NEWS CLIP|気になった法務・政策ニュース|2026年8月26日 from那住行政書士事務所

8月も残すところ数日。暦の上ではすでに秋なのですが、横浜市青葉区では今日26日の最高気温が36度まで上がる予報です。「残暑」という言葉には、どこか夏の名残を惜しむような響きがありますが、36度ともなると名残どころか、夏がまだ居座っているという方が正確でしょう。ウェザーニュースも「熱中症に最大限の警戒を」と呼びかけています。午後はにわか雨の可能性もあるようです。
ここまで暑いと、「もう少し頑張れば涼しくなる」という精神論は何の役にも立ちません。外出を控えられるなら控える。エアコンを使う。水分を取る。特に高齢者や子どもだけでなく、「自分は大丈夫」と思っている働き盛りの人こそ注意したいところです。熱中症は根性の有無を考慮してくれません。
さて、今日のNEWS CLIPです。政府が公表した生成AIと知的財産をめぐる新しい「プリンシプル・コード」は、重要な一歩である一方、その実効性にはかなり疑問も残ります。新しい「マイナアプリ」は行政DXの入口として期待したいところですが、アプリの名前を変えるだけで行政がデジタル化するわけでもありません。消費税減税をめぐっては農家への給付金という、制度を直したら別のところが壊れたので補助金で塞ぐような話も出てきました。そして農地相続では「信託」という新しい仕組みが検討されています。
こうした話題をお届けします。
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01|AI/COPYRIGHT|生成AIは何を学んだのか――政府がAI事業者に情報開示を求める新原則
政府の知的財産戦略本部は8月25日、「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード」を公表しました。
生成AIをめぐっては、ここ数年、「いったい何を学習しているのか」という問題が繰り返し指摘されてきました。文章、写真、イラスト、漫画、音楽、映像など、インターネット上には膨大な著作物があります。それらがAIの学習に使われているのではないか、使われているのであれば権利者はそれを知ることができるのか、利用されたくない場合に意思を示す方法はあるのか――。AI開発企業とクリエイター側との対立のかなり大きな部分は、結局この「何をやっているのか分からない」という不透明さから生じています。
今回のプリンシプル・コードは、そうした状況に対して、AI開発者やAI提供者に一定の情報開示を求めようというものです。政府は昨年12月に案を公表してパブリックコメントを行い、その議論を経て今回の正式なコード策定に至りました。案の段階から、AI開発者・提供者に対してAIに関する情報の公表や、一定の問い合わせに対する情報開示を求める枠組みが示されていました。
方向性としては、私は当然必要だと思います。
AI企業が「高度な技術なので詳しいことは企業秘密です」と言い、権利者には自分の作品が使われているのかどうかすら分からない。それでは、権利侵害があるのかを検討する入口にすら立てません。
ただし、このコードには決定的な限界があります。法律ではありません。行政処分もありません。違反したからといって直ちに罰則が科されるわけでもありません。いわゆるソフトローとして、事業者の自主的な対応を促す仕組みです。
そこで当然、「それで海外の巨大AI企業がどこまで律儀に守るのですか」という疑問が出てきます。日本の企業だけが真面目に開示体制を整え、法務部門を増強し、コストを負担する一方、海外企業は「日本政府の自主ルールですね」で済ませる。そんな結果になれば、知財保護どころか、日本企業に新しいハンディキャップを背負わせるだけです。
AI規制で最も難しいのは、立派な理念を書くことではありません。国境を越えてサービスを提供する巨大企業に、その理念をどう守らせるかです。
ここを間違えると、「世界で一番真面目にルールを守った日本企業が、世界で一番競争力を失いました」という、いかにも日本らしい結末になりかねません。
参考:
02|AI/COPYRIGHT|では、プリンシプル・コードは何を求めているのか――「透明性」の中身を見る
では今回のプリンシプル・コードは、具体的に何を目指しているのでしょうか。
重要なのは、AIと著作権について新しい禁止規定を作ったものではない、という点です。これまで政府の「AI時代の知的財産権検討会」では、生成AIをめぐる問題について、法的課題の整理、法的ルールによる対応だけでなく、技術的対応や収益還元など、法規制以外の方法も含めて検討してきました。今回のコードは、その中でも知的財産の保護とAI事業の透明性を高めるための共通原則という位置付けです。
考え方として注目したいのは、AI開発者・提供者と権利者との間にある圧倒的な「情報の非対称性」を少しでも縮めようとしていることです。
AIを作っている側は、どのようなデータを収集し、どう学習させ、どのような対策を取っているのかを知っています。しかし著作者側から見ると、それがほとんど見えない。自分の作品が学習された可能性を疑っても、「さて、何を根拠に誰へ問い合わせればよいのでしょう」というところから始めなければなりません。
今回のコードは、AI開発者や提供者による情報公表、権利者からの問い合わせへの対応などを通じ、このブラックボックスを少し開けようとするものです。
これは一歩前進でしょう。
しかし、「透明性を高めます」という美しい言葉だけで満足してはいけません。問題は、開示される情報が本当に権利者にとって役に立つのかです。
「インターネット上で適法に取得したデータを利用しています」
「知的財産権に配慮しています」
「必要な措置を講じています」
こんな抽象的な説明だけが並ぶのであれば、透明な窓を作ったつもりが、すりガラスに交換しただけです。
さらに、前述したとおり、このコードには強制力という大きな問題があります。政府が「望ましい行動」を示すことには意味がありますが、それを守る企業と守らない企業の間で競争条件に差が生じるのであれば、ソフトローの限界を次の段階でどう補うのかという議論も必要になるでしょう。
今回のコードについては、内容、策定の経緯、海外事業者への実効性、日本企業だけが不利にならないかという問題まで含め、別の記事で詳しく取り上げています。
03|DIGITAL GOVERNMENT|「マイナアプリ」提供開始――名前が変わっただけ? 実はそこではない
8月25日、デジタル庁が新しい「マイナアプリ」の提供を開始しました。
ここで最初に整理しておきたいのは、「またマイナンバー関係のアプリが一つ増えた」という話ではないことです。むしろ逆で、これまで別々だった「マイナポータルアプリ」と「デジタル認証アプリ」の機能を統合したのが今回のマイナアプリです。既にマイナポータルアプリを利用している場合は、設定に応じて新しいマイナアプリへ自動更新されます。
従来のマイナポータルは、引っ越しやパスポートなどの行政手続、医療費などの本人情報の確認といった「行政サービスへの入口」として使われてきました。一方のデジタル認証アプリは、マイナンバーカードを使って行政・民間サービスで本人確認や電子署名を行うための仕組みです。
つまり、これまでは「行政手続をするアプリ」と「自分が本人であることを証明するアプリ」が分かれていた。それを一つにまとめ、「本人確認から行政手続までを一つのアプリで」という方向へ進めたわけです。
これは、地味に見えてかなり重要な変更だと思います。
行政DXで利用者が最も困るのは、技術そのものより「何を使えばいいのか分からない」ことです。マイナポータルがあり、マイナンバーカードがあり、デジタル認証アプリがあり、スマホ用電子証明書があり、さらに各省庁や自治体のサービスがある。「便利になります」と言われるたびにアプリとパスワードが一つずつ増えるのであれば、それはデジタル化ではなく、単なるデジタル版の縦割り行政です。
その意味で、入口を統合する方向性は正しいでしょう。
今後はスマートフォン搭載のマイナンバーカード機能との組み合わせによって、毎回実物のカードを取り出してスマホに読み取らせなくても本人確認や電子署名を行える場面が増えていくことも期待されています。
ただ、行政DXの評価は「アプリをリリースしました」で決めるものではありません。
行政手続の途中で結局PDFをダウンロードして印刷してください、添付書類は郵送してください、最後は窓口へ来てください――となるのであれば、入口だけ未来になって、中身は昭和のままです。
アプリのアイコンが新しくなったことより、国民が「役所へ行かなくても、本当に手続が最後まで終わった」と感じられるかどうか。
評価するのはそこからでしょう。
04|TAX/AGRICULTURE|食料品の消費税を1%へ――農家の減収は「給付金」で穴埋め?
政府が予定する飲食料品の消費税率1%への引き下げをめぐり、中小・零細農家への給付金制度を設ける方向で調整に入ったと報じられています。
理由は少々複雑です。
農水産業には小規模事業者が多く、年間売上高1,000万円以下の免税事業者や、5,000万円以下で簡易課税制度を利用する事業者が相当数存在します。食料品の消費税率が1%へ下がると、販売時に受け取る消費税相当額が減る一方、肥料や農業資材などの仕入れについては10%の消費税負担が残ります。この結果、とりわけ免税事業者や簡易課税事業者では手取りが減る可能性があるため、政府は売上規模などに応じて給付金を支給し、減収を補うことを検討しています。
この問題は、7月の国会審議でも既に指摘されていました。簡易課税を利用する農家では、食料品の税率低下によって売上側の消費税額が大幅に減る一方、実際の仕入れ時には10%の税負担が残り、制度上大きな負担増になる可能性が論じられています。
農家を支援すること自体に異論はありません。
むしろ、肥料、燃料、資材、人件費などの高騰を考えれば、日本の農業をどう持続させるかは極めて重要な政策課題です。
ただ、制度の姿を眺めていると、少々複雑な気分になります。消費者の負担を軽くするために消費税を下げる。すると農家の収入が減る。そこで税金から給付金を出して補填する。
その給付金を支給するため、新しい制度を作り、申請方法を決め、審査し、行政コストをかける。
もちろん税制には様々な利害が絡むので、単純にはいきません。しかし、「制度を一つ動かしたら別の場所に穴が開いたので、そこへ補助金を流し込む」という政策を重ねていくと、最終的に誰がいくら負担し、誰がいくら得しているのか、普通の国民にはほとんど分からなくなります。
05|AGRICULTURE/INHERITANCE|農地が相続のたびに細切れに――「信託」解禁で止められるか
8月26日付の日本経済新聞朝刊一面トップは、農地の相続問題でした。
農林水産省が、農地について「信託」の活用を可能にする方向で検討を始めると報じられています。狙いは、相続のたびに農地の所有権が複数の相続人へ分散し、権利関係が複雑になることを防ぎ、耕作放棄地や所有者不明農地の増加を抑えることにあります。
これは、かなり重要なテーマです。
農地は普通の土地とは違います。農地法によって売買や貸借、転用が規制されており、「相続したけれど農業はしませんので、明日から駐車場にします」というわけにはいきません。農地を貸したり売ったりする場合も原則として農業委員会の許可などが必要になります。
一方、相続は発生します。
農業をしていた親が亡くなり、子ども3人が相続する。その子どもたちも亡くなり、さらに次の世代へ相続される。これを繰り返せば、一つの農地について何人もの共有者が存在する状態になりかねません。
実際、農水省の調査では、登記名義人が死亡していることが確認された「相続未登記農地」は令和7年3月時点で49.7万ヘクタール。全農地面積のおよそ1割に相当します。
相続登記は義務化されましたが、登記をすれば問題がすべて解決するわけではありません。
共有者10人の名前をきちんと登記したところで、10人で共有しているという事実は変わらないからです。
農地を集約して大規模化したい人がいても、所有者が多数に分散すれば意思決定が難しくなります。誰か一人が所在不明になれば、さらに厄介になる。農水省も、所有者不明農地については担い手への集積・集約化の阻害要因になると認め、農地バンクを通じて最長40年間借りられる仕組みなどを整備してきました。
そこで「信託」という発想が出てきます。所有権を相続人の人数分だけ細かく分けるのではなく、農地そのものを信託財産として一体的に管理し、相続人にはその経済的利益を受ける権利を承継させる。制度設計次第ですが、うまく使えば農地を物理的・権利的に細切れにせず、農業経営を継続できる可能性があります。
私は、方向性としては面白いと思います。ただし、信託という言葉を付ければ魔法のように問題が解決するわけではありません。誰を受託者にするのか。農地法上の権利移転規制とどう整合させるのか。農業委員会や農地バンクとの関係をどうするのか。相続税の納税猶予制度はどう扱うのか。受益権が次世代で細分化していけば、結局別の形で同じ問題が起こらないのか。
制度設計を間違えると、「農地の共有問題」が「信託受益権の共有問題」に名前を変えただけ、ということにもなりかねません。日本の農業問題では、「農地を守る」ことと「農地を使える状態で守る」ことが、しばしば混同されます。
所有権だけ厳格に守って、誰も耕さず草だらけになっているのであれば、それは農地を守ったことになるのでしょうか。
相続、所有、農業経営を別々に考えるのではなく、「次の世代でも実際に耕せる農地をどう残すのか」という視点から制度を作ってほしいと思います。
農地の相続分散に歯止め 農水省、信託の解禁検討 耕作放棄地増やさず - 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO98384800W6A820C2MM8000/
06|BASEBALL/YOKOHAMA|横浜スタジアムで「神奈川大学野球×東京六大学」――そして秋は神宮へ
最後は少し肩の力を抜いて、野球の話です。
8月25日、横浜スタジアムで、神奈川大学野球連盟の創設77周年記念事業として「神奈川大学野球連盟選抜対東京六大学野球連盟選抜」の交流戦が行われました。試合は東京六大学選抜が7対0で勝利しました。
ただ、今回の試合は勝敗以上に、「東京六大学の選手たちが横浜スタジアムでプレーした」ということ自体に大きな意味があったと思います。
東京六大学野球といえば、やはり神宮です。
早稲田、慶應、明治、法政、立教、東京。この6大学が神宮球場でリーグ戦を戦うというのは、単に「いつも使っている球場」という以上の意味を持っています。東京六大学野球連盟は1925年に現在の6大学の形となり、神宮球場が完成した1926年から、神宮を舞台として歴史を積み重ねてきました。東京六大学と神宮は、ほとんど一体の文化と言ってもよいでしょう。
だからこそ、その東京六大学のユニホームを着た選手たちが神宮を離れ、横浜スタジアムのグラウンドに立つ光景は新鮮です。
しかも横浜スタジアムは、横浜DeNAベイスターズの本拠地であると同時に、神奈川の野球にとって特別な場所です。高校野球の神奈川大会では、毎年この球場を目指して県内の球児たちが戦います。そこへ今回、神奈川大学野球の選抜と東京六大学の選抜が集まった。
「東京の大学野球」と「神奈川の大学野球」が、横浜の野球の象徴ともいえる場所で真正面から交わったわけです。
こういう交流戦は、もっとあっていいと思います。
大学野球はリーグごとに独自の歴史と文化を持っていますが、それが時として「リーグの中だけで完結する世界」になってしまうこともあります。東京六大学には東京六大学の魅力があり、東都には東都があり、神奈川には神奈川がある。しかし、たまにはその境界線を越えてみる。普段とは違う球場、違う相手、違う観客の前で野球をすることによって、それぞれのリーグの魅力がむしろ見えやすくなるのではないでしょうか。
さらに今回、神奈川大学野球連盟の佐々木正雄理事長が強調していたのが、「運営を含めて全て学生が主役」という点です。選手だけでなく学生マネジャーも中心となって準備を進め、東京六大学側の運営から学びながら、この交流戦を作り上げました。
これも非常に良い試みだと思います。
大学スポーツなのですから、グラウンドに立つ選手だけが学生である必要はありません。企画するのも、広報するのも、試合を運営するのも学生。成功することもあれば失敗することもあるでしょうが、そこまで含めて大学スポーツの価値です。
そして何より、東京六大学の選手が横浜スタジアムでプレーする。
これは神奈川の野球ファンにとっても、かなり面白い企画だったのではないでしょうか。
さて、横浜での交流戦が終われば、東京六大学の選手たちは再び神宮へ戻ります。
そうなれば、個人的には話は別です。
法政に勝ってもらわなければ困ります。
法政大学は東京六大学最多タイとなる46回のリーグ優勝を誇る名門ですが、令和に入ってからの優勝は2020年秋の一度だけです。
一度だけ。
いくら何でも少なすぎます。
「古豪」という言葉は実に便利で、昔は強かったけれど最近なかなか勝てないチームにも、一定の敬意を保ちながら優しく使うことができます。しかし法政には、そろそろ「古豪」と懐かしがられる側ではなく、普通に「強豪」と呼ばれる側へ戻ってもらいたい。
横浜スタジアムで東京六大学の新しい姿を見せた後は、神宮で法政の昔ながらの強さを見せてほしい。
今季こそ、期待しています。
あとがき
朝、外へ出た瞬間の空気がもう暑い。
真夏ならともかく、8月も26日になると、こちらも少し腹が立ってきます。「そろそろ交代の時間ですよ」と夏に言いたくなるのですが、どうも今年は帰る気がないようです。
それでも日が暮れる時間は少しずつ早くなっていますし、スーパーには秋の食べ物が並び始めます。気温だけを見ていると季節が止まっているようでも、ちゃんと次へ進んでいるのでしょう。
NEWS CLIPを書いていると、制度や政治について「もっと早く変えればいいのに」と思うことがよくあります。しかし、季節ですらこちらの都合では動いてくれません。
とはいえ、36度はさすがに勘弁してほしい。
今日は無理をせず、涼しいところで過ごしたいと思います。
那住行政書士事務所
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