される予定です。

これは「終活」を考えるうえで、かなり重要な動きだと思います。

身寄りのない高齢者や、親族がいても遠方に住んでいる高齢者が増えれば、入院するとき誰が対応するのか。施設へ入所するとき誰が手伝うのか。亡くなった後の住居や家財をどうするのか。葬儀や納骨を誰に頼むのか。といった問題が出てきます。


これまで家族が当然のように担ってきた役割を、民間事業者との契約によって補う必要が生じているわけです。


ただ、ここには難しい問題があります。


終身サポート契約は、一度契約すれば何年、場合によっては十年以上続く可能性があります。また、契約の相手方である高齢者が判断能力を失うことも想定しなければなりません。

そのため、単に「サービス内容が充実している」というだけでは足りません。

契約内容は適切なのか。預託金などの管理は安全なのか。事業者が将来も存続しているのか。任意後見や遺言、死後事務委任契約との関係をどう整理するのか。

終活の問題は、サービス選びだけではなく、契約・相続・成年後見など複数の制度を組み合わせて考える必要があります。


行政と民間が連携して、市民が事業者を選ぶための環境を整備するという今回の取組は、「終活支援」という新しい市場を考えるうえでも興味深いものです。


05|BUSINESS|スーパーや百貨店と納入業者の力関係――公取委が約3万2000事業者を大規模調査


企業間取引について、現在進行中の興味深い調査があります。

公正取引委員会は7月29日、「大規模小売業者と納入業者との取引に関する実態調査」を開始すると発表しました。


対象となるのは、小売業者約1,200事業者と納入業者約31,000事業者。7月30日からウェブアンケートへの協力依頼を発送しており、回答期限は8月27日となっています。

かなり大規模な調査です。


なぜ今、公正取引委員会がスーパーや百貨店などと納入業者との関係を改めて調べるのでしょうか。

背景にあるのが、企業間取引を取り巻く環境の変化です。


原材料価格の上昇。人件費の上昇。物流コストの増加。SNSやデジタル広告を利用した販売促進。

こうした変化によって、大規模小売業者と納入業者との間の取引条件や費用負担のあり方も変わっている可能性があります。

公取委は、こうした状況を踏まえて取引実態を把握し、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」を未然に防止することなどを調査目的としています。

ここでいう「優越的地位」というのは、単純に会社の規模が大きければ成立するという話ではありません。


例えば、ある納入業者にとって特定の大手小売業者との取引が事業上非常に重要で、

「この要求を断ったら、今後取引してもらえないかもしれない」

という関係にある場合があります。

その立場を利用して、本来納入業者が負担する必要のない費用を負担させる。一方的に不利益な条件を押し付ける。協賛金などの名目で金銭を求める。従業員の派遣を求める。

といったことがあれば、独占禁止法上の問題となる可能性があります。

今回の調査で特に注目したいのは、価格だけではありません。


公取委自身が、SNSやデジタル広告など「販売促進手法の多様化」を調査の背景として挙げています。


これは小売業界だけの話ではないと思います。

発注者と受注者。元請と下請。企業とフリーランス。プラットフォームと出店事業者。

事業者間には、さまざまな「力の差」があります。

契約書に書いてあり、形式的には相手が同意していたとしても、それだけで常に適正な取引になるわけではありません。

「契約自由の原則」がある一方で、取引上の強い立場を利用して相手方に不利益を押し付けることには、独占禁止法などによる規律が及びます。

企業の契約書を見るときにも、「この条項に合意したか」だけではなく、「この条件を要求すること自体に問題はないか」という視点が、これからますます重要になると思います。


公正取引委員会は、アンケート結果を踏まえて関係事業者へのヒアリングなどを行い、結果を公表する予定です。また、独占禁止法上の問題につながるおそれのある行為が確認された事業者には、注意喚起文書を送ることも予定しています。

今後どのような取引慣行が問題として浮かび上がってくるのか。結果についても追いかけたい調査です。


06|YOKOHAMA/ICHIGAO|横浜の消費生活相談から見える「いま起きているトラブル」


最後は地元・横浜のニュースです。

横浜市は7月16日、令和7年度に横浜市消費生活総合センターへ寄せられた消費生活相談の傾向を公表しました。


同センターでは、商品やサービスに関する契約トラブルなどについて市民から相談を受け、その解決を支援しています。今回、その令和7年度の相談傾向がまとめられました。

消費者問題というと、「悪質商法に気を付けましょう」という話だけに見えるかもしれません。しかし、実際の消費生活相談は、社会の変化をかなり敏感に反映します。

インターネット通販。サブスクリプション。SNS広告。高齢者を狙った勧誘。住宅修理。投資や副業。新しいサービスや取引方法が生まれると、その少し後から新しいタイプの消費者トラブルも生まれてきます。


特に現在は、「契約した」という感覚そのものが薄くなっています。


スマートフォンでボタンを押す。無料体験に申し込む。SNSの広告から商品を購入する。

それだけで契約が成立することがあります。契約書に印鑑を押す場面だけが「契約」ではありません。

私たちは毎日の生活の中で、意識しないまま数多くの契約を結んでいます。行政書士業務では企業側の契約書を扱うことも多いのですが、その反対側には必ず消費者がいます。


事業者にとっても、

「法律上ぎりぎり問題がない」

というサービス設計ではなく、

「利用者が何を契約したのか理解できる」

という視点が、これからますます重要になるでしょう。

全国ニュースだけでなく、こうした横浜のデータから「いま市民の身近なところで何が起きているのか」を見ることも、法務通信では続けていきたいと思います。


今回のNEWS CLIPから――「ルールを作る」から「ルールを機能させる」へ


今回取り上げた6つのニュースは、かなり分野が異なります。

AI生成コンテンツ。個人情報。フリーランス。終活。企業間取引。消費者問題。

しかし、並べてみると共通するものがあります。

法律や制度が、「こうあるべきだ」という理念だけではなく、実際の社会の中でどう機能するのかという段階へ進んでいることです。

AI生成物であることを分かるようにする。

個人情報の違法利用には経済的な制裁を設ける。

フリーランスとの取引条件を明確にする。

高齢者が終身サポート事業者を選ぶための環境を行政が整える。

企業間の力関係によって不当な取引が行われていないかを調査する。

そして、市民から寄せられた実際の消費生活相談から、社会で起きている問題を把握する。

ここで重要になるのが、制度と現実との間をどうつなぐかということです。

法律を知っているだけでは足りません。

ガイドラインを読み、契約書へ落とし込み、事業者の社内ルールへ落とし込み、個人であれば自分自身の生活設計へ落とし込む。

そして、制度だけでは解決できない部分について、専門家が個別の事情を聞き、どの制度を使うのかを考える。

AIが進歩しても、高齢化が進んでも、取引がデジタル化しても、この部分はなくならないと思います。

むしろ社会が複雑になればなるほど、「制度を知っている人」ではなく、「制度を現実の問題解決に使える人」の役割が重要になる、そんなことを考えました。


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