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NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年8月10日


「法務通信」のNEWS CLIPから、最近の法務・政策ニュースのうち、特に気になったものを拾ってみました。

今回は、生成AIと「声」の権利、著作権行政の新しい動き、権利者不明著作物、行政書士制度、そして横浜市のAI活用まで。並べてみると、AI・デジタル化が「知財」だけの問題ではなく、行政や専門職のあり方そのものを変え始めていることが見えてきます。


那住行政書士事務所HP https://www.nazumi-office.com/


01|生成AIで「声」を無断利用――法務省がパブリシティ権などによる保護を整理

まず気になったのが、生成AIによる「声」の無断利用をめぐる動きです。

法務省では今年4月から「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」を開催しており、7月27日の第5回会合では「取りまとめ報告書(案)」が示されました。背景にあるのは、生成AIによって本人そっくりの声や映像を作ることが容易になったことです。法務省は、現行法や判例法理を前提として、パブリシティ権などによる保護について整理を進めています。

報道では、とりわけ著名人の「声」についても、財産的価値を保護するパブリシティ権の対象となり得るとの整理が注目されています。

ここで興味深いのは、これは著作権だけの問題ではないということです。

AIとコンテンツというと、どうしても「学習に著作物を使えるのか」「生成物が著作権侵害になるのか」という著作権法上の議論に目が向きます。しかし、人の顔や声をAIで再現する問題では、肖像権、パブリシティ権、不法行為法、不正競争防止法など、複数の法領域を横断して考えなければなりません。

生成AI時代の「コンテンツ法務」は、著作権法だけを見ていればよい時代ではなくなってきています。

02|文化審議会著作権分科会、新しい期の議論がスタート

8月3日、第26期の文化審議会著作権分科会がスタートしました。

第1回では、分科会長の選出に続き、今期における主な検討課題や小委員会の設置などが議題となっています。

著作権法は近年、かなり大きな変化が続いています。

今年6月には著作権法改正が成立し、商業用レコード等を公の場で利用した場合に、実演家・レコード製作者が二次使用料を受け取る「レコード演奏・伝達権」が創設されました。公布は6月24日で、施行は公布から3年以内の政令指定日とされています。

さらに、生成AI、クリエイターへの対価還元、コンテンツ産業の振興、デジタル化に対応した権利処理など、著作権行政が扱うテーマは非常に広くなっています。

今期の著作権分科会で何が議論されるのか。これは継続的に追いかけていきたいテーマです。

03|「骨太の方針」に行政書士制度――日行連が「制度発足以来初」と評価

行政書士関係では、日本行政書士会連合会が7月22日、「骨太の方針2026」への行政書士制度の記載について会長談話を発表しています。

日行連はこれを行政書士制度発足以来初の明記と位置付けています。

今年1月には改正行政書士法も施行されています。

行政手続のデジタル化が進めば、「申請書を書く人」という従来型の行政書士像だけでは、専門職としての役割を説明しにくくなっていきます。

一方で、制度が複雑化し、デジタル化が進むほど、どの制度を利用すべきなのかを判断し、行政と国民・事業者との間をつなぐ専門家の必要性はむしろ高まるのではないでしょうか。

行政書士制度を今後どう位置付けていくのか。「骨太の方針」への記載を、単なる業界ニュースとして終わらせず考えていく必要があります。

04|横浜市、「市民の声」をAIで分析する実証へ

横浜のニュースから一つ。

横浜市は7月24日、「声を『広く×深く』捉えるAI実証プロジェクト」として、横浜らしい「ブロードリスニング」を考える共創セッションの参加者募集を発表しています。

これは個人的にも興味深いテーマです。

行政のデジタル化というと、オンライン申請や「書かない窓口」など、手続の効率化がまず思い浮かびます。実際、横浜市も鶴見区で新たな「書かない窓口」を開始すると発表しています。

しかし、AIの行政利用はその先に進みつつあります。

市民から寄せられる大量の意見をAIで整理・分析し、政策形成に生かすことができれば、行政の意思決定の方法そのものが変わる可能性があります。

一方で、誰の意見が拾われ、どのように分類され、何が「市民の声」として政策担当者に提示されるのかという問題もあります。

行政におけるAI利用は、効率化だけではなく行政法上の透明性・説明責任という問題にもつながっていく。

ここは今後、行政法の観点からも追いかけたいテーマです。

05|AIが「知財を生み出す」だけでなく「知財業務をする」時代へ

最後は少し違ったAIの話題です。

知財業務そのものへのAI導入が進んでいます。AI Samuraiは、独自の特許データベースとMCPを活用し、AIエージェントによる特許検索、競合分析、知財戦略立案などを支援する構想を打ち出しています。8月6日には福岡でも関連イベントが開催されました。

ここで面白いのは、AIと知財の議論が、

「AIが作ったものに著作権はあるのか」

という話から、

「AI自身が知財実務をどこまで担えるのか」

という次の段階に入り始めていることです。

契約書レビュー、先行技術調査、権利情報検索、ライセンス管理など、AIと相性のよい知財業務は少なくありません。

そうなると専門家に求められる能力も、「情報を探せること」から、AIが出した情報を評価し、法的・事業的な判断につなげることへ変わっていくのでしょう。

これは行政書士についても無関係ではないと思います。


今回のNEWS CLIPから

今回取り上げたニュースを並べてみると、共通しているのは「AI・デジタル化によって、既存の制度をどう使うかが問い直されている」ということです。

声をAIで再現できるようになったから、新しい「声の権利」をゼロから作るのではなく、まず既存のパブリシティ権や不法行為法などでどこまで対応できるのかを整理する。

著作物が大量に流通するようになったから、著作権を弱くするのではなく、権利者を見つけ、許諾につなげるインフラを作る。

行政にAIが入るからといって行政法が不要になるのではなく、むしろ透明性や説明責任をどう確保するかが問題になる。

そして、AIが専門業務を支援するようになるからこそ、専門家には「調べる」こと以上に、判断し、説明し、制度と現実をつなぐことが求められる。

こうしてニュースを横断してみると、それぞれ別々に見える出来事が、意外と同じ方向を向いていることに気付きます。

これからもNEWS CLIPでは、日々流れていくニュースの中から、少し立ち止まって考えてみたい法務・政策の話題を取り上げていきたいと思います。


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