【ワンポイント法務】遺言書みつけた。

遺言書を見つけたら、勝手に開けてはいけない?
――知っておきたい「検認」と自筆証書遺言書保管制度
家族が亡くなったあと、遺品を整理していたら「遺言書」と書かれた封筒が出てきた――。
そんなとき、「何が書いてあるのだろう」と、すぐに中を確認したくなるかもしれません。しかし、遺言書の種類や保管方法によっては、家庭裁判所で「検認」という手続を受ける必要があります。
遺言書は、亡くなった方の最後の意思を伝える大切な書類です。見つけたときこそ、慌てず、正しい手順で取り扱うことが重要です。
【遺言書とは】
遺言書は、自分が亡くなった後の財産の承継などについて、自分の意思を残しておくためのものです。
例えば、「自宅は妻に相続させたい」「預貯金は長男と長女にそれぞれこの割合で相続させたい」「お世話になった人に財産の一部を遺贈したい」といった意思を、法律の定める方式に従って残すことができます。
ただし、「本人が書いたものなら何でも遺言書として有効」というわけではありません。遺言は法律で定められた方式に従って作成する必要があり、方式を欠いていると、せっかく残した遺言が法的な効力を持たないことがあります。
また、遺言書があれば相続をめぐる問題がすべてなくなるわけではありません。相続人や財産の状況、遺留分なども考慮しながら、内容を検討することが大切です。
【遺言書の種類】
一般に利用される遺言には、大きく分けて「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」という3つの方式があります。
自筆証書遺言は、遺言者本人が原則として遺言書の全文、日付、氏名を自書し、押印して作成するものです。なお、財産目録については一定の要件のもとでパソコンなどで作成したものや、登記事項証明書・預金通帳のコピーなどを添付することも認められています。
公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を確認して作成する遺言です。原本が公証役場側で保管されるため、紛失や改ざんなどのリスクを抑えることができます。また、相続開始後に家庭裁判所で検認を受ける必要がありません。民法1004条2項も、公正証書による遺言を検認の対象外としています。
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、その遺言書が本人のものであることを公証人等に確認してもらう方式です。公正証書遺言とは異なり、相続開始後には原則として検認が必要になります。
それぞれに特徴がありますので、「とりあえず遺言書を書けばよい」のではなく、財産や家族関係などに応じて適切な方式を選ぶことが重要です。
【自筆の遺言書を見つけた場合】
亡くなった方の自筆証書遺言を自宅などで発見した場合、まず注意したいのが勝手に処分したり、書き加えたりしないことです。
そして、封印されている遺言書であれば、自分で開封しないでください。
民法1004条では、遺言書の保管者は相続開始を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出し、検認を請求しなければならないと定めています。保管者がおらず、相続人が遺言書を発見した場合も同様です。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いのもとで開封することとされています。
「検認」は、遺言書が法的に有効か無効かを判断する裁判ではありません。相続人に遺言書の存在や内容を知らせるとともに、遺言書の形状、日付、署名、加除訂正の状態などを確認し、その後の偽造や変造を防ぐための手続です。
したがって、
「検認を受けた=その遺言書の内容が法律上有効であることが保証された」
ということではありません。この点は特に注意が必要です。
【検認を受けないとどうなるか】
検認が必要な遺言書について、検認を受けないまま遺言を執行したり、封印のある遺言書を家庭裁判所外で開封したりした場合には、民法1005条により5万円以下の過料に処せられる可能性があります。
一方で、誤って自宅で開封してしまったからといって、それだけで遺言書そのものが直ちに無効になるわけではありません。裁判所も、検認前に開封してしまった場合でも、その後速やかに検認の申立てをするよう案内しています。
ですから、
「開けてしまった。もう遺言書は無効だ」
と考えて捨ててしまったり、相続人だけで処理してしまったりするのは避けてください。
また、検認手続が必要なのは、すべての遺言書ではありません。公正証書遺言のほか、次に説明する法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管されていた遺言書についても、家庭裁判所での検認は不要です。
【遺言書の保管制度】
自筆証書遺言には、手軽に作成できる反面、「どこに保管したか分からなくなる」「亡くなった後も家族に発見されない」「紛失してしまう」「改ざんなどをめぐって争いになる」といった問題がありました。
そこで設けられているのが、自筆証書遺言書保管制度です。
これは、自分で作成した自筆証書遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けることができる制度です。遺言者本人が申請し、法務局で保管してもらいます。
法務局では、保管申請の際に遺言書が民法で定められた自筆証書遺言の形式に適合しているかについて外形的なチェックも行われます。また、原本だけでなく画像データとしても管理されます。
そして相続人にとって大きなメリットとなるのが、この制度で保管されている遺言書については、相続開始後の家庭裁判所による検認が不要になることです。
現在の保管申請手数料は、遺言書1通につき3,900円です。
遺言書は「書いて終わり」ではありません。
どの方式で作るのか。どこに保管するのか。そして亡くなった後、家族がどのように手続を進めるのか。そこまで考えておくことで、遺言者の意思をより確実に次の世代へつなげることができます。
そして、家族が自筆の遺言書を見つけたときには、まずその状態をそのまま保ち、必要な手続を確認することが大切です。
遺言書を見つけたら、まず開けるのではなく、まず確認する。
それが、亡くなった方の意思と、残された家族の双方を守る第一歩です。
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