行政書士が集まり、共同親権の勉強をやりました。
- 那住行政書士事務所

- 11 分前
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――「共同養育計画書」に行政書士が関与する意義
2026年9月5日、横浜・関内で「行政書士と考える共同親権勉強会」と題する勉強会に参加しました。本勉強会は、行政書士・中村一夫先生が中心となり開催され、今年5月に続き2回目の開催となります。
前回は、当事者の方たちからお話を聞く会として開催しましたが、今回はより実務を検証する会となりました。
2026年4月1日、父母の離婚後の子の養育に関する改正民法が施行されました。
今回の改正については「離婚後の共同親権が導入された」という点が大きく報道されています。しかし、実務家として改正法を見ていくと、今回の改正は単に「共同親権か、単独親権か」という選択肢が増えたというだけの話ではありません。
むしろ重要なのは、「離婚した後も、父母は子どもの親であり続ける」という当たり前ともいえる原則を、法制度と実務の中でどう実現していくのか、ということだと思います。
そして私は、この分野、とりわけ「共同養育計画書」の作成支援について、行政書士がもっと積極的に取り組むべきではないかと考えています。今回の勉強会を受講して、その思いをさらに強くしました。
――「共同親権」だけが今回の改正ではない
今回の改正では、離婚後について、父母双方を親権者とする「共同親権」と、父母の一方のみを親権者とする「単独親権」の双方が制度として位置づけられました。
しかし、その前提として重要なのが、親の責務に関する規律です。
勉強会でも、今回の改正によって、婚姻関係や親権の有無にかかわらず、父母が子どもの人格を尊重し、その年齢や発達の程度に配慮して養育しなければならないこと、さらに父母が互いの人格を尊重し、協力しなければならないことが重要なポイントとして取り上げられました。
つまり、「離婚したから、夫婦としての関係が終わる」ことと、「父親・母親としての関係が終わる」ことは、まったく別の問題であるということです。
離婚によって夫婦という関係は解消されても、子どもにとって父母であることは変わりません。この発想を具体的な生活の中に落とし込んでいくことが、今回の制度改正では非常に重要になっていると感じます。
ー親権を決めるだけでは、子どもの生活は決まらない
たとえば離婚に際して、「共同親権にしましょう」と合意したとします。しかし、それだけでは翌日からの子どもの生活は決まりません。
子どもはどちらの家を生活の本拠とするのか。もう一方の親とは、いつ、どのくらい会うのか。送迎はどうするのか。学校行事には父母のどちらが参加するのか。進学について意見が分かれたらどうするのか。病気になったときにはどうするのか。養育費はどうするのか。こうした問題を一つ一つ具体化しなければ、共同親権という制度だけがあっても、実際の「共同養育」は動きません。
そこで重要になるのが、共同養育計画書の作成です。法務省のホームページでは
「離婚・別居を考えているお父さんお母さんへ こどものための共同養育計画書」について
として、「その取決めは、こどもの利益を最も優先して考慮しなければならないとされています。」と記載されています。
今回の勉強会では、法務省が配布している資料も検証しましたが、この資料においても、親権者・監護者、子どもの生活場所、養育費・婚姻費用、親子交流、重要事項の決め方、再協議など、離婚後の養育について幅広い事項をあらかじめ話し合う構成となっています。
勉強会でも、親子交流については回数だけではなく方法や宿泊、送迎などを具体化すること、学校行事への関わり方、監護の分担、進学・医療など重要事項の決定方法など、それぞれの家庭の実情に応じて取り決める必要性が指摘されました。
私は、ここに行政書士が果たせる非常に大きな役割があると思っています。
―「離婚協議書」そして「共同養育計画書」へ
これまで行政書士が離婚に関する相談を受けた場合、代表的な業務の一つが「離婚協議書」の作成でした。もちろん、これは今後も重要です。
財産分与、慰謝料、養育費などについて父母が合意した内容を書面にし、必要に応じて公正証書にする。その支援は行政書士が長年取り組んできた実務です。しかし、子どものいる夫婦の離婚について考えるなら、これからはそれだけで十分なのか、という問題があります。
勉強会でも、行政書士が共同親権・共同養育に関して担う実務として、「離婚協議書の作成」と「共同養育計画書の作成」の二つが提示され、特に後者の重要性が指摘されました。
従来の離婚協議書は、どうしても、「養育費を毎月○万円支払う」「財産分与として○万円支払う」といった金銭的な約束が中心になりがちでした。
しかし、子どもの養育は、お金だけではありません。離婚後、父母がそれぞれどのように子どもの成長に関わっていくのか。その部分まできちんと話し合い、文章にする。これからの行政書士の離婚実務では、この視点が非常に重要になるのではないでしょうか。
―行政書士は「子どものための話し合い」を文書にする
もちろん、ここでは行政書士の業務範囲について慎重な整理が必要です。
父は共同親権を希望している。しかし母は絶対に反対している。あるいはDV、虐待その他の問題があり、父母が激しく対立している。このような紛争状態に行政書士が入り、一方の代理人となったり、法律上の紛争について仲裁したりすることは、行政書士の業務として考えるべきではありません。
今回の勉強会でも、行政書士による支援は、基本的には父母双方が共同親権または共同養育という方向性について合意しているケースを中心に考えるべきであり、既に争いとなっているものを行政書士が仲裁することには弁護士法との関係で注意が必要であるとの整理がされていました。
これは非常に重要な線引きだと思います。
その一方で、「共同して子どもを育てていきたい。しかし、何を決めればいいのか分からない」「二人だけで話すと感情的になってしまう」「話し合った内容を、きちんとした書面にしておきたい」という父母は、これから確実に出てきます。
そこで行政書士が、冷静な第三者として論点を整理する。
親子交流はどうするのか。学校行事はどうするのか。医療や進学についてどう決めるのか。父母間の連絡方法はどうするのか。そして話が夫婦間の過去の問題に戻ってしまったときには、「これは誰のための計画なのか。子どものための計画ではないですか」というところに話を戻す。
こうした役割を行政書士は積極的に担っていくべきではないかと考えています。
ー共同養育計画は「作って終わり」ではない
もう一つ、実務上とても重要だと思ったのが、共同養育計画は一度作成すれば終わりではないという点です。
乳幼児だった子どもが幼稚園に入り、小学生になり、中学生、高校生になる。当然、生活も変わります。
学校行事も増えます。部活動や受験もあります。子ども自身の意思も、成長とともにより重要になっていきます。したがって、離婚時に作った共同養育計画が、そのまま10年間使えるとは限りません。勉強会でも、子どもの成長に応じて親の関わり方は変化するため、共同養育計画についても定期的な見直しが必要であり、計画書そのものに見直しについての条項を設けることが重要ではないかとの指摘がありました。
これは行政書士実務との親和性が高い部分だと思います。離婚時に一度書類を作って業務終了、ではなく、子どもの成長に合わせ、父母とともに計画をアップデートしていく。行政書士が地域の身近な法律実務家として、家族に継続的に関わっていく仕事になり得るからです。
ー「子どもの利益」を書面によって具体化する仕事
共同親権については、現在も賛成・反対を含めて様々な議論があります。
DVや虐待が存在する家庭については、安全確保を最優先にしなければならないことは当然です。だからこそ、すべての離婚を「共同親権にすべきだ」と単純化するべきではないと思います。
一方で、父母双方が離婚後も子どもの養育に関わりたいと考えているにもかかわらず、その方法を具体化できないまま離婚し、その後の小さな行き違いから関係が悪化してしまうことも避けなければなりません。
共同親権という制度を作るだけでは、共同養育は実現しません。
必要なのは、「離婚した後、この子をどう育てていくのか」について、父母が具体的に考えることです。そして、その合意を言葉にし、文書にする。私は、まさにそこに「権利義務に関する書類」の作成を専門業務とする行政書士が関与する意味があると考えています。
勉強会でも、共同養育計画書について「行政書士が取り組むべき仕事ではないか」という問題提起がなされ、今後、行政書士事務所や行政書士会の相談会などでも積極的に周知していくことが社会貢献にもつながるとの意見が示されました。
私も同感です。
共同親権制度は、2026年4月に始まったばかりです。
共同養育計画書についても、これから実務の蓄積が必要です。行政書士側にも、家族法だけでなく、親子交流、養育費、民事執行、公正証書、さらには子どもの発達や家族支援など、幅広い知識が求められるでしょう。
だからこそ、今から研究し、実務を作っていく必要があります。行政書士が単なる「書類の代書者」としてではなく、父母の合意を整理し、「子どもの利益」を具体的な文書へ落とし込む専門家として関わっていく。
共同親権時代における行政書士の新しい役割として、私はこの「共同養育計画書」の作成支援に、積極的に取り組んでいくべきだと考えています。
昨日の勉強会は、その可能性を改めて考える非常に有意義な機会となりました。
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