NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年8月11日
- 那住行政書士事務所

- 7 時間前
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「法務通信」のNEWS CLIPから、最近の法務・政策ニュースのうち、特に気になったものを拾ってみました。
今回は政府そのものが生成AIを使う「ガバメントAI」、国産LLMの政府利用、オンライン行政手続、横浜市のAI窓口、入管法改正、そして行政書士のデジタル社会における役割という話題を取り上げます。
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01|政府が生成AIを使う時代へ――ガバメントAI「源内」が本格展開
行政とAIという点で、まず注目したいのがデジタル庁のガバメントAI「源内(げんない)」です。
「源内」は、政府職員が安全に生成AIを利用するためにデジタル庁が構築している生成AI利用環境です。文章作成、要約、校正、翻訳などを行う汎用AIだけでなく、行政職員の業務に特化した「行政実務用AI」も提供されます。デジタル庁では機密性2情報を含むプロンプト入力にも対応するなど、一般向け生成AIとは異なる政府利用を前提とした環境が整備されています。
2026年度には、対象を全府省庁の約18万人の政府職員に広げた大規模実証が始まっています。
これは単なる「役所にもChatGPTのようなものを導入します」という話ではありません。
行政実務そのものにAIを組み込み、
法令を調べる。資料を要約する。行政文書を作成する。過去の行政情報を検索する。
といった仕事のあり方を変えようとしているわけです。
行政手続を仕事の中心とする行政書士にとっても、これは他人事ではありません。
これまで「役所に問い合わせなければ分からなかった」「大量の資料を調べなければ判断できなかった」という領域が、AIによって大きく変わる可能性があります。
一方で、行政判断の根拠そのものをAIに委ねてよいのか、誤った回答をした場合に誰が責任を負うのかなど、行政法上の論点も出てきます。
「行政がAIを使う」ことを前提に行政法を考える時代が、いよいよ現実になってきた。
そんな印象を受けます。
02|8月から国産LLMの試用開始へ――政府がAIを「使う」だけでなく「選ぶ」
「源内」でもう一つ興味深い動きがあります。
デジタル庁は、ガバメントAIで試用する国内大規模言語モデル(LLM)を公募・選定しています。
計画では、2026年8月頃から「源内」で国産LLMの試用を開始し、2027年1月頃に評価・検証結果の一部を公表。その検証を経て、優れたモデルについて2027年度から政府調達する予定です。
つまり、ちょうど今月から動き出す計画です。
ここで重要なのは、政府が単なるAIの「ユーザー」ではなく、どのAIなら行政に利用できるのかを評価する主体になっていることです。
精度だけではないでしょう。
セキュリティ、個人情報、機密情報、説明可能性、知的財産権、データの所在など、政府がAIを利用する以上、さまざまな要素を検証しなければなりません。
実際、デジタル庁のAI利活用に関する検討では、「知的財産権等対策参考シート」も検討資料として扱われています。
AI政策というと、どうしても「AI産業をどう育てるか」に目が向きます。
しかし今後は、
「行政がどのAIを調達するのか」
という政府調達の問題も、大きなAI政策になっていくのではないでしょうか。
03|法務局も「平日昼間だけ」ではなくなる――登記・供託オンライン申請の利用時間拡大
AIとは少し離れますが、行政のデジタル化という意味で興味深い変更です。
8月3日から、法務省の登記・供託オンライン申請システムの利用可能時間が拡大されました。
従来は平日の午前8時30分から午後9時まででしたが、平日は午後11時まで延長。さらに土曜日、日曜日、祝日についても午前8時30分から午後6時まで利用できるようになりました。
一見すると「受付時間が長くなった」というだけのニュースです。
しかし、行政手続のデジタル化を考える上では象徴的だと思います。
紙の行政手続では、
「役所が開いている時間=手続できる時間」
でした。
オンライン行政では、この関係が崩れていきます。
将来的には「行政機関の開庁時間」という概念そのものが、手続によってはそれほど重要ではなくなるのかもしれません。
行政書士の業務についても同じです。
「役所が閉まったから今日はここまで」ではなく、24時間に近い行政手続環境を前提に仕事を設計する必要が出てくるでしょう。
デジタル化は申請方法を変えるだけではありません。行政と国民との時間的な関係まで変えていくのだと思います。
04|横浜市も「AIが手続きを案内」――24時間対応の行政窓口へ
そして、この動きは国だけではありません。
横浜市の2026年度事業では、生成AIを使った「AIオンライン手続ナビ」の導入が掲げられています。
「横浜DIGITAL窓口」に生成AIを導入し、市民が話し言葉で質問すると、AIが対話しながら必要な手続を案内する仕組みです。24時間利用できることが想定されています。
さらに区役所窓口では、職員が複雑な手続について確認する際に、生成AIによる法令・事例検索を利用する構想も示されています。
これは非常に興味深い。
これまで市民が、
「こういう場合、何の手続が必要ですか?」
と尋ねれば、窓口職員が制度を調べて答えていました。
その入口部分をAIが担うことになります。
ただし、ここには行政書士制度にとって重要な問いがあります。
単純な手続案内をAIができるようになったとき、行政書士は何を提供する専門家なのか。
私はむしろ、ここが行政書士の専門性を再定義する契機になるのではないかと思っています。
単に「この申請書を出してください」と教えるだけではなく、
どの制度を利用するべきなのか。どのような事実を行政に示すべきなのか。不利益処分を受けた場合にどう対応するのか。
こうした判断・戦略・権利救済に近い領域へ専門性を高める必要があります。
AIによって行政書士が不要になるというより、AIで代替できる仕事と、専門家でなければできない仕事の境界線がはっきりしてくるのではないでしょうか。
05|「日本に来る前」に審査――JESTA創設を含む入管法改正
行政手続のデジタル化という意味では、出入国管理行政にも大きな変化があります。
2026年5月29日に成立し、6月5日に公布された改正入管法等では、JESTA(電子渡航認証制度)の創設が盛り込まれました。
JESTAは、査証免除対象国・地域から日本へ渡航する外国人について、渡航前にオンラインで情報を提出し、認証を受ける仕組みです。
これは入管行政の発想を、
「日本に到着してから審査する」
だけではなく、
「日本へ来る前から行政手続を開始する」
方向へ広げるものと見ることもできます。
行政手続のオンライン化、データ連携、AIによる審査支援などが進めば、国境を越える行政手続はさらに大きく変わっていくでしょう。
行政書士にとって入管業務は主要業務の一つです。
したがって、単に改正された申請書式を覚えるのではなく、入管行政そのものがどの方向へ向かっているのかを理解する必要があります。
06|行政書士自身も「デジタル社会の専門職」へ
最後は行政書士制度そのものです。
日本行政書士会連合会の『月刊 日本行政』2026年8月号では、
「デジタル社会における行政書士の社会的評価と信頼の向上を目指して」
が掲げられています。
このタイミングでこのテーマが出てくるのは象徴的です。
今年1月には改正行政書士法が施行され、行政書士の使命規定が新設されるなど制度面でも大きな節目を迎えました。
そして今、行政そのものがAI化・デジタル化している。
そう考えると、「行政書士のデジタル化」とは、単に電子申請ができるとか、Zoom相談ができるという話ではありません。
デジタル化された行政を理解し、その行政と国民・企業との間をつなぐことができる専門家になる。
こちらの方が本質なのだと思います。
行政手続が簡単になるほど、単純な書類作成の価値は下がります。
一方で制度が高度化し、複数の行政システムや法制度が連携するほど、「何をどう使うべきか」という判断の価値は高まります。
行政書士制度がこれからどちらへ向かうのか。AI時代の行政書士像については、私自身も引き続き考えていきたいテーマです。
今回のNEWS CLIPから――「行政DX」の次に来るもの
今回の6本を並べてみると、前号とは違った共通点が見えてきます。
これまでは「行政DX」というと、
紙をPDFにする。窓口申請をオンライン申請にする。ハンコをなくす。
といった話が中心でした。
しかし、今回のニュースを見る限り、その段階から明らかに先へ進み始めています。
政府職員が生成AIを使う。AIが法令を検索する。AIが市民に必要な行政手続を案内する。国産AIを政府自身が評価・調達する。行政手続は夜間・休日にも広がっていく。
つまり、「既存の行政をデジタル化する」段階から、「デジタルとAIを前提として行政そのものを設計する」段階へ移りつつあるのではないでしょうか。
そうなれば、行政書士も変わらざるを得ません。
申請書を作る専門家から、制度を読み解き、依頼者にとって最適な行政手続を設計し、必要であれば行政に対して法的な主張を組み立てる専門家へ。
AIが発達するほど、人間の専門家には「入力作業」ではなく、判断と説明、そして責任が求められる。そんなことを考えました。
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