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【著作権】ワンポイント著作権002~著作権法の目的

というこの連載は決して、著作権について深く勉強することが目的ではありません。「なんとなく」で良いので著作権についてイメージをもってもらって「ものを作る人」から見ればどうすれば自分の作品を権利を守ることができるのか、「ものを使う人」から見ればどうすれば犯罪を犯さないで済むかを知ってもらうことを目的としています。


前回までは こちら から。


1 著作権法の概要(前回からの続き)


c.著作権法の目的について


具体的に、著作権法に定められる著作権とはどのような権利なのか、見ていきたいと思います。

著作権法の目的は、第1条に次のように定められています。


【著作権法 第1条(目的)】
第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

「もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」と明確に書き示されている通り、著作権法はまず「文化の発展に寄与すること」を目的としています。



 その目的を達成するためには、著作物を創作する著作者等の権利を保護する必要があります。しかしその保護は無制限に与えられるものではなく、条文上においては「文化的所産の公正な利用に留意しつつ」という「規制」が加えられています。


「文化の発展に寄与」するためには、著作者等の財産上の利益、人格的な利益を保護し、創作に対する苦労に報いる必要があります。そのように保護しなければ新たな創作が行われず、「文化の発展」が実現しなくなってしまうからです。一方でその「文化の発展」による利益を享受するのは、著作権者等だけではなく、国民全体です。


 そこで権利の保護を図るためには様々な調整が必要となってきます。


 著作権法はこのような目的のもと、著作権者等の様々な権利を定めるとともに、著作物の円滑な利用が図られるよう、「権利制限規程」「裁定制度」といった、一定のルールを定め、権利者の権利保護と、利用者の利便性を調整した法律となっています。


 この「調整」というのが、著作権を少しややこしくしているのかもしれません。


 冒頭に例をあげた、ダイヤモンドが輝くアクセサリー、ブランド物の時計、舶来物のネクタイ……これらは「有体財産」「有体物」などと言われますが、「有体財産」「有体物」については、民法206条において「所有権」が定められています。


「所有権」においては、所有権者は、その「物」に対し、使用・収益・処分を行う、排他的な権利を有しています。つまり「所有権」を持つものに、絶対的な権利があるわけです。

 しかし「著作権」においては、その権利が必ずしも絶対的なものとは言えません。様々な調整が、著作権法の中には定められているのです。


例えば……小説の作者である小説家は、

その小説をコピーしたり、印刷して出版することについては「複製権」という権利をもっています。しかし小学校等の授業において、必要最小限度の印刷をしたり、入学試験問題の問題として使われることについては、権利が制限されています。つまり小説家からOKをもらわなくても自由に利用できます。


その小説を有料の公演で「朗読」することについては「口述権」という権利をもっていますが、入場料など一切とらず朗読する人がギャラも一切うけとらないような状態で「朗読」することについては、権利が制限されています。このような場合も小説家のOKは必要ありません。


このあたりのことについてはのちほど、またあらためてお話をします。



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